交通新聞社 電子版

墨滴 6月21日付

2023.06.21

 交通系ICカードの先駆けとなるJR東日本の「Suica」が登場したのが2001年。その後、08年に西日本鉄道が福岡都市圏の鉄道事業者で初めて「nimoca」を導入。翌年にJR九州、福岡市交通局が追随し、九州にICカード乗車券が普及し始めた▼九州3者のカードはいずれも「Suica」規格だが、西鉄ではカード利用者がバス主体となるため、当初は鉄道向けともいえる「Suica」規格の採用に慎重だった。しかしながら、3者相互利用には同一規格が便利と考え、バスサービスにも応用できる仕様の一部を変更して採用した▼この仕様変更もあって、地方のバス事業者も交通系ICカードを導入しやすくなり、「nimoca」は西鉄グループの垣根を越えて九州各地に順次拡大。北海道函館地区など九州以外にも広がりを見せている▼将来的に同様の動きが期待されるのが、西鉄グループで力を入れる「レトロフィット電気バス」だ。中古ディーゼルバスを電気バスに改造するもので、改造コストを抑えつつ、高い走行性能や二酸化炭素(CO2)削減効果を実現する▼脱炭素社会が進む中、全国のバス事業者も電気バスへの転換に関心が高い。現段階では改造は一部車両メーカーに限られ、普及にはまだ時間がかかるが、日本を代表する西鉄バスグループが再び社会インフラの整備促進に寄与すると期待したい。

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