JR東日本首都圏本部など 鉄道地下トンネルの塩害対策 新たな吹き付け補修工法を開発 総武快速線隅田川トンネルに導入
工期短縮、費用抑制
JR東日本首都圏本部は6日、同本部東京土木設備技術センターと材料メーカーのデンカ(東京都中央区)が共同で、鉄道地下トンネルの塩害対策として実施する鉄筋コンクリート構造物の新しい吹き付け補修工法を開発し、導入を開始したと発表した。鉄道営業線内のメンテナンス工事で、今回開発した工法を導入するのは鉄道業界で初めて。従来の工法に比べ、工期の大幅短縮と工事費の20~30%の削減を可能としている。
海岸に接する地域の鉄道地下トンネルは、鉄筋コンクリートの継ぎ目部やひび割れから塩分を含んだ漏水があることで鉄筋が腐食し、構造耐力の低下などの懸念がある。定期的なメンテナンスは、営業線内のため、トンネル内の狭い空間で1回当たり90分程度の短い作業時間しか確保できない。機材は軌陸車で運搬する必要があるなど、さまざまな制約条件がある。
こうした事情を背景に、両社は2021年4月に新工法の開発に着手。新たに▽鉄筋の腐食の原因となる塩分や水分の浸透を抑える材料▽補修材を速く硬化させるための材料▽ひび割れを抑制するための短繊維――の3種類の素材を配合した粉体を開発した。
さらに、粉体と水を混ぜ合わせてポンプで圧送し、補修材の硬化を速める最適な配合量の添加剤を吹き付けノズルの先端で混ぜ合わせ、直後に吹き付ける工法を編み出した。
粉体、水と添加剤をあらかじめ混ぜ合わせた補修材を吹き付ける従来の工法を見直し、ノズル先端で混ぜる方式としたことで圧送ホース内の流動性が向上。これにより、圧送距離が20㍍から80㍍へ4倍に伸びたほか、1時間当たりの吹き付け量も0・2~0・3立方㍍から、0・7立方㍍へ3倍程度増加させることに成功した。
併せて、粉体と最適な配合量の添加剤を混ぜ合わせることで、硬化が始まる「凝結始発時間」が48分から22分に短縮。壁の側面に吹き付ける最大の厚さも40㍉から120㍉へ3倍に増加させている。
一連の効果に伴い、従来の工法と比較して、耐久性を維持しながら施工性や補修材の付着性が飛躍的に向上。工期短縮と、20~30%のコストダウンを実現している。
昨年11月から今年3月にかけて、総武快速線馬喰町―錦糸町間の隅田川トンネルの上下線間にある鉄筋コンクリート壁のメンテナンス工事で新工法を導入。期間中、壁の両面の計28・8平方㍍を施工した。補修材の吹き付け作業に要した日数は計6日間で、従来工法の場合は21日間かかるという。引き続き27年度にわたって、同トンネルのメンテナンス工事で新工法を運用する予定。
また、同様の特性を持つ東海道貨物線東京貨物ターミナル~川崎貨物間の羽田トンネルで、25~30年度に実施予定のメンテナンス工事でも新工法の導入を検討している。
新工法は両社共同で特許出願済み。国土交通省主催「第7回インフラメンテナンス大賞」技術開発部門で優秀賞を受賞している。
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