交通新聞社 電子版

特集 ジェイアール東日本都市開発が手掛ける住宅事業

2024.04.17
駅直結立地の「ekism国立」。子育て世帯がメインターゲットだ(ジェイアール東日本都市開発提供)

 住みたくなるまちづくり

 心地よいくらしへ高品質の住宅提供

 今月20日に会社発足35周年を迎えるジェイアール東日本都市開発。「高架下等の開発・運営」「ショッピングセンター」「オフィス・住宅」「物販・飲食」の4事業を軸として展開し、沿線の価値向上やにぎわい創出に大きく貢献してきた。このうち、新築賃貸住宅の開業が相次ぐ住宅事業にスポットを当て、これまでの動きや最近のトピックスを紹介するとともに、根本英紀社長に今後の展望などについて話を聞いた。(相川 夏子記者)

 

 同社の住宅事業は発足以来、JR東日本やグループ会社の寮を主に手掛けてきたが、社員数減少に伴い建物や土地の有効活用を検討する中で、一般向けの住宅にも進出。賃貸住宅は、新築の「びゅうリエット」、社宅・社員寮などをリノベーションした「アールリエット」のブランド名で展開。「シェアリエット」などのシェアハウスもある。

 

 エリアマネジメントに注力

 近年特に力を入れているのが、近隣とのコミュニティーを重視した住み続けられるまちづくり・提案型賃貸住宅の開発だ。2018年には多世代交流をテーマに賃貸住宅や店舗棟、高齢者サービス施設、認可保育園で構成する「コトニアガーデン新川崎」、子育て支援 賃貸住宅「びゅうリエット三鷹」を開業した。

 ファミリー向け賃貸住宅とシェア型賃貸住宅、貸農園が一体となった19年開業の複合開発「リエットガーデン三鷹」は、21年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれている。

 JR東日本グループと野村不動産による複合型開発エリア「MEGURO MARC」では、22年に同グループ初となる高級賃貸住宅「目黒MARC レジデンスタワー」、翌23年に野村不動産との共同分譲マンション「プラウドタワー目黒MARC」が竣工(しゅんこう)し、MEGURO MARCのまちが完成した。

 今後も、JR東日本グループが開発を進める「TAKANAWA GATEWAY CITY」や「大井町駅周辺広町地区開発(仮称)」「(仮称)船橋市場町プロジェクト」で、高級賃貸住宅・ハイグレード住宅や複合住宅を提供する。

 また、分譲マンション開発については、23年2月に締結したJR東日本と東急不動産ホールディングスとの包括連携協定をきっかけとして、共同分譲のほか、単独での展開も視野に入れた積極的な事業展開を図る戦略を描いている。

 

 ライフスタイルに合う住まい

 相次ぎ開業

 ekism国立 びゅうリエット横浜平沼

 最近のトピックスは、今年3月から6月にかけて東京・国立と横浜、東神奈川に相次いで開業する新築賃貸住宅だ。

 複合賃貸住宅「ekism(エキスム)国立」は、3月29日に竣工、今月7日に入居を開始した。JR中央線国立駅nonowa口改札徒歩1分の駅直結立地。敷地面積約2700平方㍍、建物は鉄筋コンクリート造り9階建て、延べ床面積約6100平方㍍。子育て世帯ファミリーを主なターゲットとした98戸で、1階部分約700平方㍍は東京都国立市が賃借し、「子育ち・子育て応援施設」を来年開業する予定。

 ekismは新ブランドで、駅や駅ビルに隣接または駅徒歩1分以内の立地にあり、暮らしに便利な店舗や公共施設を併設した複合賃貸住宅を総称する。駅直結立地に住む付加価値を「eki(駅)sm(住む)」と分かりやすく表現した。同社では今後も積極的なブランド展開を目指す。

 一方、横浜と東神奈川はいずれもJR東日本の現場事務所があった場所を新たに住宅として生まれ変わらせた。「びゅうリエット横浜平沼」は3月30日開業。JR横浜駅徒歩11分の好立地で、10階建て50戸。単身、子育て世帯などさまざまなライフスタイルに対応する。

 「(仮称)東神奈川新築賃貸住宅」は6月の開業を予定。JR京浜東北・根岸線、横浜線東神奈川駅徒歩4分、10階建て180戸。両物件にはパナソニックの家電サブスクリプションサービス「noiful」を導入する。

 また、JR東日本グループならではの特徴として、3物件とも家賃保証とビューカードによるクレジット決済を組み合わせた「VIEW家賃保証プラス」を提供。ビューカードのクレジット払いにすると、1000円につき「JRE POINT」5ポイントが付与される。

 

 ■インタビュー

 ジェイアール東日本都市開発社長 根本英紀氏

 高級・ハイグレード賃貸に挑戦

 分譲事業の早期拡大へ

――住宅事業の位置づけについてお聞かせください。

 根本 当社は、高架下等の開発・運営、ショッピングセンター、住宅、物販・飲食の四つの事業を行っていますが、トータルの共通目標は「心地よいくらしづくり、住みたくなるまちづくり」です。その中で、住宅事業は「くらしづくり」の中核をなすものです。クオリティーの高い物件により、「心地よいくらし」を提供するとともに、JR東日本グループ全体の資産の高度活用を図っていくための重要なカードでもあります。

――住宅開発で心掛けていることは。

 根本 暮らし方や住まい方はコロナ前後で大きく変わりましたが、こうしたライフスタイルや価値観の変化を先取りしてハード面・ソフト面双方に落とし込むことが重要だと思います。既存の賃貸マンションの住民にアンケート調査を実施し、次の商品企画に反映させるなどの取り組みを行っています。

 また、「住みたくなるまちづくり」としてエリアマネジメントに力を入れています。コミュニティー構築や地域とのつながりをコーディネートすることによって、日々のくらしがより楽しく充実したものになっていけば、地域価値・事業価値の向上にもつながっていくので強く意識しています。JR東日本グループとしての安心感や信頼を基盤に、良い商品をご提供できればと思っています。

――新たな分野への挑戦についてはいかがですか。

 根本 プラウドタワー目黒MARCで培ったノウハウを基に、TAKANAWA GATEWAY CITYと大井町で高級・ハイグレード賃貸住宅を手掛けます。担当者が海外へ視察に行くなど、知見を重ねています。海外からの駐在員などに、高級賃貸住宅をリーシングする実績を持つJR東日本レジデンシャルサービスを100%子会社化するなど、準備を進めています。

 また、賃貸住宅ではシニア向けのマンションにもチャレンジしていきたいと考えています。

 そして、分譲事業の早期拡大は最重要テーマです。東急不動産には社員を出向で受けていただくとともに、共同事業を通じて知見を深めています。これまでの経験もベースに、当社単独での物件開発にもトライしていきたいですね。全てを自分たちの手で行うことで初めて学べることもありますから、まず小規模物件から始め、それによって成長し、より規模の大きい物件をわれわれ自身の手で引っ張っていけるようになりたいと考えています。

――今後の住宅事業の展望や目標についてお聞かせください。

 28年度末には6000戸展開めざす

 根本 23年度末で延べ展開戸数は2000戸を超えましたが、28年度末で約6000戸の展開を目指します。工事費の高騰や金利動向などの懸念はありますが、リスクマネジメントを適切に行いながら、部外からの物件取得を含め、その先の成長のためのパイプラインを確保していきます。

 また、分譲に加え、住み手が入れ替わり新陳代謝が図れる賃貸、商業施設など、当社が有する事業を組み合わせて、「まちをつくる」という視点で取り組んでいきます。さらにJR東日本グループ各社のサービスとの連携や、地域や社外パートナーとの協働により、さまざまな世代の方が共生するサステナブルな地域社会をつくりたいですね。(A)

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