JR東海 24年度重点施策と設備投資 「業務改革」「収益拡大」で経営体力再強化
連結6740億円、過去4番目
JR東海の丹羽俊介社長は3月28日の定例会見(東京)で、2024年度の重点施策と関連設備投資の概要を発表した。安全の確保を最優先に、「業務改革」と「収益の拡大」の二つを柱とした経営体力の再強化に引き続き取り組む。設備投資額は、連結で6740億円(23年度計画比580億円増)、単体で6300億円(440億円増)を計画し、いずれも過去4番目の規模。単体は中央新幹線を除くと2800億円(340億円増)で、うち安全関連投資は74%に当たる2080億円(150億円増)を割り当て、過去5番目の規模となる。
新年度に向けた考え方として、鉄道の原点であり、全ての施策の大前提となる安全の確保を最優先とした上で、生活様式や働き方でニーズが多様化していることや、労働力人口の減少に伴い業務の在り方の変革が求められていることなど、取り巻く経営環境の大きな変化を踏まえた。
重点施策は大きく8項目を据えた。鉄道の安全・安定輸送の確保には1450億円(180億円増)を投資。東海道新幹線は、脱線防止ガードの全線敷設や大規模改修工事など構造物をさらに強化する。適切な運行計画の決定、適時・的確な案内情報の提供、車内のセキュリティー対策にも取り組む。
輸送サービスの充実は760億円(10億円増)。同新幹線では、需要に合わせた弾力的な列車設定を実施。N700Sは7編成を投入し、26年度までに計59編成とする。在来線は、315系通勤電車を64両投入するとともに、新型特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進める。
安心して鉄道を利用できる設備の整備では、新幹線全駅への可動柵整備に向けた調査設計、自動運転システム(GOA2)の導入に向けた開発を進めていく。在来線では車側カメラ設置車両を用いて、旅客接近を検知する画像認識技術の活用を検討する。
超電導リニアによる中央新幹線計画の推進は3500億円(100億円増)。健全経営と安定配当を堅持して着実に進める。都市部トンネルは調査掘進を終えた後、本格的な掘進を開始。関東車両基地(仮称)の造成工事や、中部総合車両基地(仮称)の建築工事に着手する。南アルプストンネル静岡工区については、国土交通省有識者会議の水資源と環境保全に関する報告を踏まえ、地域の理解と協力が得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら真摯(しんし)に取り組む。
超電導リニアの技術開発は30億円(10億円増)。高温超電導磁石は、営業車両への投入を前提に一層のコストダウンを図る。効率的な運営体制の実現に向けては、ICT(情報通信技術)などの最新技術を活用し、AI(人工知能)による画像やビッグデータの分析システムの改良・実証を進める。
営業施策の強化は230億円(130億円増)。「EXサービス」は、昨年開始した「EX旅パック」「EX旅先予約」などの利用拡大を図るとともに、「推し旅」キャンペーンや新幹線の「貸切車両パッケージ」をはじめ、新たな施策を積極展開。東海道新幹線開業60周年ではイベントや記念商品の発売を行う。訪日外国人に対する施策も強化する。
グループ事業の推進は450億円(140億円増)、このうち連結子会社440億円(同)。グループ共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」は対象施設を拡大して利便性の向上を図る。ほかに、駅売店などの便利で魅力ある店舗づくり、名古屋、岐阜駅の商業施設の拡張・リニューアル、相模原市のイノベーション創出促進拠点の運営、沿線不動産の開発に取り組む。
技術開発の推進、高速鉄道システムの海外展開は5億円(同額)。自然災害に対して安全性を高めるための技術開発のほか、状態監視技術を活用した検査や保守の高度化・省力化、設備維持更新のコストダウンによる業務改革の推進に向け、課題解決に取り組む。海外展開は、米国での高速鉄道プロジェクトを着実に進める。
持続可能な社会の実現に向けた取り組みでは、政府の「2050年カーボンニュートラル」政策を前提に、50年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指す。燃料電池車や水素エンジン車といった水素動力車両に関する開発を推進。省エネルギー車両の投入を進めるほか、新幹線のり面での太陽光発電の施工を開始するなど、再生可能エネルギーの活用にも取り組む。
丹羽社長は、「自由に考え、大いに議論し、粘り強くやり抜く」という企業文化の醸成について、「この1年をとってもそのような雰囲気が広まってきたと思う。グループ会社を含む社員一人一人が危機感を持って変革を認識している。さまざまな新しい商品・サービスを提供し、業務改革も一歩ずつ進んでいる」と述べた。
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