訪日促進へ最新情報共有 JNTO インバウンド旅行振興フォーラム
持続可能性 消費拡大 地方誘客が重要
各地で訪日外国人の姿を目にすることが増えた。ニュース番組では、外国人でにぎわう全国各地の観光地が紹介されている。日本政府観光局(JNTO)が毎月公表する訪日外客数によると、1~7月の累計者数は2106万9900人、過去最速で2000万人を突破した。政府が掲げる観光立国に向けてJNTOでは毎年、「インバウンド旅行振興フォーラム」を開催、特別講演、JNTO海外事務所からの市場報告、パネルディスカッションなどを通じて、さらなる訪日促進に有効な最新情報を観光・旅行関係者に届けている。2024年度のフォーラムの様子を紹介する。
冒頭、蒲生篤実理事長が「宿泊旅行統計を見ても三大都市圏に加え、地方部でも回復傾向にあり、東アジアや欧米豪の各市場では2019年の同時期を上回る結果が出ている。政府の観光立国推進基本計画に掲げられている持続可能な観光、消費額拡大、地方誘客促進の実現に向けて戦略的で、きめ細やかなインバウンドプロモーションに取り組んでいるが、フォーラムでは各市場の特性に応じたプロモーションを紹介する」とあいさつ。
続いて、観光庁の飯田修章国際観光部国際観光課長が「観光庁の国際観光戦略」と題して講演した後、竹内大一郎JNTO企画総室長が「地方誘客強化に向けたJNTOの今年度の取り組み」、海外26拠点を持つJNTOの事務所から各拠点における最新の動向、今後の誘客に向けた取り組みが紹介された。
竹内室長は「観光立国推進基本計画に基づき、訪日プロモーション活動をしているが、『持続可能な観光』『消費額拡大』『地方誘客促進』を重要キーワードとしている。消費額は総額5兆円で、1人当たり20万円、地方への宿泊を2泊、訪日外国人旅行者数は19年の水準超を目標にしている」とした上で、観光庁と共同で策定した訪日マーケティング戦略について説明した。
パネルディスカッションのテーマは「持続可能な観光地域づくりに向けた取り組み」。サステナブルツーリズムに先進的に取り組む福井県の越前市観光協会観光ブランド推進チームの上城戸佑基主任、観光コンサルタント会社「Tricolage(トリコラージュ)」の吉田史子共同創業者兼取締役COO(最高執行責任者)、石見銀山群言堂グループの松場忠社長の3氏が登壇。各地で展開されている事例、その効果などが示された。門脇啓太JNTO市場横断プロモーション部次長がファシリテーターを務めた。
このほか、フォーラム参加者が海外事務所、本部の担当と個別に相談できる場をはじめ、「地球の歩き方 GOOD LUCK TRIP」「休暇村協会」「TAKANAWA GATEWAY Convention Center(JR東日本)」など計12者による商談ブースが設置された。
■ターゲット絞り地方へ呼び込む
日本政府観光局(JNTO)企画総室長
竹内 大一郎氏
訪日外客数は、この3月から5カ月連続で単月300万人を超えている。単純平均すると1日10万人を迎え入れていることになる。
日本発着の国際旅客定期便の便数の推移をみると、国際線はアウトバウンドの回復の遅れ、地方空港におけるグランドハンドリング体制における課題もあるが、コロナ後は順調に回復。24年夏ダイヤは当初週4874・5便で始まり、以降も回復、足元では5000便を超えている。
旅行消費額は4~6月期で19年同期比に比べて約7割増加、四半期として過去最高に。国別にみると回復途上にある中国を除くと、全ての市場で上回っている。円安による割安感が出ているようだが、宿泊数も平均で0・5泊延び、長期滞在による消費拡大に寄与している。
地域間連携を強化
地方部へインバウンドを呼び込むにはターゲットを絞ったプロモーションで、より効果的な情報を発信するとともに、同じターゲットを持つ地域同士が協力、横の連携を強化することが大事になる。これまでにもサイト内の情報を充実させてきてはいるが、蓄積した情報を効果的に旅行者に提供していくため、本年度は生成AI(人工知能)を活用する。ユーザーの質問に対し、JNTOだけでなく、地域の公式サイトの情報を読み込み、よりきめ細やかな情報を発信していく。実証実験を経て、来年度の後半には一般公開する予定だ。
欧州向け取組推進
また、旅行会社、航空会社と連携し、従来からのアジア市場に加え、今年は欧州に向けた取り組みを推進。羽田空港から国内線への乗り継ぎ利用促進キャンペーンを実施するほか、旅行消費額の拡大に向けて観光庁が選定したモデル観光地のサプライヤーとのネットワークを形成していく。
今年11月、沖縄で初めて旅行会社など向けに「Adventure Week(アドベンチャーウイーク)」を開催する。来年には、いよいよ「大阪・関西万博」。地方誘客につなげたい。海外事務所を活用して周知していくとともに、現地の旅行会社に万博チケットと地方への旅を組み合わせた旅行商品の造成を促していく。
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