JR九州 「日田彦山線BRTひこぼしライン」開業
添田―日田間6年ぶり再開
JR九州初のBRT(バス高速輸送システム)となる日田彦山線BRTひこぼしライン(添田―日田間)が28日に開業した。2017年7月の豪雨災害以来、約6年ぶりに新たな交通システムとして運行を再開。鉄道と比べ運転本数、駅数ともに大幅に増え、利便性は大きく向上した。開業に先立ち、27日には宝珠山駅で記念式典が開かれた。
豪雨災害では、添田―夜明間で橋りょう損傷や大規模な土砂流入など約80カ所で甚大な被害を受けた。同社は復旧費を約70億円と算出し、「単独での復旧は難しい」旨を表明。18年4月から同社と福岡県、大分県、沿線3市町村で「日田彦山線復旧会議」を継続。紆余(うよ)曲折を経て、20年7月の第6回会議でBRTへの転換復旧が正式決定した。
BRTひこぼしラインは、福岡県添田町、東峰村、大分県日田市にまたがる約40㌔区間。このうち彦山―宝珠山間の約14㌔が線路跡の専用道区間で、そのほかは一般道を走行する。BRT駅は従来の鉄道駅(12駅)に加えて、新たに病院前や量販店付近など24駅を増設し、全36駅を設置した。
車両は、小型電気(EV)バス4台と中型ディーゼルバス2台を新規導入。JR九州から同区間の運行と運行管理業務を受託したJR九州バスが運行主体となり、鉄道時代の約1・5倍に当たる1日上下計32本を運行する。うち7本は委託を受けた西日本鉄道グループの日田バス(日田市)が担う。
BRTならではの運用面の柔軟性を生かし、日田市街地を走る光岡―日田間では「直行ルート」のほかに、一部を高校や市役所を経由する「高校ルート」(林工西口、昭和学園前、日田市役所前)に変更。朝夕の通勤・通学や日中のお出掛けの利便性を高めた。
運賃は鉄道普通運賃と同額に設定し、添田―日田間は860円。BRTと鉄道を乗り継ぐ場合は、鉄道区間とBRT区間の運賃を合算して100円の乗り継ぎ割引を適用する。
添田―日田間(直行ルート)の所要時間は約1時間32分(17年3月時の鉄道約56分)。鉄道と接続する添田駅では、BRTと列車の同一ホーム対面乗り換えを実現し、発着する全てのBRTを列車と接続する時刻に設定している。
27日の記念式典にはJR九州の古宮洋二社長、JR九州バスの森部毅社長、来賓として豊田俊郎国土交通副大臣、服部誠太郎福岡県知事、佐藤樹一郎大分県知事、沿線3市町村の代表ら約120人が出席した。
初めに、古宮社長があいさつし、「被災から2244日。この間、関係者の皆さまの絶大なる支援と協力により、開業を迎えることができる」と謝意を示した上で、「専用道で定時性、速達性を確保できるとともに、日田市内は鉄道ではできなかった迂回ルートをつくり、より利用しやすくなったと思う」と述べた。
さらに「当社として今後ブラッシュアップしていくが、地元の皆さまにも一度乗ってみようとお声掛けいただきたい。このBRTがその名の通り、地域の星になるよう祈念する」と語った。
続いて、服部知事が「復旧に向けたJR九州の尽力、地域住民の深い理解と大きな決断に感謝申し上げる。今後BRTを生かした沿線地域の振興に取り組んでいく」、佐藤知事が「ひこぼしラインが地域の新たな魅力として全国に発信され、多くの方々が福岡、大分の魅力に触れる機会となり、末永く愛されることを願う」とそれぞれ述べた。
この後、地元高校生がBRT運転士らに花束を贈呈し、JR九州バス添田支店の納所英孝支店長が力強く安全宣言。関係者がテープカットとくす玉開花をした後、古宮社長の合図で関係者を乗せたEVバス3台が宝珠山駅を出発し、専用道の通り初めを行った。
開業当日は添田、筑前岩屋、日田の各BRT駅で初便の出発式、地元主催の歓迎イベントが開かれたほか、沿道では地域の人々がBRTバスに向けて手旗を振り、お祝いムードに包まれた。
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