特集 JR西日本 旅のはじまりの地和歌山へ誘客 「聖地リゾート!和歌山キャンペーン」
「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録20周年
JR西日本と日本旅行、和歌山県の3者は、7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産登録20周年を迎えたことを契機とした「聖地リゾート!和歌山キャンペーン」を展開している。9月30日まで。JR線の自由周遊区間利用と観光や体験コンテンツなどがセットになった特別商品の展開、さまざまなおもてなしを企画。旅のはじまりの地とも評される、和歌山の地へ観光誘客を図る。(福原 潤記者)
日本旅行、県と連携
3者は昨年7月、今年の「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録20周年や2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催を見据えて、継続的に観光振興に取り組んでいくことを目的に連携協定を締結。連携事項は、▽鉄道の利用に資する地域観光素材の発掘、磨き上げ▽鉄道とウオーキングやサイクリングおよび地域観光素材を組み合わせた誘客メニューの企画・造成・提案▽観光誘客につなげるための鉄道利用を踏まえた観光情報の発信――など。今夏の観光誘客をはじめ、地方創生や公共交通の利用促進を含めた観光振興に向けて、3者が連携して取り組んでいる。
鉄道 観光 体験コンテンツ
セットした特別商品造成
運行4年目を迎えたJR西日本の観光列車「WEST EXPRESS 銀河」の紀南コースでは、京都発新宮行きの夜行列車と、新宮発京都行きの昼行列車を運行する。昼行列車は、熊野古道の中辺路(なかへち)の玄関口・紀伊田辺駅で約20分間停車する。平安衣装を身にまとった上でのお出迎えや、紀州備長炭で作った楽器「炭琴」の演奏、梅酒、梅ジュースの振る舞いなどのおもてなしが特定日に実施される(おもてなしの内容は日によって異なる。詳細はJRおでかけネット内の特設ホームページ参照)。
西岡正博JR西日本マーケティング本部和歌山営業部長は「中辺路における、当社の最寄り駅は紀伊田辺駅。世界遺産の一つである熊野古道について、お客さまにより知っていただきたいと考え、田辺市さまの協力も得た上で、停車時間の拡大とおもてなしを計画した」と話す。
夜行列車のおもてなしも見逃せない。約1時間の和歌山駅への停車時間中に訪れたいのが、醤油(しょうゆ)醸造発祥の地として17年に日本遺産に認定された和歌山県湯浅町の湯浅醤油を使用した醤油ラーメンが人気のラーメン店「麺屋ひしお」(和歌山市)。同列車の乗客限定で、列車運行日は貸し切りで延長営業。地元食材の梅干しやみかん鳥などを使用した「特製冷やし和歌山ラーメン」(1100円、テイクアウト)を、同列車の乗客限定、JR西日本観光ナビ「tabiwa by WESTER」で事前予約制で販売する(利用日の3日前の18時まで)。同駅の改札口から徒歩約3分。
翌朝の新宮駅到着後は、熊野速玉大社(同県新宮市)のガイドツアーも実施している。新宮市観光協会登録ガイドが、同駅を出発して熊野速玉大社を案内。片道約1㌔の道中で、歴史や文化の手ほどきを受けられる。参加無料、予約不要。
同キャンペーン期間中は、お得に周遊できる特別商品もラインアップ。JR線の自由周遊区間利用と、南海電気鉄道の「高野山・世界遺産きっぷ」や和歌山電鐵の「貴志川線1日乗車券」などの他社線やバスの乗り放題チケット、観光施設の入場券などをセットにした「ICOCAでGO 和歌山満喫わくわくパス」を、広域型MaaS(マース)アプリ「KANSAI MaaS」で発売中だ。JR西日本和歌山エリアでは初となるデジタルパス。
発売期間は9月30日まで。指定した連続する3日間有効。大人7800円。京阪神エリアと和歌山県内のJR線自由周遊区間内で普通列車(新快速、快速含む)普通車自由席が乗り降り自由。特急などを利用する場合は別途料金が必要。
同パスは利用ごとに自動改札機、車載型IC改札機にICOCAをタッチし、ICOCAの残高から運賃を支払った上で、翌月末に全額、同社グループ共通ポイント「WESTERポイント」(チャージ専用)で還元される。ICOCA以外の交通系ICカードを登録すると、「WESTERポイント」(チャージ専用)の付与対象外となる。
同パスの利用にはKANSAI MaaSアプリで同パスを購入後、有効期間開始日までに、ICOCA番号の登録と、WESTERポイント(チャージ専用)サービスの利用登録を完了する必要がある。ICOCAは大阪近郊区間内の駅と、特急「くろしお」の停車駅相互間利用の場合を除いて、営業キロ200㌔を超えての利用はできない。
今月26~28日、熊野速玉大社では、世界遺産登録20周年の特別企画として、神門や社殿、参道などをプロジェクションマッピングやライトアップで演出。8月末までの毎週土曜日には補陀洛山寺(同県那智勝浦町)で、通常年3回のみの本尊の秘仏千手千眼観世音菩薩(ぼさつ)を特別開帳する。このほか、熊野本宮大社と熊野速玉大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺など、県内一部の社寺では特別御朱印を頒布している。岸本周平和歌山県知事は「県民一人一人に和歌山への誇りを持っていただくためのキャンペーンにしたい。熊野も高野も世界の中で見ても、素晴らしい場所であり、まさに聖地だ。その影響を先祖代々受け継いでいることを認識した上で、県内外やインバウンドの方も含めて発信し、ぜひ和歌山にお越しいただきたい」と話している。
近鉄と南海が初コラボツアーも
近畿日本鉄道と南海電鉄は8月7~8日と28~29日、「紀伊山地の霊場と参詣道を巡る宿泊ツアー」を実施する。両社が協力してツアーを実施するのは今回が初となる。
ツアーは、南海の観光列車「こうや花鉄道 天空」(極楽橋―河内長野間)と近鉄の観光特急「青の交響曲」(河内長野―吉野間)を乗り継ぐもので、普段は走行しない区間を特別に運行する。近鉄のホームページで申し込みを受け付けている。
◆紀伊山地の霊場と参詣道とは…
2004年にユネスコの世界遺産(文化遺産における遺跡および文化的景観)に登録された。霊場は、和歌山、奈良、三重県の3県にまたがる三つの霊場「熊野三山」「高野山」「吉野・大峯」を指す。熊野参詣道、大峯奥駈道、高野参詣道の3本の道が参詣道であり、これらを取り巻く「文化的景観」は世界でも類を見ない資産として価値が高い。標高1000㍍級の山々が連なり、修行、信仰の場とされてきた。日本では12番目に登録された世界遺産。日本の世界遺産では初めて道が登録された。
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