交通新聞社 電子版

墨滴 11月17日付

2023.11.17

 上野駅の開業140周年と小樽駅の開業120周年を記念した「パンダの里帰りイベント」が先日、JR上野駅で開催された。JR北海道とJR東日本首都圏本部の企画。1989年5月の両駅の姉妹駅提携締結時に上野駅から小樽駅へ贈られた「パンダのぬいぐるみ」が里帰りを果たした▼両駅が姉妹駅となった縁は、32年竣工(しゅんこう)で現役の上野3代目駅舎と、34年竣工の小樽3代目駅舎の外観が似ていること。88年の青函トンネル開業で両駅が1本のレールで結ばれたことも挙げられる▼イベントに登壇した齊藤裕司上野営業統括センター所長・上野駅長が「意外と知られていない」として披露したのは、歌人の「石川啄木つながり」だ。同駅15番線ホームの「ふるさとの訛なつかし停車場の 人ごみの中にそを聽きにゆく」という啄木の歌碑。各地から大勢の人が列車で上京する際の玄関口だった光景が思い浮かぶ▼伊藤美由紀小樽駅長も同駅横の啄木の歌碑を紹介。「子を負ひて雪の吹き入る停車場に われ見送りし妻の眉かな」。雪深い駅で言葉少なく妻子と離れる姿が思われる。「停車場」という言葉も共通点だ▼啄木の義兄の山本千三郎は小樽駅長を務めた縁もあるそうだ。鉄道で約1200㌔。はるかな距離をつなぐ縁をこれからも大切に――一点を見つめるパンダのぬいぐるみが、そう願っているように見えた。

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