交通新聞社 電子版

JR東日本 ポストコロナ時代の羅針盤に 刷新した統合報告書「JR東日本グループレポート2023(INTEGRATED REPORT)」

2023.11.30
㊨グループレポートの作成に携わった内藤副長(右)と松本ユニットリーダー㊧②「JR東日本グループレポート2023(INTEGRATED REPORT)」の表紙イメージ

 「価値創造モデル」を明示

 JR東日本が9月に発行した統合報告書「JR東日本グループレポート2023(INTEGRATED REPORT)」。本年度版は内容を刷新し、資本や強みを基にどう事業活動を営み、商品やサービスを提供しながら社会課題の解決につなげるかを「価値創造モデル」として明示。持続可能な成長を果たしていくための「マテリアリティ(重要課題)」も再定義した。社員のエンゲージメントの重視や成長戦略を明確にした事業展開の紹介などと併せ、ポストコロナ時代を歩む同社グループの羅針盤として分かりやすいレポートに仕上がっている。

 同社は20年度から、同社グループのESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みをまとめた「サステナビリティレポート」と投資家向け「アニュアルレポート」を統合し、非財務情報を含む統合報告書「JR東日本グループレポート」として発行している。

 「2023」に示した価値創造モデルは、統合報告書作成に関する指導原則や内容要素をまとめた「国際統合報告フレームワーク」を参考にブラッシュアップした。

 同社グループの持つ人的資本や知的資本などさまざまな「資本」と「強み」を投入し、「モビリティ」と「生活ソリューション」の事業活動を展開。商品やサービスをアウトプットし、さらに「社会的価値」と「経済価値」を生み出していく。その上で、「地域の豊かさ」「新たな生活スタイル」といった社会的価値は、それぞれがマテリアリティにつながっていくというモデルとしている。

 事業を見つめ直すきっかけ

 「2023」は昨年秋ごろから企画に着手。統合報告書の作成で先行する他社を訪ね、アナリストにも相談し、深澤祐二社長をはじめとする経営陣と価値創造モデルの策定を軸に議論を重ね、構想を育ててきた。

 グループ経営戦略本部経営企画部門経営統括ユニットの内藤祐子副長は「幅広い事業を包含する必要があった。社内にもさまざまな意見があり、何度も議論を交わして当社グループの事業を見つめ直すきっかけとなった」と振り返る。

 社会課題の解決と持続的成長追求

 マテリアリティは、事業活動を通して利益を追求するだけではなく、さまざまな社会課題の解決につなげながら持続的な成長を遂げるための概念だ。社会的価値のうち、「地域の豊かさ」はマテリアリティの「活力ある社会のために」、「新たな生活スタイル」は「新たな技術とサービスを社会のために(イノベーション)」など、事業活動を通じて提供する価値がどのような社会課題の解決に貢献するかを議論し、〝六つのマテリアリティ〟として再整理した。

 同ユニットの松本雄一ユニットリーダーは「多くの社会課題の中から、当社グループの事業がどれに貢献できるかを考えた」と説明する。

 「活力ある社会のために」の場合、マテリアリティを構成する要素であるサブマテリアリティとして「地方創生」「快適な都市」「共生社会」を設定。「地方創生」には、さらに目標として「東日本エリアにおける関係人口の拡大」「地域経済の活性化の推進」を置き、「地域と共創して取り組む観光流動創造・地域活性化策を23年度以降の累計150件」とするKPI(27年度の数値目標)を位置付けた。目標やビジョン達成のために、取り組むべきことを具体的に示した形だ。

 コミュニケーションツール

 このほか、社員のエンゲージメントに重点を置いた深澤社長によるトップメッセージや、ガバナンスにスポットを当てた冨田哲郎会長と社外取締役2人による座談会、主な事業ごとに成長戦略を明示した各セグメントの解説など、グループの姿勢をより明確に打ち出している。

 内藤副長は「社外の方はもちろん、社員も大切な読者。皆さんに読んでもらい、意見をいただいて次につなげていくためのコミュニケーションツールになれば」と話している。

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