交通新聞社 電子版

特集 JR北海道 「新中期経営計画」始動 「3つの戦略」継続推進

2024.04.15
輸送サービスの変革へ、空港アクセスで増備する733系電車

 31年度の経営自立へ第2段階

 JR北海道は、3カ年の新中期経営計画「JR北海道グループ中期経営計画2026」を今月開始した。計画の位置付けは、31年度経営自立を目指す「JR北海道グループ長期経営ビジョン未来2031」達成に向けた第2段階。急回復する観光流動など環境の変化も踏まえつつ「3つの戦略」を引き続き進める。計画の要点をまとめた。(三浦 瑞基記者)

 

 収支目標は、26年度で連結は売上高1555億円(23年度計画1365億円)、経常損失143億円(217億円の赤字)、単体は売上高911億円(794億円)、経常損失177億円(239億円の赤字)。単体黒字化を中計の一目標とし、国の支援も踏まえ、26年度最終損益は単体で黒字4億円(82億円の赤字)を掲げた。連結は黒字15億円(84億円の赤字)。

 

 ■開発・関連事業の拡大による事業構造の変革 

 不動産事業拡大、新たな宿泊施設

 札幌駅前再開発

 戦略別の具体的な取り組みは、「開発・関連事業の拡大による事業構造の変革」では、札幌駅前再開発など不動産事業の拡大に引き続き取り組む。新たなところでは、千歳線新札幌駅の高架下商業施設の刷新に向けた検討を推進。地元・江別市との協定に絡む函館線野幌駅付近鉄道林跡地の宅地開発に着手する。私募リート設立を視野に入れた私募不動産ファンド組成や体制強化にも取り組む。

北見に「JRイン」

 ホテル事業は、宿泊特化型ホテル「JRイン」の7棟目を北見に計画。JRタワーホテル日航札幌の客室刷新、コンテナ型無人宿泊施設「JRモバイルイン」の出店を加速して年1カ所の出店を目指す。倶知安など国際観光地へ新ブランドホテルの開発も検討する。物販・飲食事業は「北海道四季マルシェ」の出店拡大はじめ、駅周辺へスーパーマーケット新業態の出店も検討する。

 新たな事業領域への挑戦では、駅や駅ビルのネットワーク設備を整備して貸与するインフラシェアリング事業、メタバース仮想空間での物販・広告事業の検討を進める。

 

 ■輸送サービスの変革

 空港アクセス強化、「訪日客」も重要

 733系電車増備

 「輸送サービスの変革」は、空港アクセス強化へ老朽置き換えによる733系電車増備を進める。特急の全車指定席化も拡大。訪日客取り込みは重要テーマに据え、昨年道内で国際商談会のあったアドベンチャートラベルの愛好家など富裕層の多い欧米豪市場の開拓に挑み、少人数貸切車両など高付加価値商品の提供を検討する。東南アジア新興市場もターゲットに置く。

 新たな車両の製作など観光列車の取り組みは継続して推進。北海道新幹線では修学旅行セールスを強化し、コロナ禍の影響で生まれた特需の継続した獲得を狙う。

 収入強化策は、イールドマネジメントシステムの活用で利用促進を後押し。鉄道ファンを狙った集客企画も打つ。25年4月に全体改定率約8%の運賃改定を検討し、増収分は輸送サービス維持・向上、物価高騰への対応、人材確保に充てる。

 

 ■鉄道オペレーションの変革

 省力化、効率的で働きやすい環境 

 ワンマン化検討

 「鉄道オペレーションの変革」は、「はこだてライナー」のワンマン化検討、車両ラジエーター洗浄ロボット導入など、省力化を加速。効率的で働きやすい環境を整える。工務部門ではホーム測定業務の機械化・自動化の検討やロングレール化を進め、電気部門では自社電気検測車を導入する。

 コスト削減も

 コスト削減につなげる変革も進め、駅業務では省メンテナンス化につながるIC専用自動改札機を導入拡大。車両検査周期の統一・延伸、設備スリム化にも取り組む。

 立案の電子決済の導入など業務のデジタル化も図り、変化を続けるICT(情報通信技術)環境への対応へ専門人材の育成も行う。

 

 ■その他

 新たな経営課題 「人材の確保」にも注力

 3戦略のほか、新たな経営課題「人材の確保」にも注力する。資格に応じた処遇の見直し、賃金面からの労働条件改善、系統間異動の実施、自己都合退職者再雇用、採用に関する広報強化などを通して退職者抑制や社会人・新卒採用の拡大につなげる。ダイバーシティ推進では車両検修など新たな職種へ女性活躍の場を拡大。働き方改革へ計画部門の一部からリモートワークを開始するなど多様な働き方を推進する。寮・社宅の建て替えといった福利厚生面からのアプローチも行う。

 中計では「黄線区」の取り組みの方向性や脱炭素社会実現に向けたアプロ―チなども示した。CS推進では、ポリカーボネート車両窓の透明度回復、車両への充電設備設置などのサービスアップを進める。新中計以降の事業構想も盛り込んだ。

 グループ各社の主な取り組みは次の通り。

 設備状態監視システム導入(ドウデン)▽アンダーカッター方式道床交換機本稼働(北海道軌道施設工業)▽鉄道事業以外の受託業務拡大(北海道ジェイ・アール・サービスネット)▽遠隔施工管理システムの検討(ジェイアール北海道エンジニアリング)▽車両窓洗浄用水の生成装置導入による手直し洗浄廃止(北海道ジェイ・アール運輸サポート)▽台車部品自動削正装置の導入(札幌交通機械)▽バス運賃施策などによる収益拡大(ジェイ・アール北海道バス)▽デジタルサイネージ設置拡大(JR北海道ソリューションズ)

 札幌駅エキナカ開発計画の推進(JR北海道フレッシュキヨスク)▽可動式コンテナを用いた新事業展開(北海道ジェイ・アール都市開発)▽旧パセオ区画復旧に向けた計画具体化(札幌駅総合開発)▽JRタワーホテル日航札幌の宴会場改装(JR北海道ホテルズ)▽グループ外向け投資による収益確保(北海道ジェイ・アール商事)▽廃ペットボトル高品質リサイクルシステムを活用した営業展開(北海道クリーン・システム)▽デジタル化を促進する新サービスの展開(北海道ジェイ・アール・システム開発)▽新幹線札幌駅工事などの推進(札建工業)

 

 ■「安全計画2026」も盛り込む 

 強固な「安全」確立へ

 教育・訓練、システム化も

 新中計には3カ年の新中期安全計画「安全計画2026」も盛り込んだ。前中期安全計画を基本に考え方などは継続。「重大事故・労働災害防止のさらなる深度化」「環境変化への柔軟な対応」「安全に対するさまざまな意見の反映」を進める。

 主な新たな取り組みは、石勝線列車脱線火災事故など一連の事故・事象の教訓や知見を語る「安全の語り部」の実施、安全研修「第3期」完遂と「第4期」の計画、地震や津波に備えた再教育などを通して安全意識を高める社員育成を推進。安全レベル向上には、運転士と車掌が合同で行う「新幹線乗務員訓練科」新設など訓練の充実、品質向上に向けたタブレット端末による検修調書の電子化、安全ルールの棚卸しに着手。一層の安全確保へシステム化、機械化も進める。

 国の支援も活用する3カ年の中期設備投資・修繕計画(安全)は、設備投資が675億円(21~23年度見込み比64億円減)で、キハ40形のH100形電気式気動車置き換えがほぼ完了したことで減少。修繕費は1140億円(70億円増)。

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