元旦号 JR北海道 今年の話題
経営自立へ基盤強化推進
「エアポート」毎時6本化
Kitacaサービス圏拡大
昨年はコロナ禍からの旅行需要回復に加え、プロ野球観客輸送という新たな好材料の後押しを受けて各種施策が奏功。運輸収入や開発事業主要指標を平年の2019年度比の9割水準まで戻した。今年は、空港アクセス機能の増強などでその勢いをさらに加速させ、北海道新幹線札幌開業を契機とした31年度経営自立に向けて経営基盤強化を推し進める。4月からは次期中期経営計画も始動する。
経常、純損益2期ぶり黒字
直近の24年3月期第2四半期連結決算は、売上高738億9600万円、営業損失174億9800万円、経常利益54億9900万円、四半期純利益117億5400万円だった。運輸業はじめ19年比を上回る月もあった小売、ホテルの増収、徹底したコスト削減による営業損失改善、円安株高や国の新支援で運用利回り5・72%(前年同期比1・13㌽増)となった経営安定基金運用益(前年同期比24・2%増)などで、経常、純損益とも2期ぶりに黒字計上した。
通期予想は、雪対策で下期に増加傾向にある営業費などを考慮して変更せず、売上高1365億円、営業損失611億円、経常損失217億円、親会社株式に帰属する当期純損失84億円。本年度が最終年の5カ年グループ中期経営計画の目標比では、策定時に見通せなかったコロナ禍の影響により経常未達を想定するが、最終損益は策定後に措置が決まった国などの新支援で82億円の改善を見込む。次期中期計画では収入挽回に注力し、長期ビジョンで掲げる31年度連結最終利益計上へ弾みをつける。
鉄道事業の注目は、3月16日ダイヤ改正で実施する、快速「エアポート」(新千歳空港―札幌・小樽間)の日中時間帯(9~16時)毎時6本化。20年ダイヤ改正で「毎時5本化」したが、これをさらに輸送強化して今後一層の利用増が見込める訪日客らの確実な取り込みを図る。6本は「快速」「特別快速」ほか、新たに設定する北広島―新千歳空港間各駅停車「区間快速」で構成。合わせて小樽方面で桑園駅の全「快速」終日停車化を行う。
特急の割引率や席数適正化
改正では、函館、釧路方面特急「北斗」「すずらん」「おおぞら」「とかち」を対象に全車指定席化も実施。同時に割安商品の体系を見直し、対象列車の「おトクなきっぷ」の駅での発売を取りやめ、「えきねっと」会員限定の割引商品「えきねっとトクだ値」(乗車券つき)、「お先にトクだ値」(乗車券つき)に集約する。割引率や提供席数をイールドマネジメントシステムを導入して適正化することで、空席率の低減につなげる。指定席提供数は旭川方面特急「カムイ」「ライラック」でも増やす。
同日からは、交通系ICカード「Kitaca(キタカ)」のサービス圏も拡大する。対象は、函館線峰延―旭川間14駅、函館―新函館北斗間6駅。キタカは昨年提供開始15周年を迎え、導入済みの札幌圏55駅では、自動改札機のICカード利用率が8割を超え、一部駅にICカード専用通路も新設するなどサービスが深く浸透。今回の計20駅のエリア拡大により、キャッシュレス化をさらに推進し、よりシームレスな交通サービスを提供する。
このほか話題としては、釧網線観光列車「くしろ湿原ノロッコ」が今年でデビュー35周年を迎える。インバウンド関連では、東南アジアの新興市場や昨年の「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット」で北海道への関心が高まる欧米豪市場に向けたプロモーションを検討し、昨年新設した「北海道レールパス」10日間用など各種訪日客向け商品の販売促進を進める。
「ジュノール」3月入居予定
開発事業は、新たな収益源として多棟化を検討し、札幌市中央区の桑園社宅跡地の一部で開発を進める、賃貸マンション「Junord(ジュノール)」2号物件の入居開始を3月に予定する。11階建ての2棟構成で全76戸。昨年11月の入居募集開始では「満室御礼」即日札止めとなる幸先良いスタートを切った。マンション開発では、「ホテルさっぽろ弥生」跡地(札幌市中央区)で分譲マンションの建築に昨年9月に着手しており、着工に向けて各種設計を進める隣接賃貸マンションと合わせて、25年度の開業に向けた取り組みを加速する。
無人宿泊施設3月に2号店
「JRイン千歳」の「キハ281トレインルーム」開設が話題を集め、旅行需要の高まりに合わせたイールドマネジメントで昨年は好調に推移したホテル事業は、非接触チェックインを特徴とするコンテナ型無人宿泊施設「JR Mobile Inn」2号店を千歳線千歳駅から徒歩約15分の社有地(北海道千歳市)で3月に開業する。客室はシングル20室で、観光客はじめ、近隣での半導体メーカーの工場建設に伴い市内で高まる宿泊需要の取り込みを図る。
小売業は、食のセレクトショップ「北海道四季マルシェ」2号店を今月末に札幌・すすきのの複合商業施設に出店。JR駅から離れたエキソトでの展開で新たな客層のニーズをつかむ。ショップ発プライベートブランド商品「DO3TABLE(ドーサンテーブル)」のラインアップも一層強化して道外マーケットへの販路拡大も検討する。
再開発組合が昨年3月に発足した札幌駅前再開発ビルは、28年度完成へ計画を鋭意推進。新幹線札幌延伸に向けた駅部工事も着実に進める。
持続可能な交通体系の構築の関連については、国の監督命令に基づく「第2期集中改革期間」が年度末で終了。根室線富良野―新得間は3月末をもって廃止し、バスを基軸とした新交通体系へ転換する。
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