JR東日本 信号システムのDXを推進
輸送安定性、さらに向上
ESⅡ形電気転てつ機 検査のCBM化試行
特殊信号発光機 視認性確認システム導入
JR東日本の深澤祐二社長は6日の定例会見で、輸送安定性の向上や業務革新に向けて推進している信号システム・業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについて発表した。信号設備のメンテナンスでは、2024年度から「ESⅡ形電気転てつ機」の一部検査のCBM(状態基準保全)化の試行や、近赤外線を使用した「特殊信号発光機視認性確認システム」の実用化を予定するなど、ICT(情報通信技術)などの先端技術を活用し、地上設備の削減、より緻密な設備状態の把握、現場検査や夜間作業の削減などを推進。安全・安定輸送のさらなるレベルアップや省力化を図っていく。
ESⅡ形電気転てつ機は10年度から導入している次世代型の転てつ機で、同社管内には573台、うち首都圏に約560台設置している。各機器室のモニタ装置で、各種データの監視や故障予兆検知を行っている。
トルクの測定など一部検査のCBM化は、24年度から23台を対象に試行。現在は夜間に現地で転てつ機を動かしてデータを取得しているが、今後はクラウド上に蓄積された各種データを活用。データ解析を適宜実施することで年3回の現地検査を年1回とし、検査品質や生産性の向上を実現する。さらに検証を行い、25年度以降は対象箇所の拡大を目指す。
特殊信号発光機は従来、視認性を確認するため、夜間などの列車走行のない時間帯に、現地で定期的な目視検査を行っている。この検査の省力化を目的に、肉眼では見えない近赤外線と画像処理技術を用いた「特殊信号発光機視認性確認システム」を導入する。
日中時間帯に走行する営業列車から映像を撮影し、画像解析により視認性を自動判定する。1回の列車走行による映像撮影で、撮影した全区間の検査が自動で可能となる。管内全69線区のうち、地方線区を中心とした31線区約6800カ所に近赤外線を発する特殊信号発光機の設置を進めており、24年度から順次実用化予定。
このほか、信号設備に関する取り組みでは、20年4月からレール側面に取り付けられている軌道回路用信号ボンドの取り付け状態を確認する「信号ボンドモニタリング」の運用を開始。営業列車に搭載したカメラで取得した画像データを、過去に撮影した正常なボンドの画像と比較して良否判定を行うもので、運用拡大に伴い、22年度は修繕が必要な信号ボンドの異常を13件発見した。
地方路線向けの新しい踏切制御システムの開発では、20年9月から八高線でGNSS(全地球航法衛星システム)と携帯無線通信網を活用した走行試験を計128回実施。同線高麗川―北藤岡間への踏切制御機能導入を目指し、さらに試験を進めていく。
昨年3月には、AI(人工知能)が過去の故障対応記録から類似事象を自動抽出して原因推測と対策提案を行う「鉄道信号システム故障時のAIによる復旧支援システム」を東京総合指令室に導入した。同システムは今年1月、「第7回インフラメンテナンス大賞」の優秀賞を受賞している。
「特殊信号発光機視認性確認システム」で列車から撮影した映像例(枠内が赤外線発光)
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