交通ニュース・アイ 鉄道各社が流通サービス業の知恵競う ビジネスフェアに見たSC業界NOW
今回は本コラム初めて、流通・商業系の話題を取り上げます。日本ショッピングセンター協会(SC協)が主催し、国土交通、経済産業、農林水産の3省などが後援する48回目の「日本ショッピングセンター全国大会」が1月24~26日に横浜市のパシフィコ横浜で開かれ、約3万9250人が来場しました。
大会の柱は「SCビジネスフェア2024」。SC分野の展示商談会で、デベロッパー(商業施設)は、参加41者のうち17者を鉄道系企業が占めました。ポストコロナで日常が戻る中で課題も見えてきた、フェアをリポートします。
JR四国が初出展
駅ビル、高架下 テナント、熱い視線
1973年4月設立のSC協は昨年、50周年を迎えました。71年に発足した前身の「ショッピングセンター研究会」を母体に、デベロッパーの業界団体として活動。鉄道事業者は戦後6年目の50年に開業した日本初の民衆駅・豊橋駅ビルをはじめ、半世紀以上にわたり、ショッピングセンターの成長を主導してきました。
高松駅に3月新駅ビル誕生
今回、フェアに初出展したのがJR四国グループです。昨年の前回、担当社員がパシフィコを訪れて会場の盛況ぶりを確認。満を持してブースを構えました。
交通新聞元旦号(1月1日付)でも報じられた通り、今年のJR四国は駅ビルの話題満載。3月22日は高松駅ビル「TAKAMATSU ORNE」(タカマツ オルネ)が開業します。
JR松山駅にも注目が集まりました。今秋をめどに予讃線の高架化が完成、その後もさらなる開発が予定されているのが理由です。
高輪ゲートウェイの大型模型
JRグループからはほかに、JR東日本、JR東海、JR西日本の3社が参加しました。
JR東日本は、「TAKANAWA GATEWAY CITY」の大型模型を展示して、来場者の目を奪いました。JR東日本ブース近隣には、品川開発プロジェクトに参加するグループ会社・ルミネが出展。鉄道事業、マーケティング(開発)部門の相乗効果を狙います。
視野広げて魅力あるテナント迎える
出展者には首都圏以外の鉄道系企業も目立ちます。JR東海やJR西日本に加え、大阪地下街(大阪市高速電気軌道〈大阪メトロ〉、近鉄グループホールディングスなどが出資)、京阪グループ、札幌駅総合開発(JR北海道グループ)、阪急阪神不動産/阪急阪神ビルマネジメント、名鉄グループ……。
駅ビルや商業施設は地域密着経営が基本ですが、魅力的なテナントに出店してもらうには、フェアのような場で視野を広げる必要があるといったところでしょうか。
首都圏私鉄からは、小田急SCディベロップメント、京王電鉄、京浜急行電鉄、相鉄アーバンクリエイツ&相鉄ビルマネジメント、東急グループ、東京メトロ&メトロプロパティーズ&メトロ開発、東 武グループがブースを構え、沿線の成長可能性を発信しました。
テナントを紹介するスペースがなくなりましたが、多くの出展者は「機会があれば駅ビルにも出てみたい」と話していたことをご報告します。
創業から48年、東京に本社を置く有名なクレープチェーン・マリオンは、「いろいろな人が通勤通学や観光で利用する駅は、魅力的な商業空間」と話します。
SC向けサービスでは、デジタルスタンプラリーの企 画運営など、ICT(情報通信技術)を活用したニュービジネスを数多く目にしました。
人手不足の対応/リアル店舗の強み発揮
SCの課題解決 ヒントはフェアに
フェアに初出展したJR四国グループブース。後方のパネル右側は四国4県を表します
「TAKANAWA GATEWAY CITY」の大型模型を前面に展示したJR東日本グループブース
コロナ禍が明けて平時に戻るのと同時に、浮上してきたSCの課題。「人手不足への対応」と「ネットショップに負けないリアル店舗の強み」の2題を考えます。
中休み制度と休館日増でES向上
バスやトラックの運転手、鉄道では施設の保守・整備要員――。交通や物流の世界では日々、人手不足が報じられますが、SCも実態は同じ。出店テナントは、ほぼ全ての店舗が人材不足に直面します。
SC協が、人材確保・定着のモデルとするのが「新宿ミロード」。小田急SCディベロップメントが運営する小田急新宿駅の駅ビルです。
店舗スタッフが不足すると発生するのが「ワンオペ」。「休憩やトイレに行きにくい」「両替に行きたいが、お店が空になってしまう」は最近のテナントあるあるでしょう。
そこで、ミロードが昨年10月に制度化したのが「中休み」。平日限定。物販・サービスは13~17時に最大1時間、飲食は15~17時に同じく2時間の休憩が取れます。
休館日も増やしました。大みそかは全館休館。8月は営業時間短縮日(半日営業)を設け、16~17時の閉店後には「夏祭り」を開催して、店舗スタッフの親睦を図ります。
販売員アンケートでは休館日増に97%、中休みに76%が「グッド」の高評価。流通業界の従業員ファーストは、CS(顧客満足度)に対してES(従業員満足度)と呼ばれます。「ESなしにCSなし」は、現代ショップの定説です。
リアル店舗販売員インフルエンサーに
後半はリアル店舗の強み。SCは典型的なリアルの対面販売です。ネットショッピングが普及する中では、バーチャルに対抗するのでなく、ネットの良さをリアル店舗に取り入れる創意工夫が重要なようで――。
フェアで紹介されたのが、「STAFF START(スタッフスタート)」というアプリサービス。ビジネスを考案したバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃代表取締役CEO(最高経営責任者)が、リアルとバーチャルの融合策を報告しました。
ネット世界で幅を利かす、「インフルエンサー」と呼ばれる〝情報案内人〟。スタッフスタートはリアル店舗の販売員をインフルエンサーに仕立て、ファッションの着こなしや化粧品の使用法を投稿動画で案内します。
すると動画を見たフォロワー(ファン)は、リアル店舗に来店してお勧め商品を購入するという、比較的分かりやすいビジネスモデルです。
ひと昔前、世にカリスマ美容師をはじめカリスマ〇〇と呼ばれる人が登場して、在籍店舗にお客が殺到しました。「令和のカリスマ店員」をつくるのが、スタッフスタートの究極の目標です。
昨年8月データで、登録(動画投稿)スタッフ約23万3000人。動画経由のリアル店舗の売り上げは年商ベースで1748億円と、リアルとバーチャルの融合は大きな成果を上げています。
・取材協力・日本ショッピングセンター協会
・出展者名は企業名でなくSC協の資料に基づいています
検索キーワード:近鉄
185件見つかりました。
41〜60件を表示
-
2024.06.11 民鉄・公営・三セク その他記事分類
訃報 辻井昭雄氏
辻井 昭雄氏(つじい・あきお=元近畿日本鉄道会長、社長) 4日12時23分死去。91歳。告別式は近鉄グループと近親者で執り行った。お別れの儀は行わない。
-
2024.06.07 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
東武・近鉄 看板特急の近鉄「ひのとり」、東武「スペーシアX」のコラボ商品
東武鉄道と近畿日本鉄道は9日10時から、コラボレーショングッズとして、看板特急の近鉄「ひのとり」、東武「スペーシアX」の「プレートセット」と「トレインタグセッ
-
2024.05.31 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
近鉄 旧生駒トンネル探検と日本最古の生駒ケーブル探訪ツアー開催
近畿日本鉄道は7月27日と8月31日、親子向けの夏休み特別企画として「旧生駒トンネル探検と日本最古の生駒ケーブル探訪ツアー」を実施する。
-
2024.05.28 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
三岐鉄道 「R6.-6.-6記念 三岐鉄道全駅入場券セット」発売
三岐鉄道は「R6.-6.-6記念 三岐鉄道全駅入場券セット」を6月6日から発売する。5310円、200セット。
-
2024.05.27 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
近鉄 インバウンド向けデジタルきっぷ WeChatで発売
近畿日本鉄道とリンクティビティ(東京都千代田区)は、中国国内で広く使われているメッセンジャーアプリ「WeChat」(ウィーチャット、微信)のミニプログラム「旅
-
2024.05.27 民鉄・公営・三セク スポーツ
花園近鉄ライナーズ ディビジョン2への降格
ジャパンラグビーリーグワンのディビジョン1/2入れ替え戦第2戦が各地で行われ、ディビジョン1で12位の花園近鉄ライナーズはディビジョン2の1位浦安D―Rock
-
2024.05.20 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期決算 近鉄グループホールディングス
需要回復で営業、経常増益【近鉄グループホールディングス】 2022年7月に連結子会社化した近鉄エクスプレスの業績が通期で寄与したほか、コロナ禍の収束で需要が回
-
2024.05.20 その他業種分類 記録・調査・統計
月間日誌 24年4月
【国土交通省関係】 国土交通省が2024年度の政府予算の局別・事業別の予算配分を公表(1日) 国交省が鉄道運賃水準の算定の根拠となる総括原価の算定方法を定める
-
2024.05.16 民鉄・公営・三セク 決算・財務
近鉄グループホールディングス 最終利益は減益に
近鉄グループホールディングスは15日、2024年3月期決算を発表、運輸業、流通業、ホテル・レジャー業において回復が進み、連結売上高は1兆6295億2900万円
-
2024.05.15 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
近鉄 「つどい」を活用 サイクルトレイン「KettA」運行
近畿日本鉄道は、5月18、19日と6月1、2日に近鉄名古屋―賢島間、5月25、26日と6月8、9日に大阪上本町―賢島間で、観光列車「つどい」を使ったサイクルト
-
2024.05.14 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
近鉄、新型一般車両「8A系」 24年10月から奈良線、京都線、橿原線と天理線で順次導入
近畿日本鉄道は10日、今年10月から新型一般車両「8A系」(1編成4両)を奈良線、京都線、橿原線、天理線で順次投入すると発表した。
-
2024.05.10 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
近鉄不動産 「志摩グリーンアドベンャー」7月11日オープン
ゴルフ場跡地で 近鉄不動産は7月11日、昨年3月末に営業を終了した三重県志摩市のゴルフ場「近鉄浜島カンツリークラブ」の跡地に、グランピングとアトラクションから
-
2024.05.10 民鉄・公営・三セク 人事異動・組織変更
近鉄グループホールディングス 6月に組織改正 「総合政策部」を新設
近鉄グループホールディングスは、6月開催予定の定時株主総会後に業務組織の改正を行う。
-
-
2024.05.07 民鉄・公営・三セク 施設・機器
近鉄 大和西大寺駅構内に民間の就業支援施設
近畿日本鉄道奈良線・京都線・橿 原線大和西大寺駅の中央改札口北側に4月30日、就業支援拠点「ハローワークミニ!」がオープンした。
-
2024.05.07 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
近鉄 大阪線大阪上本町―奈良線近鉄奈良間開業110周年 記念ヘッドマーク掲出など
近畿日本鉄道は、大阪線大阪上本町―奈良線近鉄奈良間の開業110周年に合わせて、記念ヘッドマークの掲出や一部駅のデジタルスタンプの期間限定デザイン変更といった取
-
2024.05.02 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
近鉄 特別イベント「みんなで集まろに!リアル桃鉄大会!~近鉄の巻~」を開催
近畿日本鉄道は6月1日、名古屋線近鉄名古屋―津間で特別イベント「みんなで集まろに!リアル桃鉄大会!~近鉄の巻~」を開催する。