特集 JR東日本「芝浦プロジェクト」 劇的に魅力的なまちへ
水辺と緑…快適に歩けるまちへ
「ブルーフロント芝浦」 街区名称きまる
JR東日本と野村不動産が共同で推進する「芝浦プロジェクト」。野村不動産が保有する浜松町ビルディング、JR東日本が保有する旧東海道貨物支線大汐線用地を合わせた4万平方㍍を超える敷地に、高さ約230㍍のツインタワーを開発するもので、JR浜松町駅から歩道、芝浦運河に面した親水空間などを整備。全体開業は2030年度の予定だが、1棟目のS棟の建設工事は25年2月の竣工に向けて着々と進んでいる。街区名称も「BLUE FRONT SHIBAURA(ブルーフロント芝浦)」に決定した。同プロジェクトの概要を紹介する。(秋元 尚浩記者)
ツインタワー開発
プロジェクトは、浜松町ビルディングの建て替え事業として、ツインタワー(S棟、N棟)を開発する。所在地は東京都港区芝浦1丁目1ノ1他。全体開業時は、最先端設備・仕様を備えたオフィス、ホテル、住宅、商業施設などからなる区域面積約4万7000平方㍍、延べ床面積約55万平方㍍の複合施設となる。
デザイン面ではカーテンウォールが採用され、海が空の色を映して表情を変えるように、建物の表情も季節や天候により変化するビルとなる。
タワーの開発では、JR浜松町駅からの快適にアクセスできる歩道「緑のアプローチ」については、都内有数の舟運ターミナル「日の出ふ頭」や、芝浦エリアを流れる「芝浦運河」と近接する立地を生かして船着場の整備、新規航路開拓なども行い、にぎわいの創出を図る。
街区名称の「BLUE FRONT SHIBAURA」には、芝浦が本来持っているポテンシャルがこの開発によって最大限に引き出されることや、空と海の最前列に位置するプロジェクトの圧倒的な開放感などの意味が込められている。
緑のアプローチについては、浜松町駅改札口を出て、鉄道線路上空の自由通路を渡り、旧芝離宮恩賜庭園の緑を眺めながらエスカレーターを下りた後、プロジェクトのエリアに向かって延びていく。
古川橋を渡るとプロジェクトの敷地内となるが、入り口には緑化された店舗があり、水景施設と相まって、緑がさわやかな、みずみずしい空間となるという。敷地の高低差を利用してテラスのようなゾーンも設ける。取り組みの方向性としては、駅からツインタワー、芝浦運河まで心地良く歩いてアクセスできるほか、街の人々の憩いの場となり、ウォーカブルな水辺空間づくりを目指している。アプローチの開通は25年春ごろを予定している。
ホテル、オフィス、商業施設が入居
S棟、2月竣工へ着々全体開業は30年度予定
21年10月に着手したS棟の建設工事は、3月中旬に建物の最上部、地上約230㍍に到達するなど順調に進んでいる。来年2月に竣工し、夏ごろから順次開業する予定。
S棟の用途構成は、高層部(35~42階)がホテル、中層部(7~33階)がオフィス、低層部(1~3階)が商業施設。このうち、ホテルは、欧州最大手のホテルグループ・アコーによるホテルブランド「フェアモントホテル」が日本初進出。ホテル名称は「フェアモントホテル東京」。オーシャンビューとシティビューが両立し、チャペルやバンケットを備えたフルサービスのラグジュアリーホテルとなる。
オフィスは、ワーカーが自ら働き方を選択できる環境提供などに向け、多様なワークスペースを用意。共用部の面積は、グローバル企業の共用施設割合をベンチマークとして、総貸室面積の10%相当を計画している。
その象徴となるのが28階の「スカイラウンジ」で、サッカーコート面積の約7割に当たる約4958平方㍍のワンフロア全体を共用部とし、ラウンジ、共創、バケーション、テラス、ウェルネスの各エリアを配置する。
南側のラウンジエリアは、いつものオフィスを離れてブレーンストーミング、一人で集中して作業できるなど、それぞれの利用用途に応じた使い分けにより、個人・チームのパフォーマンスを高めることができるエリア。
北東に位置する共創エリアでは、いつもと少し違うメンバーのアイデアに触れ、自ら発信することで新たなイノベーションのきっかけなどが生まれることを想定する。
東側のバケーションエリアとテラスエリアは、眼下に広がる東京湾や、広大な空、緑に囲まれた空間で仲間と集い、時を過ごせる。
北側のウェルネスエリアでは、フィットネス、サウナ、メディテーションルームなどスポーツクラブがそのまま入居したような空間を実現する。西側は会議室ゾーンが設けられる。
なおオフィスフロアには、野村不動産ホールディングス、野村不動産をはじめとする野村不動産グループ各社の本社も移転することになっている。
商業施設
芝浦運河や船着場、浜松町駅との緑のアプローチとシームレスにつながり、水辺に面したバルコニーや緑に囲まれたテラスなど自然を感じられる空間づくりに取り組む。
ショップは飲食店を中心に約40店舗で構成し、オフィスラウンジのような使い方から、忙しいワーカーのランチや充実のディナータイム利用まで幅広いニーズに応える。イベント施設としての機能も備え、芝浦エリアの「まちのリビングルーム」のように温かい空間として、地域コミュニティー醸成につなげる。
N棟については、地上45階、地下3階建てで、27年度の着工、30年度の竣工を予定。用途は住宅、オフィス、商業施設などを計画している。
■PJの意気込み
脱炭素
プロジェクトにおける脱炭素対応の取り組みでは、気候変動に対する緩和策として、最新の省エネ・省二酸化炭素(CO2)技術、再生可能エネルギー、カーボンニュートラル都市ガスの導入などにより、大規模複合開発における街区全体でのCO2排出量実質ゼロを実現する予定。
災害対策
地震対策では、ビル全体を制振装置化し、地震時の揺れを半減するシステム「BILMUS(ビルマス)」を世界で初めて採用。水害対策も高潮、津波、ゲリラ豪雨や、将来的な海面上昇の可能性を想定して、1階に防潮板を設け、防災センターは2階へ置く。またコージェネレーションシステム、非常用発電機などの電気設備は4階以上に設置するなどの対策が取られる。
◇
両社は先月30日に東京都港区のホールで「芝浦プロジェクト」記者発表会を開催した。街区名称とともに、プロジェクトに対する事業者の意気込みを改めて伝えることなどを目的としたもので、新井聡野村不動産ホールディングス社長、竹島博行JR東日本執行役員・マーケティング本部副本部長、松尾大作野村不動産社長が登壇。
今後を見据えて新井社長は、「東京の水辺においてその可能性を切り開き、ベイエリアに大きな影響を与えることによって東京の発展に寄与するべく、事業パートナーであるJR東日本と一丸となって取り組んでいきたい」と抱負を語った。
竹島副本部長は、芝浦エリアや浜松町駅周辺でのさまざまなプロジェクトに合わせて、JR浜松町駅の交通結節機能を高めるための自由通路整備事業などが進められていることに言及。その上で「今後、浜松町駅周辺エリアは劇的にかつさらに魅力的な街へと変貌を遂げていく」と力を込めた。
松尾社長は、プロジェクトの概要について説明した後、「東京の都市力の向上に新たな可能性を開く、ブルーフロント芝浦は、来年春のS棟竣工をもって大きな一歩を踏み出す。当社グループの2030年ビジョン『まだ見ぬ、Life & Time Developerへ』を体現する場として、さらにその先の未来へ向けて成長し続ける街として、皆さまに愛される街づくりをこれからも目指していきたい」と決意を述べた。
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