特集 JR東日本新潟支社庄内統括センター 「羽越線100周年」地元に感謝、多彩な企画
「海里」乗車体験 日本海ビューダイニング
新潟、庄内の食を楽しむ
乗務員とのふれあいも
7月31日に全線開通100周年を迎えた羽越線。JR東日本新潟支社では秋田支社とともに、地域と連携して100周年を盛り上げるさまざまな企画を実施してきた。新潟支社庄内統括センターの取り組みを紹介するとともに、10月5日に5周年を迎えるのってたのしい列車「海里」に乗り、夏の〝日本海ビューダイニング〟を体験した。(相川 夏子記者)
羽越線新津―秋田間(全長271・7㌔)は1924年7月31日、村上―鼠ケ関間の開通により全線が開通した。以来、長きにわたり日本海のヒトとモノの輸送を担ってきた。100周年企画は新潟、秋田の両支社をはじめ、新潟支社庄内統括センター、新潟営業統括センター、秋田支社秋田統括センターが連携して進めてきた。
「日本海に沈む夕日の中を走る列車」をモチーフにした100周年ロゴを1年前に作成。沿線のイベントや首都圏での情報発信などを通じて機運醸成を図り、今年4月からは特急「いなほ」E653系2編成(各7両)への車両ラッピングとともに、新潟駅開業120周年との連動企画としてE653系(4両編成)のエクステリアデザインを「上沼垂色(かみぬったりしょく)」に変更。上沼垂色はSNSでも大きな話題を呼び、100周年当日は「特急シンボルマーク」を取り付けて新潟―酒田間を運転した。
7月27、28日には「海里」(HB―E300系)を使用した「羽越線100周年記念号」を、新津―秋田間の羽越線全区間でロングラン運転を予定していたが、新潟・山形県を中心とした記録的な大雨の影響で運休となった。
100周年当日以降も、臨時列車や鉄道ファン向けの撮影会などが計画されている。「きらきら日本海パス」では11月30日まで、100周年記念プレゼントキャンペーンを展開している。
庄内統括センターは酒田駅、鶴岡駅、酒田運輸区が統合して、新潟支社では最初の統括センターとして2022年3月12日に発足した。新潟支社の羽越線山形県部分、鼠ケ関―酒田間が管轄エリアだ。
支社またぎ連携
100周年企画を担当した今井貴士同センター営業・地域活性化室副長は「100周年企画は地元への感謝の気持ちを込めて進めてきた。統括センターが発足し、現場で企画業務を手掛けるようになり、地元との連携がより進んだ。支社をまたいだ秋田統括センターとの連携も続けていきたい」とその成果を語る。
「海里」のコンセプトは「新潟の食」「庄内の食」「日本海の景観」。白新線新潟―羽越線酒田間を金・土曜日・休日を中心に1日1往復運転する。
人気の4号車
全車指定席の4両編成(定員86人)で、1号車はリクライニングシート、2号車は4人掛けコンパートメントシート、3号車は売店とイベントスペース。4号車は24席のダイニングで、食事とドリンクをセットした旅行商品専用車両となる。今回の目的は4号車。人気が高く、何とか空いていた金曜日の上りの席を確保することができた。
列車は15時3分の定刻に酒田を発車。車内は広々として、グレーとブラウンを基調にしたインテリアだ。大きな窓には庄内平野の緑が広がる。
途中、鶴岡で30分ほど停車。外に出て散策するもよし、土産品を買い込むもよし。停車時間を活用してイベントなどが開催されることもあるという。のんびりと旅を楽しむ列車だ。
鶴岡では運転士による車内アナウンスが流れた。この日の山本雄翔(つばさ)運転士は「見習い乗務を終えて初めての乗務です。きょうは家族も乗り込んで見守っています」と明かし、車内はほっこりとした雰囲気に。
「揺れ」注意払う
山本運転士に話を聞くと、「緊張感を持ちながら運転していますが、停車時間にお客さまの楽しそうな様子を見るとやりがいを感じます。食事を楽しんでもらうため、揺れには細心の注意を払って安全運行に努めています」とにっこり。こうした乗務員やアテンダントとのやり取りが楽しめるのも魅力だ。
地元を味わう
鶴岡を出発すると、お待ちかねの食事が運ばれてきた。上り便の担当は、山形県鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」。小さめの箱には、庄内豚のミンチやハムを包んだ手打ちパスタ「トルテリーニ」や、山形牛の煮込みなどの料理がぎっしり。ティータイムということもあり、大きい箱はスイーツの詰め合わせだ。
シルクのまち鶴岡にちなんだ、シルク入りの生地にサクランボ入り発酵バタークリームを挟んだマカロン、フルーツのコンポートとナッツを使ったタルト、山形県産の米粉生地にサクランボのクリームを巻いたロールケーキなどなど。目で見ても味わってもおいしい。
景勝「笹川流れ」
列車は日本海沿いを走り、海面に日が差してキラキラと光っている。車掌による沿線紹介のアナウンスが随所で入り、景勝地「笹川流れ」に差し掛かると減速運転。透明度の高い澄んだ海と、日本海の荒波がつくり上げた奇岩などの造形美が、ゆっくりと目の前を通り過ぎていった。
笹川流れを過ぎ、桑川で再び30分ほど停車。駅舎には道の駅「笹川流れ」が併設され、国道345号線を挟んで波穏やかな日本海が広がる。道の駅で「海里」停車中にのみ販売されるスペシャルソフトクリームに舌鼓を打ち、波打ち際まで下りて日本海を体感した。
食と景観を満喫し、お腹も心も満たされた後は夕暮れの訪れを感じつつ、サンセットオレンジの車体の「海里」は一路新潟へ――。
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