特集 あふれるレトロ感 湘南観光ナビゲーター ~江ノ島電鉄線を訪ねて~
江ノ島電鉄(江ノ電)は、神奈川県湘南エリアの藤沢―鎌倉間を約37分で結ぶ。モスグリーンとクリーム色を主体としたレトロ感あふれる車両は、江の島を望む海岸沿いや住宅地の中、店舗が立ち並ぶ道路併用区間をゆっくりと走り抜けていく。距離にしてわずか10㌔だが、沿線の歴史、文化、自然といった〝湘南観光〟をナビゲートする鉄道路線として来訪者の人気を集める。
■増加する入込客数
首都圏(東京方面)から鉄道で現地を訪れるには、JR東日本の横須賀線で鎌倉に向かうか、東海道線で藤沢に向かうか。あるいは小田急電鉄江ノ島線で藤沢、片瀬江ノ島に向かうか――。
江ノ電の起点は藤沢だが、ここでは終点の鎌倉から1日乗車券「のりおりくん」を購入して乗車した。
江ノ電鎌倉駅の三角屋根が来訪者を出迎えた。側壁に「長谷・江ノ島・藤沢方面 江ノ電のりば」の文字。駅に向かうと自動券売機前には長い列ができていた。東アジアからと思われる訪日外国人客によって、異国の地にいるような雰囲気に包まれる。
鎌倉・江の島エリアはコロナ禍以 降、観光客が戻りつつある。鎌倉市がまとめた2023年の延べ入込観光客数は、約1228万人で、前年比2・7%増加している。
■江ノ島駅まで続く混雑
4両編成の電車がホームに入線。降車客と乗車客が行き交う中、レトロ感あふれる車両を背景に記念撮影する訪日客も加わり、ホームは混雑状態となった。
訪日客が次々と乗り込んでいく。乗り切れないと判断した日本人客は、おおむね10~15分後に発車する次列車に乗車するため、ホーム乗車口の最前部に陣取った。
車内は肩が触れ合うほど。とりわけ鎌倉―江ノ島間は寺社・仏閣などの歴史、文化、由比ケ浜、七里ケ浜の海岸美などコンテンツが豊富で、駅ごとに異なる風景を求めて乗客が降り、乗車する。
目的に応じた楽しみを来訪者に提供してくれるのも、江ノ電人気の理由だろう。
■住民との共存が課題
観光客利用の増加によって影響を受けているのが、地域住民の移動手段としての江ノ電の位置付け。そのため、江ノ電と鎌倉市では17年からゴールデンウイーク限定で「江ノ電鎌倉駅西口改札における沿線住民等優先入場の社会実験」を実施している。
鎌倉―腰越間に在住・在勤・在学する地域住民の日常生活に影響が生じる状況を考慮して、緊急を要する場合などに、鎌倉駅構内や鎌倉市役所で発行される証明書を提示すれば、観光客より早く鎌倉駅に入場できるようにした。
鎌倉市などでは、江ノ電の混雑緩和策として、観光客に最混雑区間の鎌倉―長谷間の「歩き」を推奨する。地域に根差した鉄道路線であるためにも、地域住民と観光客が共存できる鉄道路線に向けた自治体、国を巻き込んださらなる対策が求められる。
■鉄道風景
道路併用軌道、住宅地、トンネル区間など、移り変わる鉄道の風景も江ノ電の特徴の一つ。各所で見られたカメラを構えた鉄道ファンらの姿からも人気のほどがうかがえた。
○…道路併用軌道…○
道路併用軌道は腰越―江ノ島間のほかに、鎌倉側から極楽寺―稲村ケ崎間、稲村ケ崎―七里ケ浜間、七里ケ浜―鎌倉高校前間にある。一部区間は道路にガードレールが設置されたバラスト軌道。見た目には鉄道だが、道路部を併用する軌道区間というのが法律上の位置付けだ。
○…住宅地内を走る…○
開業後の軌道敷設整備の過程で、度重なるルート変更が生じたことで住宅地を縫う曲線の多いルートになったとみられる。線路側(旧道路側)に玄関口のある住宅が多いことからもうかがえる。
生活に欠かせない小さな踏切も各所に見られる。1945年に「鉄道」に格上げされたが、沿線風景は今も変わらない。
○…唯一のトンネル…○
江ノ電唯一のトンネルは「極楽洞・千歳開道(極楽寺トンネル)」と呼ばれ、1907年に竣工(しゅんこう)した。全工程を人力で掘削した江ノ電全通への最難関工事箇所だったという。
鎌倉七切通の一つ、「極楽寺坂切通(極楽寺切通し)」を通過するもので、トンネルの長さは約200㍍。長谷方に「千歳開道」、極楽寺方に「極楽洞」と表示され、建設当時の面影を今に伝える。それまで住宅地だった沿線風景もトンネルを抜けると、日本三大深湾と呼ばれる相模湾の風景が開けた。
■多彩な車両
江ノ電では10形、20形、300形、500形、1000形、2000形を運用する。
最新車両は2006年にデビューした500形で、同社として初めてのVVVFインバーターシステムを採用した省エネルギー車両。車内に液晶ディスプレーを装備し、沿線名所の映像を放映する。
鉄道ファンに人気があるのが300形だ。 305―355号車は1960年の製造で、京王帝都電鉄(現在の京王電鉄)の初代デハ2000形(旧玉南電気鉄道1形)の台枠を流用し、車体は東横車輛工業(現在の東急テクノシステム)、台車は東急車輛製造(現在の総合車両製作所)で新造された。車内床面の板張りが特徴。
■江ノ電・嵐電姉妹提携15周年
江ノ島電鉄と京福電気鉄道は、江ノ電・嵐電姉妹提携15周年を記念して、江ノ電「江ノ電・嵐電 姉妹提携号」(1002号車)を4日から、京福「嵐電 新『江ノ電号』」(モボ611形613号車)を7日から運行している。
江ノ電では車体を嵐電カラーにラッピング、京福の車体を江ノ電カラーに塗装(一部ラッピング)した。京福では「モボ631形631号車」に次いで2編成目という。
■沿線で人気の菓子処
江ノ電沿線には甘味を楽しめるお店がいっぱい。
長谷駅近くの「力餅家」は創業300年を超す歴史・由緒ある菓子処。つきたての餅をこしあんで包んだ「権五郎力餅」が人気商品。「求肥力餅」なども販売。
江ノ島駅近くの「和菓子司 扇屋」も創業200年以上の老舗(しにせ)。江ノ電車両ときっぷをデザインしたパッケージの「江ノ電もなか」が有名。
店舗デザインの江ノ電車両のカットモデルが特徴で、観光客の多くが訪れる名店だ。
検索キーワード:JR東日本
3,626件見つかりました。
3441〜3460件を表示
-
2023.11.01 JR東日本グループ 営業・事業・車両
JR東日本クロスステーション JR赤羽駅社員発案「紅生姜と小えびむすび」販売
○…JR東日本クロスステーションフーズカンパニーはきょう1日から、「おむすび処 ほんのり屋」エキュート赤羽店で「紅生姜と小えびむすび」(200円)を期間限定で
-
2023.11.01 その他業種分類 記録・調査・統計
ウイークリー・メモ 23年10月23~29日
◇10月23日(月)=静岡県と同県沼津市が事業主体の沼津駅付近連続立体交差事業(鉄道高架事業)に伴い、JR貨物の東海道線沼津駅(同市)を郊外へ移転する事業につ
-
2023.11.01 JR東日本 営業・事業・車両
JR東北本部 「東北MONO」オリジナル商品販売
JR東日本東北本部は、東日本大震災からのさらなる復興に向けてブランド商品を展開する「東北MONO」で、同本部と水戸支社、福島県が主催する観光キャンペーン「『福
-
2023.11.01 JR東日本グループ 予定・計画・施策
JR東日本クロスステーション 「チーズとワイン」キャンペーンなど展開
JR東日本クロスステーション(JR―Cross)デベロップメントカンパニーはきょう1日から、エキュート大宮・大宮ノース、同立川で「チーズとワイン」キャンペーン
-
2023.11.01 JR東日本グループ 予定・計画・施策
ホテルメトロポリタン 「富山・長野フェア」開催
JR東日本ホテルズのホテルメトロポリタン(東京・池袋)はきょう1日から、富山、長野両県の食材や郷土料理をそろえた「富山・長野フェア」を直営レストラン3店舗で開
-
2023.11.01 JR東日本グループ 予定・計画・施策
ルミネ 「やまなしワイン×LUMINE AGRI MARCHE2023」
JR東日本グループのルミネは3日から、新宿東口駅前広場で、山梨の新酒ワインや各ワイナリーの人気ワインを取りそろえたイベント「やまなしワイン×LUMINE AG
-
-
-
-
2023.10.31 JR東日本 予定・計画・施策
JR東日本 房総方面の特急列車 全車指定席化へ
JR東日本は27日、首都圏と房総方面を結ぶ特急について、来年春から全車指定席として運転すると発表した。
-
2023.10.31 JR東日本 予定・計画・施策
JR秋田支社 24年冬の重点販売地域 秋田県を指定
24年12月~25年2月 JR東日本秋田支社は26日、秋田市の秋田県庁内で「JR東日本重点販売地域指定決定通知書手交式」を開催した。
-
2023.10.31 JR東日本グループ スポーツ
JR東日本パーソネルサービス・江島由高氏 デフサッカーW杯で準優勝 銀メダルから得た成長と自信
デフリンピックは金 大きな目標へ飛躍誓う 目標のベスト8突破をはるかに上回る準優勝達成――。