特集 東急 機能特化型個室シェア事業「roobby(ルービー)」
鉄道高架下に趣味の部屋 新たな活用法として期待
憧れの空間を手軽にシェア インスタントハウス開発・提供会社と連携
東急は、「『憧れの趣味の部屋』のシェア」をコンセプトに、機能特化型個室シェア事業「roobby(ルービー)」を展開している。不動産情報のLIFULLのグループ会社で、インスタントハウスを開発・提供するLIFULL ArchiTech(ライフル アーキテック、東京都千代田区)と連携して1月17日、目黒線不動前駅周辺の高架下に「roobby―fit 不動前」をテストオープンした。鉄道高架下の新たな活用方法として期待される施設の特徴や同事業の魅力を紹介する。(卜部 正太記者)
従業員が社内制度で提案、実証実験
「roobby」は、東急の「社内起業家育成制度」第8号案件として実証実験を行っているもので、同制度は東急や連結子会社従業員らが新たなビジネスのアイデアを会社に対して提案。選考の進捗に応じ、提案者が専任で詳細を検討する。
事業を創造する意欲・能力を有する従業員を支援し、フロンティア・スピリットを広く喚起して新規事業創出のスピードアップを図り、東急グループの活性化と持続的成長を果たすため、2015年4月に創設された。
最終選考通過後は提案者がプロジェクトリーダーとなり事業を推進する。これまでに会員制サテライトシェアオフィス事業「NewWork」や東急グループふるさと納税「ふるさとパレット」、定額制回遊型宿泊サービス「TsugiTsugi」などが事業化されている。
「roobby」とは部屋+趣味の造語
「roobby」は、部屋(room)+趣味(hobby)を組み合わせた造語。昨今、テレワークの浸透やライフスタイルの変化により自宅で過ごす時間が増えて「自宅を好みの空間にしたい」というニーズが高まる一方、部屋の広さ・構造と費用とのバランスの観点から、都市部では自宅に広々とした趣味空間を設けるのは難しい。
このようなニーズに対して同社は「『自宅にあったらいいなと思う憧れの空間』を手軽にシェアしてもらう」といった理念のもとで同サービスを展開。第1形態の「roobby―fit」は、運動と個室を組み合わせることで、周囲の視線や混雑状況などを気にすることのない自由な使い方を実現し、従来のジムでは難しい家族での利用もあるという。
昨年4月、池上線雪が谷大塚駅直結の駅ビル内にテストオープンした「roobby―fit 雪が谷大塚」では、ランニングをしながら大画面でお気に入りの動画を楽しめる部屋、撮影や教室に適した多目的スタジオなど全7室を用意。今回の不動前が2号店となる。
東急の吉田一貴roobbyプロジェクトリーダーは「雪が谷大塚では予想の3倍近くの方のLINE会員登録をいただき、実際の利用も想定を越えて推移しています。不動前は周辺のタワーマンションにお住まいの方々をメインターゲットに想定しており、雪が谷大塚での実績を踏まえると、ファミリー層から高齢の方まで幅広く利用いただけると思います。今後は渋谷の再開発エリアや田園都市線などにも出店を検討していきたいと考えています」と話している。
目黒線不動前 徒歩2分の立地
ダンス、ヨガ利用や集中トレーニング
「roobby―fit 不動前」は、不動前駅から徒歩2分の高架下に、マルチマシン、鏡、ダンベル、ベンチ台を備えたトレーニングルーム(広さ約15平方㍍、利用推奨1~2人、1部屋当たり30分750~1300円)、ダンスやヨガなどの運動に適したスタジオ(約20平方㍍、1~3人、同)の全2部屋を用意。
トレーニングルームは集中して鍛えたい人や、パーソナルトレーニングでの利用を想定。スタジオは各種エクササイズのほか、レッスンや複数人での利用を見込んでいる。
スタッフは常駐せず、利用予約や部屋の解錠・入室は同店舗のLINE予約システムから行う。
都心部でも柔軟に設置・移動が可能
鉄道の高架下は、駅から近く雨にもぬれにくいという優れた立地条件にもかかわらず、工事のスペース確保をはじめとした制約が多いため、都心部の「遊休不動産」となる場合が多い。また、高架下が活用されていないことにより発生する不法投棄などが、一部地域では社会課題となっている。
今回の不動前駅高架下の整備には、LIFULL ArchiTechが開発した新型都心モデル「インスタントハウス・パージ型」を採用。インスタントハウスとは、テントシートを空気で膨らませながら内側から断熱材を吹き付けた構造物を指す。
安価で断熱性や遮音性に優れ、これまではグランピング施設などで施工してきたが、スペースに余裕がないため施工条件の難度が高い都心部では事例がなく、また移設を伴う再利用が課題だった。
今回のモデルでは、分割パーツによる組み立て方式を新たに導入。現地での設営時間は1~2時間程度で済み、都心部の狭いスペースでも柔軟に設置や移動ができるインスタントハウスを同社が開発した。
①ドーム型の生地を膨らませる②内側に断熱性のあるウレタン材を吹き付ける③分割・輸送する④現地で6分割のパーツを組み立てる――というシンプルな工法で、施工から移設、組み立てまでの一連の作業を約3日間で完了できるため、建設業界で昨今の課題になっている人手不足の影響を受けることなく施工できる。
■雪が谷大塚 音楽に特化した個室
歌の練習や演奏にも♪
今月15日、雪が谷大塚の1部屋をリニューアルして、歌の練習や楽器演奏など音楽に特化した個室「roobby―music」をテストオープンした。「roobby」の第2形態となる。
これまでの利用者へのアンケートやヒアリングの中で多かった「歌の練習や楽器の演奏ができる趣味の部屋がほしい」という声を反映。室内には「自宅では音漏れや振動の関係で十分な練習ができない」といった悩みを解決するための防音機能が備わっており、アップライトピアノやメトロノーム、譜面台などの演奏に必要な各種機器も備え付けられている。
仕事帰りにふらっと練習をする、楽器だけ持ち寄って友人と集まりお気に入りの曲を演奏するなど自分好みの利用ができる。料金は1部屋あたり30分650~850円で、利用予約は同店舗のLINE予約システムから行う。
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