交通新聞社 電子版

墨滴 7月10日付

2024.07.10

 座席のテーブルの両面をダスターで拭いて戻す。床にこぼれた水を見つけたら拭き取る。荷棚の上下面にモップをかけ、窓は周囲、縦、横の順の「格子拭き」。座席の脚に当てないようウエットパッドで床を拭う。どれもが目を見張るスピードだ▼新幹線車両の清掃を担うJR東日本テクノハートTESSEIの車両清掃競技会の様子を見た。東京駅の「7分間の奇跡」で名をはせるスピード勝負の駅折り返し清掃をはじめ、車両基地での念入りな清掃も担う▼競技会では、出場者の動きを車両のモックアップの天井付近に設けられたレールカメラが追い、出場者の視線の動きを示すアイトラッキングカメラの画像もモニター画面に映し出される。インストラクターの詳細な解説も熱気を高める▼競技時間が30分の基地清掃は、清掃すべき汚れなどの「仮設」が63カ所、10分の駅折り返し清掃は51カ所設けられる。座席のポケットに通常とは異なる冊子を紛れ込ませるなど、よほど目を凝らさなければ見つけられそうにない。出場者は日頃鍛えた技と集中力で次々とクリアしていく▼コロナ禍では利用者の減少で車内の汚れも少なかった。収束後は利用者数の回復に伴い、コロナ禍前と同等以上の清掃レベルが求められる。「列車を降りる時は、乗った時と同じ状態に戻そう」。競技を終えた出場者が息を弾ませる姿を見て、改めてそう思った。

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