特集 JR東日本 奥多摩で非日常体験 沿線まるごとホテルプロジェクト
レストランとサウナが人気
JR東日本とさとゆめが共同出資する会社「沿線まるごと」が、沿線全体をホテルに見立てる地域活性化プロジェクト「沿線まるごとホテル」の中核となる施設「Satologue(さとローグ)」で最初の施設となるレストランとサウナを東京都奥多摩町の青梅線古里―鳩ノ巣間に5月16日にオープンしてから1カ月余り。敷地内に来春、宿泊棟が開業する予定だが、都会の喧騒(けんそう)を離れた非日常体験が早くも評判を呼んでいる。人気の訳を見てみると――。(相川夏子記者)
絶景と料理のマリアージュ
古里から徒歩15分、鳩ノ巣から徒歩20分。北側に青梅線の線路、南側に多摩川を望む土地を活用して生まれたのがSatologueの施設だ。築100年以上の古民家とその敷地を改修。瀬戸内海に浮かぶ移動式ホテル「guntû(ガンツウ)」などを手掛ける建築家の堀部安嗣氏が設計を担当した。
レストラン「時帰路(ときろ)」は、2階の客席から眼前に広がる奥多摩の山々と多摩川の清流を眺めながら、地域の食材をふんだんに使用した「沿線ガストロノミー」のランチコースが楽しめる。堀部氏がこだわったのが掘りごたつ形式のしつらえで、「視線を下げて景色や会話を楽しむ」床座の空間構成にしたという。室内は杉やヒノキ、サワラ、クリなどの木材が用いられ、靴を脱いで床を歩く感触も心地良い。
食事の前にはスタッフの案内で敷地内を〝散歩〟できる。レストラン棟を出て下ると、ビオトープや自家農園が目に入る。コンクリートのいけす跡を生まれ変わらせたもので、畑はシェフ自身が手入れをする。ルッコラやトマトなどが植えられ、イタリアン春菊の黄色い花が揺れる。奥多摩名産のワサビ田もある。
この日のメニューは、「奥多摩のジャガイモ」という治助芋を使った冷製ポタージュのヴィシソワーズから。中央に載ったワサビがいいアクセントになっている。続いての一皿は「富士の介のマリネ」。奥多摩町に隣接する山梨県小菅村産の富士の介はキングサーモンとニジマスを交配させた同県のブランド魚。身がきめ細やかで、「近所のおばあちゃんにいただいた」という蕗(ふき)を使ったソースとよく合う。
「東京シャモと蕗味噌(みそ)のリゾット」は、かむほどにシャモのうまみが出てくる。メインは「東京和牛のロースト」。葉山椒(ざんしょう)を使ったタプナードソースが肉のとろけるような甘みとマッチする。デザートは「いちじくの葉のブランマンジェ」。通常はゼラチンで固めるが、くず粉で作ったブランマンジェは固まっているかいないか、とろけるような食感が新鮮だった。
店内にはジャズのBGMが流れ、料理が出るたびに華やいだ歓声が上がる。来店者は、奥多摩の絶景と、地の恵みを生かした料理とのマリアージュを存分に堪能したようだった。
風、木、水を五感で楽しむ薪サウナ
宿泊棟開業後は宿泊者限定の利用となるサウナ「風木水(ふうきすい)」は、敷地内のコンクリート倉庫を改修。地場の木材を使った薪(まき)サウナや、川から引き込む水風呂、緑に包まれた外気浴を、奥多摩の自然を感じながら楽しむことができる。レストラン棟1階のラウンジでは、オリジナルドリンクやオプションでヤマメのハンバーガーを提供する。
レストランサウナメモ
レストランは11時からと13時30分からの2部制。コースはドリンク別で5500円。ドリンクは庭で収穫したユズやハーブを使ったノンアルコールのほか、沿線のクラフトビールや日本酒などが手ごろな価格で楽しめる。
サウナは定員4人。2人まで2万2000円(半日プラン)、4万4000円(1日満喫プラン)。9時~15時30分。レストラン、サウナとも火・水曜日定休。予約制。
Satologueへは電動トゥクトゥクがおススメ!
鳩ノ巣駅では電動トゥクトゥク「Emobi(エモビ)」(1時間2000円、1日最大1万円)と、スポーツタイプの電動アシスト自転車「KUROAD(クロード)」(30分まで300円、延長15分ごとに150円追加)を用意している。徒歩20分ほどの道のりもトゥクトゥクなら5分足らず。何より風を切って走るのが爽快だ。週末の貸し出しが多く、限度いっぱいの7時間利用する人もいるとか。
駅舎内にある「沿線まるごとラボ」は沿線まるごとホテルプロジェクト実現に向けた拠点。JR東日本から出向した社員が日々、地域事業者との調整などに奔走している。
■Satologueを運営する4人の移住スタッフ
・秋山拓実マネージャー
お席は全部で22席あり、おかげさまで週末を中心にたくさんのお客さまにお越しいただいております。サウナとレストランは宿泊棟のオープンまで、先行してSatologueの世界観を知ってもらうための重要な拠点。多くの方に来てほしいですね。里の語り部として、地域の歴史を代わりにつないでいけるよう、知識を常にアップデートしていきます!
・末水ゆかりサブマネージャー
開業から1カ月経ち、多くの方々に支えられ見守られて今があると日々感じています。レストランはおいしい料理、癒やされる空間で時を忘れてしまうほど居心地が良い、サウナは川のせせらぎ、野鳥や生物たちの声、電車の音がハーモニーとなって聞こえ、こんな整い場所はほかにないとの声を多くいただいています。人と自然とのつながりを感じていただける場所で、大切な人との思い出を紡いでいただけたらうれしいです!
・駒ケ嶺侑太料理長
ハンバーガー店に2年いた経験を生かし、サウナ飯では産卵の終わったヤマメをパティにしたハンバーガーを提供しています。この土地だからこそできた一品ですね。生産者から直接仕入れ、会ってこだわりを聞き、料理を運ぶ際にそれをお客さまに伝えています。素材を楽しんでもらうのが一番、シンプルな味付けでいいと思うようになりました。畑をやるのも初めてですが、試行錯誤しながら楽しんでいます!
・髙波和基副料理長
料理人になって10年目、常に新しいものを出し続けたいと思っています。奥多摩に来て、プラスアルファの畑仕事や食材に向き合う機会が増えました。移住してスローライフも楽しんでいます。自分なりの組み合わせが料理のモットーなので、初めての組み合わせをおいしいと言ってもらえるとうれしいですね。もっと畑に使える時間を増やし、自分たちで育てた野菜をお皿のメインとして出すのが目標です!
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