南海トラフ地震臨時情報 「取消補償は難しい」 観光庁秡川長官 影響の検証は必要
観光庁の秡川直也長官は、8月21日の専門紙会見で、南海トラフ地震臨時情報の発表に伴う旅館・ホテルの宿泊キャンセルなどの損失に関して、「直ちに補償することは現時点では難しい」との考えを示した。一方で今後、政府で臨時情報の運用を検証する際には、観光への影響を示すデータや分析を共有する必要があると指摘した。また、来日後の外国人旅行者に対して、臨時情報に関する情報提供を充実させていく方針も示した。
宮崎県日向灘を震源とする8月8日の地震、それに続く南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の観光への影響について、秡川長官は「予約、キャンセルの状況を業界の協力で聞き取った結果、西日本の太平洋側の県などでキャンセルが多い傾向だった。キャンセルが多い一方で、それらの県でも新たな予約も入っている」と説明した。
夏休み、お盆休みという書き入れ時の宿泊キャンセル多発を受けて支援を期待する宿泊事業者も少なくない。秡川長官は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)は、位置づけとしては、自然災害の可能性が高まったことの発表。直ちにキャンセルを補償するというのは現時点の状況ではちょっと難しいと感じている」と述べた。
臨時情報は初めての発表で、制度運用に関する検証、改善の必要性も指摘されている。「内閣府の防災担当において今回の発表について、観光の現場への影響なども含めて検証すると思う。これからの話だが、その中で観光庁もデータを共有しながら、評価、分析していく必要がある」(秡川長官)。
他方で臨時情報の発表に伴うインバウンドへの影響について観光庁は、海外の旅行会社への聞き取りの結果、東アジアの国で若干のキャンセルがあったと説明した。また、来日後の外国人旅行者への影響では、主要な観光案内所や日本政府観光局(JNTO)のコールセンターに、臨時情報やそれに伴う鉄道の運休に関係する問い合わせがあったが、件数としては多くなかったとしている。
情報発信の課題では、観光庁監修の訪日外国人向け災害情報提供アプリ「Safety tips」で、南海トラフ地震臨時情報の発表について情報提供したが、見やすいところに掲載できていなかったとして運用の見直しを検討する考えを示した。
【記事提供・観光経済新聞kankokeizai.com】
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