特集 JR東日本 「渋谷駅改良工事」駅の骨格フレームが完成
山手線が埼京線と同じ高さに
最後の線路切り替え
仕切り柵で運行継続 内・外回り2線同時こう上
今後、ホーム本設化やビル建設
JR東日本は11月17日終電から20日初電までの間、渋谷駅改良工事の一環として、山手線内・外回り線路の切り替え工事を実施した。18日は外回りの大崎―池袋間、19日は内回りの池袋―大崎間の全列車を運休し、線路を最大22㌢、ホームを最大20㌢こう上(かさ上げ)。2015年から進めてきた駅改良工事では最後の線路切り替えとなり、「駅としての骨格、フレームが完成した」(伊東寛建設工事部マネージャー)。これまでの工事とともに今回の工事を振り返る。(相川 夏子記者)
駅周辺は〝100年に一度の大開発〟
渋谷駅周辺地域では、災害に強く、国際的な観光文化都市の実現に向け、〝100年に一度の大開発〟ともいわれる大規模な開発事業が進んでいる。
これに合わせて鉄道各社も大掛かりな駅の整備を推進。JR東日本の渋谷駅改良工事では、駅コンコースの拡充やバリアフリー設備の整備、東京都の「渋谷駅街区土地区画整理事業」と一体での東西自由通路の整備、国土交通省関東地方整備局の国道246号拡幅に合わせた橋りょう架け替え、埼京線ホームの移設と山手線ホームの1面2線化などを計画している。
改良工事完成時には他社線との乗り換え利便性が飛躍的に向上することが期待される。1階は大崎方(幅員23㍍、延長45㍍)、新宿方(22㍍、35㍍)の2本の東西自由通路により、東京地下鉄(東京メトロ)副都心線・東急東横線、東京メトロ半蔵門線・東急田園都市線との乗り換えが、3階はコンコース再編や東京メトロ銀座線移設などの整備により、銀座線や京王電鉄井の頭線との乗り換えがスムーズになる。
18年に移設開始、今回ステップ5
同駅改良工事における線路切り替え工事を振り返ると、ステップ1で18年5月に埼京線上り線路を新設高架橋に移設。ステップ2で20年5月に埼京線下り線の高さを上げ、同線のホームを約350㍍北側に移動して山手線ホームとの並列化を実現。ステップ3で21年10月に山手線内回りの線路を東側の埼京線方に横移動して、内回りホームを拡幅した。
ステップ4は今年1月に山手線外回りの線路約580㍍を横移動し、外回りと内回りを同一ホーム化した。特に、ステップ4は宮益架道橋の桁移動を伴うなど、約53時間を要する「最も大掛かりな工事だった」(伊東マネージャー)と振り返る。
線路下の通路の高さ50㌢拡大
ステップ5となる今回の工事は、山手線の線路を最大22㌢、ホームを最大20㌢上げ、埼京線と同じ高さにそろえるもので、これにより、改良工事着手前は最低2・1㍍だった線路・ホーム下の通路の高さを2・6㍍以上確保できるようになる。
さらに、新宿方のホームを約26㍍延長し、19日から各線で順次、停止位置を変更した。大崎方ホーム約25㍍は、国道南口駅舎の整備と合わせて今後通路化される予定。
工事は、内・外回りの工事桁各27連とバラスト軌道区間をこう上。並行して、ホームでは仮設の合板をいったん剝がし、かさ上げ用の木材を間に設置して高さを調整、合板を戻してこう上を完了した。
ステップ4までは1線ずつ横移動やこう上の線路切り替え工事を行ったが、今回は山手線内・外回り2線同時のこう上を実施。ホーム中ほどに高さ約2㍍ほどの仕切り柵を設けることで運行を継続し、利用者への影響を軽減した。18日に外回り線、19日に内回り線を運休して1日ずつ施工した。
18日の外回りは池袋―東京―大崎間の日中時間帯の本数を大幅に減らし、大崎で東京方面に折り返し運転。19日は内回りの大崎―東京―池袋間を約10分間隔、外回りの大崎―渋谷―池袋間を約5分間隔とし、利用者の足を確保した。
約52時間に及ぶ工事は、延べ約4600人のJR社員・作業員が従事。バラスト運搬・散布用の保守用車1編成や、軌陸ダンプや架線作業車など軌陸車約17台が投入された。
伊東マネージャーは「定められた時間で効率的に作業ができるよう、軌道・土木・電気の関係者が事前に綿密に計画を立てた。これまでは一部狭くご不便をおかけしたが、新しい渋谷駅は広くてお客さまにとって使いやすい駅になるよう工事を進めていきたい」と述べた。
ステップ5までの工事により、駅としての骨格やフレームが完成し、今後は〝肉付け〟に移る。ホーム上では仮設ホームの本設化と昇降設備、ホームドアの整備を実施。さらに、東西自由通路の整備や国道南口駅舎の建設のほか、共同開発ビル(渋谷スクランブルスクエア)中央棟、西棟の建設が予定されている。一連の駅改良工事は27年度中の完成を目指す。
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