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特集 JR東日本 秋田支社の冬季誘客キャンペーン「冬の秋田はほっとけない!」

2024.02.21
「なまはげ郷神楽」による力強いパフォーマンス

 芸能、温泉、酒…

 JR東日本秋田支社は今年12月から2025年2月まで開催する「秋田県大型観光キャンペーン」に向けたトライアル施策として、冬季誘客キャンペーン「冬の秋田はほっとけない!」を、秋田県と共に展開している。期間は2月29日まで。秋田県男鹿半島や秋田市内を中心に、秋田の冬の「ほっと」な魅力を味わう旅に出た。(福原 潤記者)

 

 ■男鹿 ナマハゲと温泉

 2018年11月に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「男鹿のナマハゲ」。観光エリア内には「なまはげ立像」が数カ所点在しており、無病息災をもたらす地域の守り神として地元民や観光客らを見守っている。

 秋田男鹿温泉郷「元湯 雄山閣」では、同館専用の源泉からお湯が噴き出す様子に驚かされる。季節や気温により茶褐色や、緑、白色と湯色を変える。温泉の不溶性成分が析出、沈殿した湯の花が豊富なのが特徴で、加水や加温をしていない源泉かけ流しという。まったりと肌に絡む柔らかな湯ざわりを楽しんだ。

 温泉でほっこりした後に訪れたのは、ナマハゲ太鼓ライブなどの各種イベントが開催される「男鹿温泉交流会館『五風』」。同県男鹿市を拠点に活動する「なまはげ郷神楽」による力強い和太鼓の演奏を拝聴した。ナマハゲに扮(ふん)した奏者によるパフォーマンスは迫力満点。本業や学業の合間を縫って、日々練習に励んでいるそう。フランスやフィリピン、台湾などの海外での公演も行っているという。

 

 男鹿線男鹿駅旧駅舎を活用

 稲とアガベ

 18年7月、旧駅舎から約100㍍南側に移転したのが現在の男鹿線男鹿駅の駅舎。では旧駅舎の活用はどうなったのか。答えは、新ジャンルの酒「クラフトサケ」の醸造所。同県外出身の岡住修兵社長が21年に創業したのが稲とアガベだ。清酒造りの技術をベースにしたフルーティーな味わいのクラフトサケをはじめ、レモネードやソフトクリームなどのノンアルコールメニューもラインアップし、お酒以外のメニューも楽しめる。

 

 ■秋田市内 いにしえに思いはせる

 翌朝、訪れたのが日本酒「高清水」で知られる秋田酒類製造(秋田市)の本社蔵。本社蔵の敷地には、二つの蔵と貯蔵庫、びん詰め工場、製品倉庫などを配しており、仕込みから出荷に至るまでの一連の工程を担っている。05年に高清水の歴史を現代に伝える手造りの蔵として設けられたのが「酒造道場・仙人蔵」。かつて使用されていた、酒造りの道具も展示され、近代の製法に至るまでの変遷をたどる。見学後は高清水の清酒と仕込み水を試飲。酒造りに適した口当たりがやわらかい軟水を挟みつつ、キレのある清酒を楽しんだ。

 

 ■美食 稲庭うどん

 「稲庭うどん」の老舗・佐藤養助秋田店で腹ごしらえ。醤油(しょうゆ)つゆとゴマ味噌(みそ)つゆの2種類の味が楽しめる「二味天せいろ」を注文。滑らかな舌ざわりとのどごしを誇る麺と、それに負けない特製つゆを堪能した。近年では、特製のグリーンカレーとレッドカレーつゆなど変わり種のつゆもメニューに加わったとか。地元民や女性などから人気を博しているという。

 

 秋田の美を鑑賞

 旅の最後に訪れたのが秋田県立美術館。秋田県民憩いの場の「千秋公園」を望む場所にたたずむ。安藤忠雄氏設計の瀟洒(しょうしゃ)な建物だ。館内の目玉は、縦3㍍65㌢、横20㍍50㌢の世界最大級の大壁画「秋田の行事」。フランスで最も有名な日本人画家と言われる藤田嗣治氏が、秋田市の資産家の故・平野政吉氏の依頼で1937年に描き上げた。秋田犬や雪だるま、竿燈と格闘する男たちなど、市井の人々の生活が刻まれている。眼前に広がるその迫力に、思わず息をのむ。

 JR東日本のシニア会員組織「大人の休日倶楽部」のテレビCMのロケ地に選ばれたこともある。同倶楽部のメインキャラクターを務める俳優の吉永小百合さんも同館を訪れている。

 

 ●民俗芸能・竿燈を知る

 秋田市民俗芸能伝承館(同市、ねぶり流し館)

 JR秋田駅から徒歩約15分。「竿燈(かんとう)まつり」「土崎港曳山まつり」など、秋田市に伝わる民俗芸能を、資料や映像を通して後世に語り継いでいる。館内に入り、まず目を引くのが、ずらりと並ぶ提灯と長さ12㍍の「大若」をはじめとする実物大の竿燈。提灯には竿燈まつりに参加している各町の町紋や大学の校章などが付されており、竿燈は「大若」「中若」「小若」「幼若」の計4種 類と体験用のミニ竿燈を展示している。

 

 妙技の実演、そして体験も

 同館内を案内していくださったのは、差し手(竿燈を上げる出演者)歴が50年以上に及ぶという同館職員の三浦敏秋さん。案内の最後には、しなる竿燈を見事な手さばきでコントロールし、その妙技を実演してみせた。続けて筆者も差し手を体験。来訪者が体験できるのは、幼稚園~小学校低学年向けの幼若と体験用のミニ竿燈の2種類。三浦さんと打って変わって、体験用のミニ竿燈でさえも、バランスを取るのは極めて難しい。幼若に至っては、あげた状態を数秒間維持することもままならなかった。

 

 ■冬の秋田はほっとけない ! とは?

 「HOT」なアクティビティ、「ほっと」する魅力

 今年12月から2025年2月まで開催する「秋田県大型観光キャンペーン」に向けて、地元の機運醸成や各種企画のトライアル施策として、今月29日まで実施中のキャンペーン。

 大雪や厳寒の印象が強い秋田の冬。しかしそんな秋田の冬にはさまざまな「ほっと」な魅力がある。「HOT(活気に満ちた)」な小正月行事に、体験アクティビティー、温泉など「ほっと」できる魅力を訴求している。

 ユニークなトライアル企画の一例として、同支社と秋田県仙北市は2月14日に実施した、「角館の火振りかまくら特別体験」が挙げられる。火振りかまくらは縄の先に結わえた俵に火をつけて円を描くように振り回すことで、火で体を清めながら、無病息災や家内安全を祈る小正月行事。赤く浮かぶ火の輪が幻想的な世界を作り出す。

 特別体験では、歴史案内人による火振りかまくらの歴史語りをはじめ、参加者専用の法被や手ぬぐいを使用し、伝統行事の体験機会を提供した。

 井料青海執行役員・同支社長・同支社鉄道事業部長は「秋田には『小正月行事』や『食、酒』など魅力あるコンテンツが多く存在する。(今年12月から25年2月まで開催する『秋田県大型観光キャンペーン』では)秋田の冬ならではのコンテンツの伝統や歴史を守りつつも、新たな付加価値を加え、秋田でしか味わえない特別な経験や体験ができるよう、さまざまな取り組みの実施を考えている。首都圏の駅での観光キャラバンの実施や、ポスターの掲出など、秋田の冬をPRし、秋田県への誘客促進と新幹線の利用促進につなげていきたい」と話している。

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