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特集 訪れた人に至福の時間 ~埼玉・川口市「ベーカリーレストラン グランシャリオ」を訪ねて~

2024.03.11
レストラン施設として活用されている旧「北斗星」グランシャリオ

 現役時代の姿趣そのままに

 豪華さの一端、今でも

 絶品の洋食メニュー提供

 地元の人気スポットに

 かつて寝台特急「北斗星」の旅のワンシーンを演出した食堂車「グランシャリオ」。その車両を活用したレストラン施設が埼玉県川口市内にある。その名は「ベーカリーレストラン グランシャリオ」。現役時代の姿、趣をそのままに、ムードあふれる車内では手作りパンはじめ、絶品の洋食メニューが提供され、地元の人気スポットになっている。

 

 上野―札幌間を結んだ「北斗星」。1988年3月の運転開始とともに豪華な列車旅を演出した。その一端を担ったのがグランシャリオだった。「北斗七星」の意味を持つこの車両は、豪華フランス料理を予約制で味わうことができる食堂車として人気を集めた。北斗星は北海道新幹線開業前年の2015年8月まで運行され、その後はJR東日本の施設で保管された。

 当時、JR東日本の武蔵野線、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の東川口駅周辺での新たな食のランドマークを立ち上げようとしていた不動産販売業などを手掛けるピュアホームズ(埼玉県川口市)が、障がい者支援事業と保育事業に取り組む子会社のPYC(同)を通じてJR東日本から車両を購入し、16年5月に開業した。車両購入にあたっては、JR東日本OBで埼玉高速鉄道の荻野洋社長の紹介がきっかけになったという。

 グランシャリオは、隣接の古民家イタリアン「リストランテ谷澤」、そばと和食のお店「神楽 本店」の飲食施設、リハビリ型デイサービス、サービス付き高齢者住宅などとともに、ピュアホームズが地域密着と地域貢献の一環として整備した「ピュアヴィレッジ」敷地内に開設された。なお、名称の「ピュアヴィレッジ」は埼玉スタジアム線東川口駅の副駅名として採用されている。

 「ブルートレイン」の名のままに青色の車両が特徴で、現役時代を思わせる美しさがあった。PYCではレストランで働く障がい者の雇用を守るため、車両外装などの修繕を行うプロジェクトを立ち上げ、21年に実施したクラウドファンディングでは資金(約1000万円)を集め、22年3月までに完全再生させた。

 修繕内容は▽外壁の塗装▽屋根の防水工事▽足回りの塗装▽近隣の防音対策として足場シート囲い▽車両窓ガラスの交換▽車体補修作業など多岐にわたった。当時の模様を伝えるクラウドファンディング・READYFOR(レディーフォー)のサイトでPYCの嶋田悟志社長は「約50年の歴史を作ってきた車両を残し、今グランシャリオで働く従業員の雇用を守らなければなりません」などと記している。

 クラシック音楽が流れる落ち着いた雰囲気の車内。テーブル、照明といった調度品はそのまま受け継がれ、豪華な寝台特急の一端を今に伝える。ピンク色のテーブルクロスなどが温かみのある食の空間を演出する。個人、グループだけでなく団体での貸し切りも可能という。

 メニューは、「天然酵母の自家製焼きたてパン」のほか、「3種きのこ入り牛肉カレー」「オリーブオイル仕立てシチュー」「手ごね煮込みチーズハンバーグデミグラスソース」「フレンチトースト」「クリームシチューパン」など多彩。パンはソフト系、ハード系、甘い系合わせて10種類以上がラインアップされ、併設のベーカリーショップと連動する形でランダムに提供される。コース料理でも1人2000円程度で収まり、財布にもやさしい。

 家族連れなど地域住民のほか、鉄道ファンと思われる人、女性の1人利用が見られるのは、味もさることながら、レストランスタッフのきめ細やかで、丁寧な接客の心地良さから。温かみのある車内空間は訪れた人に至福の時間(とき)を提供する。

 寝台特急ブームのきっかけをつくった「北斗星」の一車両は、地域の雇用創出と地域住民の憩いの場としての〝第二の人生〟を歩んでいる。

 グランシャリオで提供される手作りパンの評判を受けて、3月1~3日にはJR東日本大宮支社が京浜東北線川口駅構内で開催した「えきパン」イベントに初出店し、話題を集めた。

 

 【店舗所在地】

 埼玉県川口市戸塚3ノ31ノ31。JR武蔵野線・埼玉高速鉄道東川口駅南口徒歩7分。営業時間は平日11~17時(水曜日定休)、土曜日・休日8~17時。

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