特集 民鉄各社 東京都心部で進む大規模開発 本格的に動き出した3プロジェクト
首都圏大手民鉄各社が東京23区内で進める大規模な再開発プロジェクト。このうち、小田急電鉄が中核的に進めてきた「新宿駅西口地区開発計画」、京浜急行電鉄が推進してきた「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」、東武鉄道などが検討していた池袋駅西口の再開発計画の三つのプロジェクトが3月下旬、それぞれ大きな動きを見せた。新宿、品川、池袋で進む各開発プロジェクトについて、概要を紹介する。(鴻田 恭子記者)
■都市機能を充実、再強化
小田急新宿駅西口地区開発計画
3月25日に着工式が行われたのは、小田急電鉄と東京地下鉄(東京メトロ)、東急不動産が進める新宿駅西口地区開発計画。駅施設、商業施設、オフィスなどが入る高さ約260㍍の複合ビルを2029年度竣工を目指し建設。開発計画地は、東京都新宿区新宿3丁目と西新宿1丁目で、敷地面積は約1万5720平方㍍ある。
北側のA区(小田急百貨店新宿店本館跡地など)は3社の共同事業。敷地面積約8060平方㍍で建物は地上48階・地下5階建て、延べ床面積約25万1000平方㍍。地下2階―地上10階に商業施設、12、13階にビジネス創発機能を持つ施設、14~46階にハイグレードオフィス、47、48階に頂部の展望を生かした施設の入居を検討している。
一方、南側のB区(現・新宿ミロード付近)は小田急の単独事業。敷地面積約7660平方㍍の区画に、地上8階・地下2階建て、延べ床面積約2万8000平方㍍の建物を整備予定。こちらは商業施設、駅施設が中心となる。新宿ミロードの営業終了時期は未定としているが、25年度には解体に着手する見通しだ。
この計画は、東京都や新宿区などが掲げる「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」に沿ったもの。新宿エリアはビジネス・商業など高度な都市機能の集積、圧倒的な交通利便性といった利点の一方、建物の老朽化や都内他エリアの集積強化による相対的な地位低下、駅構造が複雑で動線が分かりにくいなどの課題があった。
そこで整備方針では▽国際交流都市の玄関口にふさわしい機能の充実・強化▽駅とまち、まちとまちの回遊性向上▽国際競争力強化に資する機能導入――などの方向性を掲げ、複雑化した新宿駅の動線を整理し、歩行者ネットワークや滞留空間を整備するなどして回遊性を高めていく。
計画は20年9月に公表され、22年10月に小田急百貨店新宿店本館が営業終了、フロアを縮小し同新宿西口ハルクに移転した。同新宿店本館など地上建物部分はすでに解体され、現在、西口のバスターミナル付近から東口側の建物が見えるようになっている。今年2月には、共同事業者候補としていた東急不動産の正式参画も決定した。
新宿駅西口周辺ではJR東日本と京王電鉄が推進する新宿駅西南口地区の開発計画も控えている。こちらは40年代にかけて整備を進める方針で、すでに京王線新宿駅と東京メトロ新宿駅間をつなぐ動線整備などが動き出している。
■集中整備でエリア発展支援
京急品川駅西口地区A地区新築計画
3月22日には、京浜急行電鉄が東京都港区高輪3丁目地区(旧シナガワグース敷地)の「(仮称)品川駅西口地区A地区新築計画」について、同社取締役会で事業化を正式決定。25年度にオフィスや商業施設、ホテル、MICE(カンファレンス、多目的ホール)などを備えた複合ビルの新築工事に着手し、29年度に開業予定というスケジュールを発表した。
品川駅西口エリアでは、昨年6月に都市再生機構(UR)が施行者となる「品川駅西口土地区画整理事業」(約11万9000平方㍍)が国土交通大臣から事業計画認可を受け、今年2月に仮換地指定がなされた。今回の計画地はその一角で、約2万3600平方㍍の敷地に、地上29階・地下4階建て、高さ約160㍍、延べ床面積約31万3100平方㍍の複合ビルを建設する。
主な機能として、地下1、2階に多目的ホール、5、6階にカンファレンス(以上MICE機能)、地下1階と1~4階に商業施設、7~22階にオフィス、上層部の23~29階にラグジュアリーホテルが入る計画。バス乗降場や駐車場なども備える。
20年4月の計画公表時に共同事業者としていたトヨタ自動車とも正式に、複合ビルを共同で建設・運営とともに持ち分の一部譲渡などに関する契約を締結した。オフィスの一部を取得するトヨタは、この地に新東京本社を置く計画を公表している。ビルの持ち分割合は最終的に、京急75%、トヨタ25%となる予定だ。
品川エリアも新宿同様、複数の開発事業が進められており、京急が関連する計画だけでも、京浜急行本線(泉岳寺駅~新馬場駅間)連続立体交差事業(29年度事業完了予定)やJR東日本とともに手掛ける品川駅街区地区開発計画(京急品川駅付近)などが動き出している。京急では横浜、羽田、品川を結ぶエリアを「成長トライアングルゾーン」と位置付けエリアの発展を支えるとともに、他エリアとの相互連携で沿線全体の活性化を図る方針を打ち出しており、当面は品川への投資が続く。
■組合事業、単独事業を一体的に
東武池袋駅西口の再開発計画
3月26日には、東武鉄道と池袋駅西口地区市街地再開発準備組合(事業協力者=三菱地所、三菱地所レジデンス)が、池袋駅西口地区再開発計画に関する都市計画手続きが開始されたと発表した。
計画地は豊島区西池袋1丁目の約6万1000平方㍍で、A~Dの四つの街区に分けた。駅とまちが一体となったまちづくりと新たな沿線価値創出に向け、池袋駅西口地区市街地再開発準備組合による事業地区(約4万6000平方㍍)と東武百貨店池袋店や鉄道敷地部分を含む東武単独事業地区(約1万5000平方㍍)を一体的に整備する。工事期間(解体を含む)は27年度から43年度の予定だ。
道路や公園などの公共部分を除く敷地面積は約3万3420平方㍍で、交通広場のあるA街区にはA棟(地上41階・地下4階建て、高さ約220㍍)、B街区には高層部と低層部からなるB棟(地上50階・地下5階建て、高さ約270㍍)を建設。東武単独事業となるのはこのB棟の低層部で、9階建て、高さ約60㍍の規模で計画している。A棟とB棟高層部、B棟低層部に囲まれた場所には、駅とまちの結節点となる空間を整備する。C街区にはC棟(地上33階・地下6階建て、高さ約185㍍)を建設。D街区は池袋西口公園などを含む街区となる。
建物の主な用途として、オフィスや商業、宿泊、駅機能のほか、情報発信施設や人材育成支援施設なども計画されている。今後、国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトとして、区域計画認定に向けた手続きが進められる。
池袋駅周辺では駅ビル集中からの脱却「脱・駅袋」を掲げ、アート・カルチャー機能の強化などによるウォーカブルなまちづくりが計画されている。開発計画では、歩行者空間の整備や駅からまちへの誘導なども重視されている。
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