交通新聞社 電子版

連載 JR東海 踏み出す一歩 ―グループ事業の挑戦と実践― ㊦

2024.08.30
市中用地を取得して開発するホテル「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」の全景イメージ(JR東海提供)

 ホテル 不動産 京都、奈良で開発

 京都旅「拠点」26年度開業

 奈良キャンペーン生かし進出

 市中の用地を取得する不動産開発とホテル開業計画が、京都市と奈良市で進んでいる。いずれもジェイアール東海不動産が土地を取得し、ジェイアール東海ホテルズがホテルを運営する。JR東海グループのホテルとしては、関西地区初出店となる。

 JR東海の丹羽俊介社長は「従来は、所有する鉄道資産を活用した関連事業の展開が主だったが、コロナ禍を経て『もう一歩踏み出そう』と挑戦している。京都と奈良のホテルはその象徴的なものであり、地域の皆さまと連携しながら、その地域の良いところを存分に生かして付加価値の高い事業をやっていくという、これからの目指す方向性に合致している」と意義を強調する。

 東海道新幹線京都駅の南側で2026年度の開業を目指すのは、その名も「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」。米国ホテルチェーンのマリオットのブランドを掲げ、「京都旅の『拠点』となるホテル」をコンセプトとする。同駅付近の土地約3000平方㍍に、地上9階・地下1階の建物を設ける。客室数は270室。

 奈良は、米国ホテルグループのハイアットと提携したラグジュアリーホテルを建設する。「奈良県中小企業会館等宿泊事業者選定事業」の優先交渉権者に選定されたもので、敷地面積は約3300平方㍍。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から徒歩1分の立地でアクセスが良く、国内外の富裕層を主なターゲットに、周遊観光の拠点にしたい考え。JR東海は、沿線エリア外で初めてのホテル進出となるが、約30年にわたって奈良の観光キャンペーンを展開しており、構築してきた地域との関係性を生かす。

 ジェイアール東海ホテルズは、23年度の営業利益が5年前の2倍に迫る24億3700万円となり、最高益を更新した。各ホテルの客室稼働率を見ると、足元ではインバウンド比率が大幅に伸びている。名古屋駅直結の名古屋マリオットアソシアホテルでは昨年9月、スイートルームを全面改装、増設し18室とした。国内外の富裕層や記念日の需要に応える。

 社会変容をもたらしたコロナ禍。そこから再出発したグループ事業が進む道は、単なる従来の延長線上ではない。柔軟な発想で挑戦を形にしながら未来へと続く。(終わり)

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