特集 複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が竣工
「働・遊・住」兼ね備えた次世代型ランドマーク
東急不動産などが参画する渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合の「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」で11月30日、複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が竣工(しゅんこう)した。「100年に1度」とも言われる東急グループなどによる大規模開発が渋谷駅周辺を中心とした広域渋谷圏で進む中、「働・遊・住」を兼ね備えた次世代型ランドマークを通じて、渋谷の街全体のさらなる魅力強化につなげる。(卜部 正太記者)
歩いて巡る楽しい街へ
A街区はオフィス・商業施設/B街区は住居・商業施設など
「世界の人々を常に惹きつける街」を目指し大規模再開発を進める中、五つの街区で構成される渋谷駅中心地区では、渋谷ヒカリエ(2012年開業)、渋谷ストリーム(18年開業)、渋谷フクラス(19年開業)、渋谷スクランブルスクエア(東棟、同年開業)に続いて今回、「Shibuya Sakura Stage」を整備。駅中心のラストピースがついに完成した。
日本を代表するターミナル駅の一つである渋谷駅に隣接し、代官山や恵比寿にも近い駅南西部の桜丘エリアで、約2・6㌶の敷地を一体的に整備する再開発事業。交通基盤の拡充、さまざまな機能の導入による拠点性向上と防災機能の強化が整備方針となっている。総事業費約2000億円。
主な開発エリアは、オフィスや店舗を主とするA街区(SHIBUYAサイド)と、住宅や長期滞在のビジネスパーソンなどに向けたサービスアパートメントが入るB街区(SAKURAサイド)で構成。今後、順次開業していき、店舗などがおおむね出そろう来年7月26日にまちびらきイベントが行われる。
中心的な建物として、A街区には「SHIBUYAタワー」(39階建て、高さ約179㍍)と「セントラルビル」(17階建て、同約90㍍)を整備。両建物は低層部で一体化しており、地下は4階建て、延べ床面積約18万4700平方㍍。7階以上は主にオフィス、5階以下の低層階には商業施設や駐車場などが入る。
商業施設には体験型テナント
このうち、商業施設は体験型のテナントが中心となる。黒川泰宏東急不動産執行役員・都市事業ユニット渋谷開発本部長は「店舗内にとどまらないリアルとデジタルを掛け合わせた次世代の体験を提供したい。昨今、商業施設はただ物を売る場所ではなくなってきている。物を買う楽しみとその場所に行って実際に体験して楽しむという二つの要素が今後は必要だと考えている」と話す。
B街区には「SAKURAタワー」(地上30階・地下1階建て、高さ約127㍍、延べ床面積約6万9100平方㍍)などを建設。16~30階の分譲マンション「ブランズ渋谷桜丘」(155戸)は、同駅中心地区で唯一の大規模複合施設内の住宅となる。
中・低層部にサービスアパートメント
低・中層部は、首都圏初進出のサービスアパートメント「ハイアットハウス東京渋谷」(1~3、6~16階、126室)とオフィス(5~14階)、商業施設(5階―地下1階)で構成する。
竣工に先立ち開かれた記者発表・内覧会で、星野浩明東急不動産社長は「東急グループは創業地の渋谷の多様なカルチャーを承継してまちづくりを進めてきた。ハード面と並行してソフト面でも新たな仕掛けを設け、にぎわいの好循環を加速させ、産業育成や都市観光などのクオリティーを向上し、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の要素も盛り込むことで、渋谷の街の魅力をさらに高めていきたい」と述べた。
地域の分断解消/駅アクセス便利
同施設が位置する桜丘エリアは、JR線や国道246号線により、東西方向、南北方向ともに街が周辺地域と分断されている。また、渋谷の特徴でもある谷地形で高低差の大きい地区でもあるため、駅と周辺地区をつなぐ歩行者ネットワークも脆弱(ぜいじゃく)だった。
これらの課題を解消するため、両サイド間の道路を横断する歩行者デッキや地下からの移動をスムーズにするための縦軸動線「アーバン・コア」を整備した。駅と街、地下と地上を結び付ける歩行者動線の要となり、多層の歩行者ネットワークを設けることで、駅周辺全体の回遊性向上を図る。
併せて、3階部分で駅東側の渋谷ストリームとつながる北自由通路、恵比寿方面の渋谷駅新南口からの南通路を開通させた。来年秋には北自由通路と接続する南口新改札口の開通も予定されており、駅からのスムーズなアクセスが可能となる。
体験価値を提供
コロナ禍の影響により、世の中のライフスタイルやニーズが大きく変化し、体験価値への関心が高まっている。同施設では「渋谷の新たな玄関口の誕生~めぐり歩いて楽しいまちへ~」をコンセプトに掲げ、さまざまな体験を提供する広場やイベントスペース、サイネージなどを数多く設置し、継続的なイベント実施を通じてにぎわい創出を図る。
アーバン・コアを含めたメイン動線の階段、エスカレーター、エレベーターで各階をつなぐ場所を立体広場「ときめきSTAGE」と位置付け、もっとまちを巡り歩いて探索したくなる構造を意識している。吹き抜け空間では、立体的にレイアウトされたデジタルサイネージにより、臨場感のある環境演出、イベントやまちのアクティビティーに関する情報発信を行う。
SHIBUYAサイドとSAKURAサイドをつなぐ3階には広場「にぎわいSTAGE」を整備。気象情報や人流などのデータを活用して365日異なる演出のライトアップを毎日行うほか、3~4階をつなぐ屋外階段の「しぶS」は、渋谷桜丘のイニシャル「S」を模したデザインが写真映えすることも相まって渋谷の新名所となりそうだ。
回遊性向上 多層歩行者ネットワーク
探索したくなる仕掛けづくり
継続的イベントなど、にぎわい創出
生い茂る木々
渋谷駅前なのを忘れてしまうほど生い茂る緑やシンボルツリーの大きな山桜、菜園などに出合えるSAKURAサイド西側の屋外広場「はぐくみSTAGE」では、体を動かすリラクセーションイベントなどを展開する。
このほか、注目はSHIBUYAタワー4階に来年7月にオープンする「404 NOT FOUND」。クリエーティブ領域で活躍中のクリエーターやプロデューサーと東急不動産で構成する「渋谷あそびば制作委員会」により、世代や国・ジャンルを越境し、多種多様な次世代のクリエーターが集うグローバル・クリエーション拠点となる。
世界初となるインディーゲームクリエーターのコンテンツ制作やパブリシティー活動、国際交流、海外展開支援などを一気通貫で実現するエコシステムの構築を推進するほか、多種多様なイベントを同時多発的に開催していく予定。フロア内はイベントスペースや書店、フードエリアなどで構成する。
新文化の実験場
次世代クリエーターが国内外から集う〝渋谷のあそびば〟で、これまでにないつながりを創出し、新たなカルチャーを生み出す実験場として、桜丘エリアから広域渋谷圏を盛り上げていく。
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