交通新聞社 電子版

墨滴 7月17日付

2024.07.17

 新紙幣発行から2週間。まだ実物を手にする機会は訪れず、周囲の人に見せてもらったこともない。そもそも現金を銀行口座から引き出すことが、以前に比べて確実に減った。いつしか支払いの中心がキャッシュレスになっている▼もちろん〝現金派〟の人もいるだろうが、決済手段が多様化したことは間違いない。前回の紙幣デザインの変更は20年前の2004年。JR東日本のICカード「Suica」が、鉄道の出改札以外に店舗で利用できるようになった年だ。スマートフォンが普及し始めるのはその数年後である▼今回の新紙幣発行を契機に、改めてキャッシュレス化の進展を実感した。ジェイアール東海バスの高速バスが、今月から車内の現金支払いで使う運賃箱の運用をほぼ取りやめた。インターネットの予約サイトやきっぷうりばで事前に支払いを済ませる利用者がほとんどだという▼事前決済の全てがキャッシュレスではないが、こんなデータもある。国土交通省がまとめた資料によると、主要バス事業者のキャッシュレス決済比率は9割に迫る。路線によっては現金決済比率が1%未満のケースもあるそうだ▼新紙幣に対応するための機器類の改修費用は高額に上り、事業者の負担は大きい。同省では「完全キャッシュレスバス」の実証運行を今年秋に始める。新紙幣の発行がキャッシュレス化に拍車をかけたようにも映る。

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