JR東日本 生成AIチャットツールを全社員へ展開 10月から
DX推進、業務効率化目指す
JR東日本は11日、社内向けの既成生成AI(人工知能)チャットツールを6月から全社員に展開したと発表した。併せて、同社独自の業務内容にも回答できる生成AIシステムを内製で開発し、10月から全社向けに試験導入する。全社的な生成AIの利活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するとともに、社内ルールや専門用語などにも対応できるシステムの活用で業務の効率化も目指す。
同社グループは、グループ経営ビジョン「変革2027」のスピードアップを目指し、デジタル技術を活用した業務変革(DX)を推進している。
◆既成生成AIチャットツールを展開◆
社内の生成AIの早期活用を目指し、汎用(はんよう)の生成AI「ChatGPT3・5」をベースに、社内向けにセキュリティーを強化した生成チャットツール「JRE AI Chat」を構築。昨年10月に発足したイノベーション戦略本部内の「Digital&Dataイノベーションセンター」(通称・DICe=ダイス)が、同月から社内の一部箇所で試運用を行い、社内のDX推進に役立つことを確認した。
これを受け、今年6月から別の既成生成AIチャットツール「Microsoft Copilot」を、社内向け生成AIチャットツールとして全社員に展開している。
同社は全社員にタブレット端末を支給するなど、デジタルの活用による業務変革が可能な環境を整備。今後は、集めた社内の利活用事例を全社員へ展開して業務変革の実現を目指す。
◆内製システムが独自の業務内容にも回答◆
内製の生成AIシステムは、開発に当たってDICeが登録した社内文書に基づき回答を生成するRAG(Retrieval-Augmented Generation 検索拡張生成)を使ったシステムのプロトタイプを構築。昨年11月から社内の一部箇所で試使用を行っている。
同システムの本導入に向けて、アジャイル開発(素早い開発)の手法を採用。社内の意見を継続的に取り入れ、今年10月から全社で試使用を開始する予定だ。これにより、汎用的な生成AIでは回答できなかった社内規定やルール、専門用語などにも回答できるようになり、文書の効率的な検索など全社的な業務の効率化に役立てる。
同社は、各種システム・アプリの内製化開発のスピードアップや、社会的なエンジニア不足に対応するため、プログラムコーディングに生成AIを活用する。今後は、汎用生成AIでは学んでいない鉄道事業固有の情報を学習した「鉄道版生成AI」の開発を進める。また、コールセンター業務などグループ各社で共通する業務でも、生成AIの活用を目指す。
◆AIガバナンス強化に注力◆
AIガバナンスについて、同社グループは昨年11月に生成AI利活用時の注意事項をまとめた「JR東日本グループ 生成AI利活用ガイドライン」を策定。今年3月には、生成AI利用のシステムを導入・開発する際の注意事項を追加した第2版を発行した。社内向け生成AIチャットツールには、さらに独自の利活用ルールを定めている。
併せて、生成AIの利活用推進で必要なガバナンスの整備を継続的に実施。同社は「AIガバナンス協会」に所属し、先進技術による業務変革とリスク管理の両立を目指す。
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