交通新聞社 電子版

墨滴 11月16日付

2023.11.16

 関西民鉄各社でオープンループ型の鉄道乗車システムの導入が進んでいる。先日発表された近畿日本鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道、神戸電鉄などの2024年内導入で、先行する南海電気鉄道、泉北高速鉄道を加えて関西圏の民鉄の大半が網羅される▼対応型クレジットカードやデビットカードなどであれば、改札機専用読み取り部にタッチするだけで鉄道乗車運賃を後払い方式で決済する。クローズドループ型、プリペイド式の交通系ICカードシステムのようにカード購入の必要がなく、チャージといった手間も省ける。ICカードを持たない人、とりわけ訪日客をターゲットとした▼昨年7月に「広がるか? 公共交通機関の『Visaのタッチ決済』」と題した特集記事の本紙掲載以降、動きが加速した。この間、利用可能なカードブランドが一気に拡大したことも各社導入を促す要因になったと推測する▼自動改札機の改修費は必要になるが、交通系ICカードシステムをゼロベースから導入するよりはコストが安いとの見方もあり、以前から地方民鉄、バス、空港での導入が進んでいた。首都圏でも大手民鉄を中心に実証実験の動きもある▼2025年の「大阪・関西万博」開催による訪日客増加をにらみ、利用者利便性の観点から決済手段の多様性は必要だが、ICカード巨大市場の首都圏でどう展開するかがさらなる普及への鍵とみる。

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