JR東日本 福島駅アプローチ線新設 本体着工から2年半 土木は約8割が完成
軌道も4割 26年度末に使用開始へ
JR東日本が進める福島駅アプローチ線の新設工事が順調に進んでいる。2021年7月の本体着工から2年半が過ぎ、これまでに土木工事は全体の約8割、軌道工事は約4割が完成。昨年は限られた時間内での線路移設工事や、前例のない巨大な桁の架設工事など、プロジェクト屈指の難工事も行われた。26年度末を予定する使用開始後は、ダイヤ作成の柔軟性や輸送障害時の遅延回復能力の向上が期待される。
新アプローチ線の計画は、JR東日本東北工事事務所(現・東北建設プロジェクトマネジメントオフィス〈東北建設PMO〉)が20年以上にわたって検討、設計を進めてきた。総事業費は約130億円。
同駅では東北新幹線「やまびこ」と山形新幹線「つばさ」の切り離し・連結作業が行われる。同駅と在来線(奥羽線)を連絡する単線の既存アプローチ線は、上下共用で下り14番線につながっているため、列車は上下とも14番線に乗り入れる必要がある。
上り「やまびこ」の場合、仙台方から渡り線で下り本線と交差して14番線へ入線後、到着する上り「つばさ」を待って連結。東京方の渡り線で再び上り本線へ戻るため、2回の平面交差が必要だ。
上り11番線に接続する新アプローチ線が完成すれば平面交差の必要がなくなり、同駅への山形新幹線上下列車の同時入線も可能になる。同新幹線の遅延は同社の新幹線網全体に影響が及ぶこともあるため、大きなボトルネックが解消することになる。
東北建設PMO初の3Dモデル
設計段階では、東北建設PMOでは初となる3Dスキャナーによる点群測量を基にした点群データと、完成形の3Dモデルを活用したことで、完成時のイメージを正確かつ立体的に把握。建設用地が限られている上、道路や東北新幹線などとの複数の交差箇所をクリアする必要があるため、3Dモデルを基に配線の検討を行ったほか、施工段階では足場の組み立て箇所や重機の配置の検討などに活用した。
昨年5月12日深夜から14日早朝にかけて、アプローチ線区間にある三河踏切などを含むエリアで奥羽線の線路移設工事を行った。アプローチ線建設に伴い三河踏切の踏切長が従来の8㍍から24㍍となるところ、踏切を通行する歩行者や車両の安全のため12㍍に抑える目的だ。約30時間の間に、総勢約550人態勢で従来の線路をアプローチ線側に寄せる形で切り替えた。
7月2日深夜から3日早朝の間には、県道庭坂福島線(庭坂街道)をまたぐ長さ34㍍、重さ117㌧の巨大桁の架設工事を実施。クレーンを設置する地盤を補強した上で、国内では珍しい規模の800㌧クレーンを組み立て、同街道や奥羽線の隣接線路を閉鎖して臨み、慎重な作業で予定通り完了した。
安全第一で完成目指す
24年度下期からは架線など電気や信号関係の設備の設置を進め、秋ごろにはアプローチ線と奥羽線をつなぐための線路切り替え工事が待つ。その後は、国の完成検査を経て試運転を行い、使用開始となる。
東北建設PMO南東北プロジェクトセンター福島派出の加藤格チーフは「作業内容は日々変わるため、変化点を意識して関係各所と確実に作業調整を行い、工程と品質を守りながら安全第一でプロジェクトを進めたい」と、完成に向けて気を引き締める。
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