JR東日本・鉄道総研 新幹線早期地震検知システムを改良 送電停止までの所要時間3分の1に短縮
P波からの推定、1秒ごとに
JR東日本と鉄道総研は5日、地震を速やかに検知して新幹線をいち早く緊急停止させる「新幹線早期地震検知システム」を改良し、来年3月から使用を開始すると発表した。地震の初期微動(P波)に基づく地震規模(マグニチュード)の推定方法を改善したことで、P波の検知から緊急停止のための送電停止までの所要時間を、現行式の平均3・9秒から1・3秒と3分の1に短縮。より早い緊急停止を可能とすることで、新幹線の一層の安全性向上に貢献する。
新幹線早期地震検知システムは、同社の新幹線早期検知地震計(沿線地震計、海岸地震計、内陸地震計)や、国立研究開発法人防災科学技術研究所の海底地震計などで観測された地震動に基づき、地震計から変電所へ送電を停止させて新幹線を緊急停止する仕組み。観測されるP波と主要動(S波)を用いることで、緊急停止の早期化と多重化を図っている。
S波を検知すると、S波の振幅から列車を緊急停止させる。また、S波より早く伝播(でんぱ)するP波による検知では、観測したP波を基に震央の距離や方位、マグニチュードといった地震諸元を推定。緊急停止範囲の新幹線をS波の到達前に緊急停止させる。
推定に用いる現行の推定式は、過去の地震から得られたP波の振幅や震央距離などとマグニチュードから統計的に求めている。一般的にP波の振幅は時間とともに大きくなるが、現行の推定式の係数は時間に関係なく一定としている。
今回の改良では、鉄道総研の研究成果に基づいて、地震検知後に地震規模を推定するプロセスを見直した。係数を1秒ごとに変化させることで、P波検知の1秒後から4秒後までの推定精度を改善。実際のマグニチュードにより近い値を、より早く推定できるようになった。
JR東日本研究開発センターが2020~22年にP波検知による緊急停止を行った13の地震を対象に、今回改良した推定方法を導入して検証。その結果、送電停止までの所要時間は現行式より平均2・6秒短縮できることが分かった。昨年3月16日に発生した福島県沖地震(マグニチュード7・4)では3・1秒短縮できた。
時速320㌔走行時(制動距離約3800㍍)にP波を検知して緊急停止した場合、改良式は現行式に比べて約230㍍手前で停車できるという。
同社は新幹線早期検知地震計全135台の改修を順次進めており、来年3月から使用を開始する。
JR東日本の深澤祐二社長は同日の定例会見で、「当社の新幹線は最高時速320㌔で走っているため、できるだけ早く止めることが安全性を高めることになる。今回の見直しは非常に大きな効果がある」と期待を述べた。
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