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特集 JR東日本 新本部長・支社長インタビュー 下山貴史 執行役員・水戸支社長・水戸支社鉄道事業部長

2024.09.18
下山貴史氏

 茨城DC 成功を未来へ

 社員の発意、行動力生かす

 水戸支社のイメージは「堅実」だった。着任してみて「堅実ながら社員はチャレンジ精神旺盛で行動力がある。一緒に仕事に取り組むことへの期待が高まっている」と心中を明かす。

 主に橋梁(きょうりょう)やトンネルなどのメンテナンスと防災対策などを担ってきた。入社2年目の夏、台風の大雨で御茶ノ水駅の線路が冠水した。「線路がボコボコと音を立てながら沈み、濁った水が土砂と共に脇の神田川へ吹き出し、線路が壊れていく」様子を目の当たりにした。

 現場を見た経験から、原因究明の段階で「こういう事象がこのようなプロセスで起こって災害につながった」と有識者に説明できた。「現地・現物・現実の『三現主義』の重要性を感じた。その後も現場に駆け付け、自分の目で確認するようになった」。印象に残る経験が仕事の流儀となっている。

 究極の安全のため、「攻めの安全」を目指す文化の構築に意欲を燃やす。「昨日までのやり方で安全だったからそれを漫然と継続するのではなく、さらに高みを目指して何ができるかを考え、行動した結果が安全でなければならない」と訴える。

 昨年開催された「茨城デスティネーションキャンペーン」(茨城DC)は、「新しいスタイルで成功させたDC」として各方面から高く評価された。「観光名所や温泉へ行こうというだけではなく、サイクリングやアウトドアなど『茨城に行けばこんな体験ができるのか』と思える体験型企画を地域の皆さまと連携して実現した。地域活性化や地方創生にもつながる」と力を込める。

 会社の成長を加速させるため、技術やアイデアで仕事の進め方を変えてコストダウンを図る一方、利用者を増やす必要もある。今後は茨城アフターDC、水郡線全線開通90周年、福島DCと、切れ目なく観光施策が続く。「茨城DCの成功を一過性のものにしてはいけない」。イベント列車の運行や地域連携企画など、社員の発意や行動力を生かして将来へつながる取り組みにしていく考えだ。

 自らの役割を「社員が仕事を通じて成長を実感できる仕組みや環境づくり」と認識。「課題に誠実に向き合い、できない理由を考えるよりどうすればできるかを考え、勇気と信念を持ってチャレンジしよう」と呼び掛ける。

 映画鑑賞と、歴史物を中心とした読書が趣味。好きな言葉は城山三郎の著書に見つけた「少しだけ、無理をして生きる」。自らの仕事のスタイルにぴったりはまっている。(岡崎 慎也記者)

 ◇下山 貴史(しもやま・たかし)氏略歴 1992年4月JR東日本入社。仙台支社仙台土木技術センター所長、設備部(土木)構造物管理課長、同次長、仙台支社設備部長、マネジメント監査部長などを経て今年6月から現職。大阪府出身。59歳。

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