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特集 JR北海道 「対象線区にH100形投入完了」 キハ40形の老朽置き換え

2024.04.01
投入の口火となった函館線小樽―長万部間「山線」を走るH100形=塩谷―蘭島間=

 加速力や登坂能力 優

 省メンテでコスト削減

 JR北海道の新型車両・H100形電気式気動車の営業運転開始から3月で5年目。平均車齢40年を超すキハ40形の老朽置き換え車両として、函館線小樽―長万部間(山線)に投入した2020年3月以降、主に札幌圏外の普通・快速用に増備を進めてきた。今年3月16日のダイヤ改正では釧網線で全置き換えを実施するなど、これをもって現対象線区全てにH100形が入った。車内環境の改善など、この新型車両の投入によって進められてきたサービス改善の動きを振り返る。(三浦 瑞基記者)

 

 H100形はディーゼルエンジンの動力でモーター駆動する同社初のワンマン対応電気式気動車。加速力や登坂能力が従来のキハ40形よりも優れ、推進軸など機械的部品が少ないシンプルな構造から、故障リスク低減やメンテナンスの省力化・コスト削減の面で秀でる。両数確保による効率的な生産ラインで品質向上と製造費抑制を図ろうと、基本仕様にJR東日本が導入する「GV―E400系」を採用しており、そこに耐寒耐雪構造や保安装置といった北海道独自の仕様を加えている。

 

 ■車内快適性向上 全自動の空調設備搭載

 受け入れ各所

 車両検修、乗務員教育に綿密な計画

 通路、座席広々バリアフリーも

 車内の快適性も向上した。冷房未完備だったキハ40形に対して、全自動の空調装置を搭載。座席配置の工夫で開放的な空間を確保し、車両中央部の対面クロス席のシートピッチはキハ40形比約1・5倍で足元広々。組み合わせを1人掛け+2人掛けとして余裕ある通路幅を確保した。客室窓も約1・7倍の大きさ。低床化による駅ホームとの段差軽減、車いすスペース確保、車いす対応の洋式トイレ設置など、バリアフリー化も進めた。

 投入先は、各線区に使用している車両のライフサイクルや利用状況、車両運用など総合的な判断に基づいて決定。線区またぎ列車の運用が効率よく組めるように時期を考慮し、既存車のキハ54形とキハ150形も有効活用しながらキハ40形との置き換えを進めてきた。H100形の円滑な投入に向けては、受け入れ各箇所の車両検修の事前準備や、乗務員教育に綿密な計画を組み立てて臨んだほか、ワンマンミラー移設など必要な地上側設備改修を前もって完了するよう調整に努めた。

 

 ■走行性能アップ 所要時間短縮を実現

 手始めとなった20年3月ダイヤ改正では、函館線小樽―長万部間のワンマン全列車をH100形化。苗穂運転所からの送り込み列車となる札幌発然別行き早朝直通1本にも採用した。ここでは、18年2月に導入した量産先行車2両に量産車13両を加えた15両体制のスタートとなった。

 翌21年3月ダイヤ改正の置き換えでは走行性能向上による所要時間短縮も実現した。全てをH100形にした室蘭線東室蘭―長万部間では平均8分(最大11分)、大半をH100形化した同線苫小牧―室蘭間では平均4分(同)を短縮。宗谷線は名寄以北直通を除く旭川―名寄間を全て置き換え、駅見直しと合わせて平均13分(最大31分)、一部導入の石北線旭川―上川間は平均5分(最大7分)所要を縮めた。

 22年3月ダイヤ改正でも速達化に寄与した。全列車を置き換えた根室線新得―釧路間は、新得―帯広間で平均7分(最大21分)、帯広―池田間で平均4分(最大13分)、白糠―釧路間で平均3分(最大8分)所要短縮。石北線旭川―上川間では上川以北直通列車以外をH100形に変更し、平均6分(最大11分)速達した。ダイヤ改正に合わせた投入はさらに続き、昨年3月には富良野線の全てをH100形化している。

 今年3月16日の改正では、石北線上川―網走間、釧網線を全て置き換え。函館線札幌―旭川間でも苗穂工場入出場車両を併結して回送できるようにキハ40形で担ってきた一部の列車をH100形に換えた。石北線では上川直通含め3年越しで全区間の取り換えを完了。留辺蘂―北見間で平均4分(最大6分)、北見―網走間で平均4分(最大9分)所要時間を短縮した。

 

 ■ラッピング車両 観光列車風に内装凝らす

 国・道の助成で無償貸与

 これをもって現計画線区全てにH100形が入った。最新配置数は(3月22日時点)、苗穂運転所15両、苫小牧運転所12両、釧路運輸車両所26両、旭川運転所42両の計95両。このうち8両は国(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)と北海道の助成・補助を受けて無償貸与されているラッピング車両。対象線区沿線の特色を描いた外装デザインのほか、観光列車としても使えるよう内装も凝らし、今冬の「室蘭線」「日高線」「根室線」「宗谷線」各バージョンをもって投入完了した。

 今後のH100形投入については、本年度中に計画する釧路運輸車両所へのさらなる4両配置をもって、キハ40形置き換え用として20年から進めてきた増備は一区切りとなる。担当者は「初めて電気式気動車を導入したために各セクションで対応することが多岐にわたったが、無事に増備が完了することは当社全体の成果であると感じている。今後もお客さまにご利用いただける安全で安定した輸送サービスの拡充を継続していく」とコメントした。

 車種のH100形統一が進んだことで、輸送サービス向上といった利用者側のメリットのほかにも、予備車両抑制による保有車両数の削減、多車種対応の不要化による乗務員養成時間短縮といった、事業者としてのメリットも新たに顕在化する。

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