特集 JR東日本 秋田支社 大館駅新駅舎の使用開始
駅機能と地域交流機能 一体化
市と秋田支社、JRクロスが協定
駅を出会いの場に
JR東日本秋田支社は10月29日、奥羽線・花輪線大館駅新駅舎の使用を開始した。秋田県大館市と同支社は2020年3月に締結した「奥羽本線大館駅周辺整備事業に関する基本協定」に基づき、21年3月に新駅舎の施工協定を締結。同年7月から大館合築駅舎新築工事を開始した。鉄道駅機能と地域交流施設機能が一体となった新駅舎の建設を進めてきた。同駅周辺のにぎわい創出や交流人口拡大につながることが期待されている。北東北エリアの玄関口である同駅の姿を紹介する。(福原 潤記者)
「より見世」など集う工夫
ニューデイズ内で地産品販売
大館駅は、秋田県北部の中心都市である同市の玄関口として1899年11月15日に開業。今回の新駅舎で3代目となる。新駅舎のコンセプトは「木目を基調とした地域住民がつどえる駅舎」。鉄骨造り2階建て、延べ床面積約1300平方㍍。駅舎内には同市による交流拠点「駅なか交流センター」も入り、イベントホールや会議室、勉強スペースなどを備える。
同市が秋田スギの産地で「大館曲げわっぱ」などの伝統工芸品が盛んなことを踏まえて、外観は木調の軒をイメージしたデザインとなっている。同駅前の同市観光交流施設「秋田犬の里」との一体感を持たせ、アクセントとしてれんが調の外壁としたほか、内観にも木調を採り入れた。
新駅舎には「話せる指定席券売機」や自動改札機、待合室、多機能トイレ、JR東日本クロスステーション(JR―Cross)リテールカンパニーが運営するコンビニエンスストア「ニューデイズ」などを設置。秋北バスのチケットカウンター、イベントホールなども設けている。
福原淳嗣大館市長は「まちとまちがつながって、人が動くことで、いろいろな物語がうまれて暮らしが豊かになる。その一つのシンボルが今回の新駅舎だ」、井料青海JR東日本執行役員・秋田支社長・同支社鉄道事業部長は「地元の方々に、この新しい大館駅に鉄道を使わない日も来ていただき、みんなの出会いの場になっていただきたい。新しい駅舎が今まで以上に皆さまから愛していただけるように、頑張っていく」とそれぞれ話す。
今後はエレベーターの新設を進め、バリアフリー化を行うほか、同駅舎周辺では、同市によりバスなどが乗り入れるロータリーや、駐車場などの整備が進められている。
新駅舎内で実施されたユニークな取り組みの一つに、ニューデイズにショップインショップ「THE ODATE より見世」がオープンしたことが挙げられる。
新駅舎が同市の魅力であふれ、地域住民も気軽に集える場所を目指すという思いが一致したことから、同支社と同市、同リテールカンパニーの3者で、駅待合室に関する連携協定を締結。ニューデイズで取り扱う弁当など約800点の商品に加えて、地元の農家が育てた採れたての旬の野菜や果物をはじめ、地元で人気のベーカリーによる手づくりパンや、大館曲げわっぱなどの工芸品、土産品など約80品目を取り扱う。地域特産品の販路拡大に取り組むことで、地域の活性化を推進している。
白石敏男JR―Cross常務・リテールカンパニー長は「当社は駅の価値最大化を使命としているが、とくに地方エリアでは、ニューデイズを核として駅ににぎわいをつくっていきたい」と話す。
同社は、ニューデイズの品ぞろえを地域の日常的ニーズに応えられるように見直し、行政やJR東日本と連携して、鉄道を利用しなくても足を運びたくなる駅をつくる「地方拠点駅にぎわい創出プロジェクト」に取り組んでおり、同駅のTHE ODATE より見世は、同プロジェクトの第一号店舗となる。
駅待合室には居心地の良いテーブルやいすを用意し、地域住民も集うことができる憩いの空間を提供。利用客からは「待合室が広いので便利。コーヒーがゆっくり飲めるのが良い」や「車で遠くまで行かないと買えなかった商品が近くで買えて便利になった」などの声が寄せられている。そのほか、ニューデイズ店頭で提供する「EKI na CAFE(エキナカフェ)」のカウンターコーヒーの売り上げが、同駅仮駅舎で営業していた時と比較して、約3倍に伸長しているという。
同社は「将来的には、首都圏の当社店舗で大館の産品を販売し、大館の魅力を発信することで、大館に向かう観光流動を創出することを目指す」としている。
■同駅周辺の観光資源と駅弁事業者の取り組み
忠犬・ハチ公のふるさと
大館市は「忠犬ハチ公」のふるさと。ハチ公は今月10日に生誕100周年を迎えた。2020年、渋谷駅前にハチ公の像があることにちなみ、渋谷駅前にあった元東急5000系車両(通称・青ガエル)が寄贈された。
同市観光交流施設「秋田犬の里」芝生広場に展示されており、渋谷や大 館の歴史などを発 信する交流拠点や市民の憩 いの場として活用されている。
駅弁の「花善」も活性化に貢献
大館駅前に本社を構える駅弁事業者の花善(同市)。18年に日本レストランエンタプライズ(NRE、現JR東日本クロスステーションフーズカンパニー)がフランス・パリのリヨン駅に期間限定の駅弁売店「EKIBEN JAPON」をオープンした際に共同で販売したのを契機に、現在ではパリへの進出も果たしている。
同社の創業は、同駅が設置された1899年11月15日。同社の八木橋秀一社長は「(大館駅とは)いわば『双子の関係性』。今回の新駅舎の開業は大変うれしい話題だ」と話す。
同社は、「新駅舎完成をきっかけに、地元のことに親しんでもらおう」と地元の小学生が開業を記念して作成したまち歩きマップを、同社が手掛ける駅弁に限定1万枚を同封して配布。新駅舎開業を祝った商品として「忠犬ハチ公の故郷 おおだて鶏めし(1350円)」「新駅舎アクリルジオラマ(700円)」なども販売している。
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