絵本「僕は私は運転士！」制作を手掛けた東京地下鉄（東京メトロ）経営企画本部企業価値創造部（新規事業企画）

　西塔諒実（さいとう　りょうま）氏

　天野純一（あまの　じゅんい）氏

　東京メトロの２０２２年度オープンイノベーションプログラムで選ばれたＳＴＵＤＩＯ　ＢＵＫＩ（東京都世田谷区）と共に、子どもが作中で運転士になれる絵本を企画、４月に発売した。主人公の性別や髪型、さらに同社９路線から好きな路線を選ぶことができ、名前や写真、メッセージを作中に入れられる。

　制作に当たり、最初に契約関係を整理した。天野さんは「実務的な土台を固めないと、完成しても販売ができないので」と説明する。新規事業案件初担当の西塔さんは「ストーリーに関われればと手を挙げましたが、天野さんからは『われわれはプロの仕事を尊重して伴走するのが大事』と。実際その通りでした」と振り返る。

　こだわったのは鉄道関係の表現だ。「子どもは大人の気付かないところまで気付くので、できるだけリアルに」（天野さん）、「路線ごとに運転操作が違うので、呼称や動作、機器など細かく指摘しています」（西塔さん）。社内の制服や運転、車両関係の部署を回り、修正を重ねた。地下鉄工事で発見されたナウマンゾウの化石の話など、先方担当者と話す中で盛り込まれたエピソードもある。

　売れ行きは予想以上で、レビューやＸ（旧ツイッター）にはこだわりへの評価も。社員の家族からは「お父さんの仕事を子どもに説明できた」と感謝の声もあった。

　「ＳＴＵＤＩＯ　ＢＵＫＩは『あなたはこの世界の主人公だよ』というメッセージを絵本に込めています。絵本を通して贈る方の愛情が伝わったらうれしい」（天野さん）、「何回読んでも発見があると思うので、そのあたりも皆さまで楽しんでほしいですね」（西塔さん）。（鴻田　恭子記者）

　西塔氏略歴　２０１５年東京地下鉄入社。後楽園駅務管区、東西線乗務管区を経て昨年２月から現職兼務、７月から専任。山形県出身、３３歳。

　天野氏略歴　１１年東京地下鉄入社。飯田橋駅務管区を経て１６年４月から現職。東京都出身、４５歳。