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JRグループ上場4社 24年3月期第1四半期決算まとめ 鉄道運輸収入コロナ禍前の9割に

2023.08.18

 JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の上場4社の2024年3月期第1四半期決算がまとまった。新型コロナウイルスの5類移行やインバウンドの回復などに伴い、移動需要の回復傾向が鮮明に。各社とも増収で、単体の鉄道運輸収入はコロナ禍前の18年度比(JR西日本は19年暦年比)で約9割まで回復した。四半期純利益は、前年度の税制特例適用がなくなったJR西日本を除き3社が増益に。通期の業績予想は各社とも当初予想を据え置いており、引き続き堅実な事業運営で通期の目標達成を目指す。

 ■定期外が増収のけん引役 JR東日本

 JR東日本は、需要の回復により全てのセグメントが増収増益となり、連結の売上高は3期連続の増収、各利益も対前年同期比99・0%~159・7%増の大幅な増益の決算となった。

 単体の鉄道運輸収入は4014億円(前年同期比21・1%増)と、コロナ禍前の19年3月期第1四半期と比べて88%の水準に回復。旅客需要の回復で定期外の輸送が増収のけん引役となり、新幹線が1160億円(45・0%増)、在来線が1802億円(18・4%増)、合計2962億円(27・6%増)となった。前年同期比の増収額は定期・定期外の合計で700億円。このうち9割超の640億円を定期外が占める。

 コロナ禍の影響からの回復による鉄道運輸収入の前年同期比の増収額は約535億円。内訳は、定期外の新幹線が約270億円、在来線の関東圏が約200億円、その他のエリアが約20億円、定期が約45億円だった。通期では合計2090億円(コロナ禍回復分)の増収を見通す。

 同社は〝ポストコロナ〟の鉄道運輸収入の基準となる「基礎需要の定常状態」について、19年3月期比で、定期は約8割(24年4月時点)、定期外は新幹線が約9割、在来線がほぼコロナ禍前の水準(いずれも23年12月時点)、合計では約9割の見通しとしている。

 ■インバウンド、収入さらに伸長 JR東海                                                     

 JR東海は、主力である東海道新幹線の利用増加が寄与。東京口の断面輸送量はコロナ禍前の18年度比89%まで戻した。特にゴールデンウイーク期間は1日平均で18年度の水準を上回り、5月の土曜日・休日は102%に達した。

 土曜日・休日の利用が回復をけん引する一方で、平日は85%前後で推移。前期に比べれば着実に回復しつつあるものの、伸びが鈍い。同社では、車内のビジネス環境のさらなる整備やビジネスユーザーの出張利用を促す「会いにいこう」キャンペーンの展開を通じて、移動需要の喚起を進める。

 在来線を合わせた単体の運輸収入は、18年度比で91・5%。4月発表の業績予想では18年度比85%と想定していたが、実績で219億円上回った。

 インバウンドの状況については、収入(推計値)は約190億円(18年度比158%)。既に23年3月期第4四半期の段階で18年度の水準を上回っており、今第1四半期でその伸びはさらに伸長した。

 今年7月には、社内公募で意欲・能力のある社員を選抜し、インバウンド担当部署の体制を強化。国や地域ごとの旅客の動向分析を進めるとともに、効果的な宣伝・セールスや、訪日客のニーズを満たす商品展開に取り組み、需要をさらに取り込んでいく考え。

 着々と回復基調を歩む運輸業をはじめ、全てのセグメントで増収。セグメント利益は流通業、不動産業、その他の事業で、四半期決算の開示を開始した03年度以降の第1四半期決算としてそれぞれ過去最高益を記録した。

 流通業では、「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「タカシマヤ ゲートタワーモール」の合計売上高が7月まで10カ月連続で過去最高を更新中。その他の事業のホテル業では宿泊収入が増えた。インバウンドを含む観光需要と個人消費が業績を後押ししている。

 ■各事業が順調に回復 JR西日本

 JR西日本は、コロナ禍の影響低減などで、モビリティ業をはじめとする各事業が順調に回復。インバウンドによる収入は想定を上回った。四半期純利益は、前年度税制特例適用の反動により減益。

 単体の売上高は2214億円(前期比22・9%増)。鉄道運輸収入は1975億円(25・2%増)と、19年比で88・5%まで回復。山陽新幹線の利用は想定をやや上回って推移した。近畿圏(在来線)の利用はおおむね想定通りで、定期券のホルダー数としては19年比9割程度となっている。

 単体の営業費用は、業務費、動力費、人件費などが増えて1837億円(10・4%増)。業務費は収入連動経費、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連経費の増などにより464億円(14・9%増)を計上。コスト構造改革は、20年3月期比で通期310億円減の計画に対して、65億円減と計画通りに進捗(しんちょく)した。

 流通業の物販、「ヴィアイン」(ビジネスホテル)事業の収益、不動産業のホテル業の宿泊収入などは、それぞれ19年を上回る水準となった。同業の不動産賃貸・販売業は、投資家向け販売の反動減で減収減益となった。

 

 ■単体の売上高が最高 JR九州

 JR九州は、行動制限緩和や社会経済活動の正常化が一層進み、連結売上高は979億円(18年比1・0%減)まで回復。〝稼ぐ力〟は戻ってきた一方、鉄道事業における固定費削減などは実現したが、動力費や減価償却費の増加で営業費用が増え、営業利益は134億円(16・1%減)にとどまった。

 経常利益は137億円(20・7%減)。関係会社株式売却益を特別利益に計上し、四半期純利益は過去最高の177億円(32・4%増)となったが、特別利益の増を除くと103億円(22・9%減)と、いずれもコロナ禍前の水準の8割に届かない状況。

 単体の鉄道運輸収入は、昨年4月の在来線自由席特急料金値上げや同9月の西九州新幹線開業などが寄与し、前期比66億円増の342億円(7・2%減)。収入はコロナ禍前の9割を超えたが、輸送人キロは18年度比11・6%減と中長距離の利用が近距離や定期ほど戻っていないことを示している。

 鉄道運輸収入の回復に加え、分譲マンション販売収入など関連事業が好調に推移し、単体売上高は566億円(14・4%増)で過去最高となった。

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