特集 〝古き良き 鉄道の旅〟へ ~埼玉・秩父鉄道を訪ねて~
製造から80年 「C58 363号機」
都心から一番近いSL
■東北エリアで活躍
埼玉県の秩父鉄道「SLパレオエクスプレス」をけん引する蒸気機関車「C58 363号機」が今年2月に製造から80周年を迎えた。〝傘寿SL〟ではJR東日本「D51 498号機」、JR西日本「C57 1号機」などが有名だが、秩父のC58も負けず劣らず、土休日を中心に旅客輸送の任に当たり、観光客に〝古き良き鉄道の旅〟を提供している。秩父鉄道では「都心から一番近い蒸気機関車」としてアピールする。
愛称は「シゴハチ サンロクサン」で、C58シリーズとして363番目に製造された。秩父鉄道によると、C58は1938年から47年にかけて427両が製造されたそうだ。
363号機は44年2月に新製された後、旧国鉄の山田線盛岡―釜石間、仙山線仙台―山形間、石巻線小牛田―女川間、陸羽東線小牛田―新庄間、磐越西線郡山―新潟間、陸羽西線新庄―酒田間で活躍。72年10月の引退後は埼玉県の吹上町立吹上小学校(現・鴻巣市立吹上小学校)の校庭で静態保存された。走行キロは105万4826㌔におよんだ。
転機が訪れたのは、88年3月19日から5月29日まで埼玉県熊谷市内で開催された「さいたま博覧会」だった。
地元からの要請を受けたもので、博覧会の話題づくりと観客輸送を担うため87年に車籍を復活、88年3月に熊谷―三峰口間(56・8㌔)の「SLパレオエクスプレス」として運行を開始した。同年12月にはJR東日本のD51498号機が運転を再開しており、その後の東日本エリアにおけるSLブームの火付け役ともなった。
列車名となった「パレオ」は、2000万年ほど前の秩父地方に生息していたとされる海獣「パレオパラドキシア」から。秩父鉄道ではオリジナルキャラクター「パレオくん&パレナちゃん」を製作し、記念グッズとして販売する。
■往復運行3000回超
運転日は3~11月の土曜日・休日中心で、「SLパレオエクスプレス」35周年の2023年8月には熊谷―三峰口間の往復運行回数が3000回に達した。累計乗車人員は約187万人(23年7月末現在)。
復活当時から1999年まで旧型客車をけん引していたが、2000年から12系客車(4両)に変更、同区間を片道約2時間40分で結ぶ。熊谷発10時15分、三峰口発14時5分。
車内放送では、秩父市出身の人気落語家・林家たい平さんが沿線の見どころを軽妙な語り口で紹介する。
今年4月にはJR東日本高崎支社の協力を得て旧型客車での運行を25年ぶりに復活させ、鉄道ファンから熱い視線を浴びた。
■多彩な装飾で魅力付け
秩父鉄道では、鉄道開業、SL製造周年、平成から令和への改元時などに、特製ヘッドマークや黒、赤、青、緑、紫色のナンバープレート、門鉄デフ、後藤デフといった除煙板(デフレクター)を装着して、〝撮り鉄〟向けサービスを提供する。
24年の運転初日には「SLファーストラン号」と銘打って日章旗を掲揚。地域イベント、各種キャンペーンなどに合わせた特製ヘッドマークも製作する。
■スタンプラリー
C58363号機の製造80周年を記念した「SLスタンプラリー」を開催している。11月17日まで。
熊谷、ふかや花園、寄居、長瀞、秩父、御花畑、三峰口の各駅とSL車内、指定イベント会場にスタンプを設置し、スタンプを三つ集めると全員に「SLオリジナルステッカー3枚セット」を進呈。全スタンプで「SLオリジナル折り畳み傘(晴雨兼用)」(抽選で58人)、W賞としてコンプリート応募者全員に「SL前面展望動画」視聴権をプレゼントする。
また、秩父鉄道とJR東日本高崎支社による埼玉県深谷市出身の実業家・渋沢栄一の肖像画があしらわれた新1万円札の発行を記念した「渋い鉄道スタンプラリー」も8月31日まで開催中。
■絶景! 長瀞の岩畳
隆起した結晶片岩が畳を敷き詰めたかのように広がる〝地球の神秘〟を感じる絶景ポイント。荒川上流部分にあたり、親鼻橋から高砂橋までの両岸が国指定の名勝・天然記念物に指定されている。秩父鉄道直営の川下り「長瀞ラインくだり」は観光客に人気だ。
渋沢栄一は「長瀞は天下の勝地・寳登山(ほどさん)は千古の霊場」とたたえたという。長瀞駅下車。
■あやかりたい…パワースポット
❖寳登山神社
火災除・盗難除・諸難除の守護神。江戸時代末期から明治初頭に造り替えられた本殿、幣殿、拝殿から成る権現(ごんげん)造りの社殿が特徴。欄間には「二十四孝」をはじめとする多くの彫刻が刻まれている。長瀞駅下車。
❖秩父神社
現在の社殿は1592年に徳川家康が寄進したもので、江戸時代初期の建築様式を今に伝える。埼玉県の有形文化財に指定。京都の祇園祭、飛騨の高山祭と共に「日本三大曳山祭(ひきやままつり)」として知られる「秩父夜祭」は毎年12月2、3日に行われ、多くの人でにぎわう。秩父駅下車。
❖三峯神社
秩父多摩甲斐国立公園内の標高約1100㍍の山中にあり、霊験あらたか。三峰山大縁起によると、日本武尊(やまとたけるのみこと)が伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉册尊(いざなみのみこと)を祀(まつ)ったのが始まりという。三峰口駅下車。
■特徴ある 沿線各駅
・波久礼
秩父鉄道の創設に尽力した渋沢栄一が支援した駅。周辺の地形が崩れやすく、岩盤が荒川直下の断崖絶壁だったことによる「破崩」(はぐれ)が駅名の由来とか。木造平屋建てのレトロ感ある駅舎、待合室は撮影スポットになっている。
・長瀞
駅正面から延びる参道を進むと、寳登山神社がある。駅前には送迎バス、タクシーの停車場を整備。近くの広場では花見シーズンともなれば歌謡ショーなどのにぎわいイベントが開催される。観光案内所も隣接し、訪日外国人の姿も目立つ。
・和銅黒谷
付近で日本最古の貨幣といわれる「和同開珎(わどうかいちん)」の原料銅が発掘。朝廷に献上された「和銅奉献」から1300年を記念して2008年に駅名を「黒谷」から改称した。ホームには和同開珎のモニュメント、駅近くには「銭神様」と呼ばれる「聖(ひじり)神社」がある。
・秩父
秩父観光の玄関口で、駅・駅ビル機能が一体化した沿線随一の大駅。1階には秩父市地場産業センターが運営し、秩父の地域文化を発信するアンテナショップ「じばさん商店」、2階に「秩父 茶房レストラン 春夏秋冬」などが入る。
・御花畑
西武鉄道西武秩父駅との乗り換え駅。駅構内には直通運転用ルートが構成されており、西武秩父駅からの列車が臨時ホームに入線し、折り返す形で三峰口駅方面に向かう。駅舎は今年、大正ロマン風デザインにリニューアルされた。
・三峰口
下りSLパレオエクスプレスの終着駅で「関東の駅百選」に選定。木造駅舎は、1930年開業当時の面影を残す。駅構内にはC58 363号機の方向転換を行う転車台設備があり、運行日は「SL転車台公園」から見学できる。
検索キーワード:JR西日本
1,519件見つかりました。
981〜1000件を表示
-
2024.02.29 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 出雲市駅に「みどりの券売機プラス+AI」
JR西日本は3月1日、山陰線出雲市駅の「みどりの券売機プラス」にAIによる自動応対機能を搭載した「みどりの券売機プラス+AI」を設置する。
-
-
2024.02.29 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 紀勢線 ロケット打ち上げで臨時列車
JR西日本は3月9日、和歌山県串本町で小型ロケット「カイロス」の打ち上げに合わせて、きのくに線(紀勢線)で臨時列車を運転する。
-
2024.02.29 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 小松市の地域活性化で協定
JR西日本は、石川県小松市、NOTE、JR西日本イノベーションズ、ジェイアール西日本コンサルタンツとの間で、2月28日付で「小松市の地域活性化に向けた持続可能
-
2024.02.29 JR西日本グループ 予定・計画・施策
JR西日本グループ 北陸エリアでポイント還元キャンペーン
JR西日本と駅ナカ販売事業などに取り組むグループ6社は3月1日から、「抽選でポイント バック!北陸駅ナカキャンペーン」を展開する。
-
2024.02.29 JR西日本グループ 予定・計画・施策
JR西日本など 「まなぶんか in 京都駅ビル」を開催
JR西日本、京都駅ビル開発、ジェイアール西日本ホテル開発の3社は3月24日、ホテルグランヴィア京都で京都の伝統工芸が体験できるワークショップイベント「まなぶん
-
2024.02.28 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
いすみ鉄道 キハ28―2346号車塗装修繕でクラファン
千葉県の第三セクター鉄道・いすみ鉄道が国吉駅構内で静態保存するキハ28―2346号車の塗装修繕費用を募るクラウドファンディングがスタートした。
-
2024.02.28 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本など関西19社局 マナーポスターを製作
JR西日本など関西の鉄道事業者19社局は、共同マナーキャンペーンとして「乗降時のマナー(出入口ふさぎ)」をテーマとしたポスターを製作し、3月1~31日をコア期
-
2024.02.28 JR西日本グループ 営業・事業・車両
ジェイアール西日本商事 北陸線グッズ発売
ジェイアール西日本商事は、北陸線で運行した車両をデザインしたアクリルキーホルダーやステッカー、クリアファイルなどを、ジェイアールサービスネット金沢が運営する北
-
2024.02.28 JR西日本グループ 営業・事業・車両
ジェイアール西日本商事 延伸開業記念 北陸新幹線グッズ発売
ジェイアール西日本商事は3月1日から、北陸新幹線金沢―敦賀間開業を記念した「北陸新幹線 W7 系 金沢-敦賀間開業記念 アクリルスタンド」「北陸新幹線 W7
-
2024.02.27 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
国交省 「今後の都市鉄道整備の促進策のあり方に関する検討会」の初会合
国土交通省は15日、「今後の都市鉄道整備の促進策のあり方に関する検討会」(座長・山内弘隆武蔵野大学経営学部特任教授)を立ち上げ、省内で第1回会合を開催した。
-
2024.02.27 JR西日本 予定・計画・施策
京都鉄道博物館 「もうひとつの京都」ラッピングトレインとバスの特別展示
京都市の京都鉄道博物館で22~26日、「もうひとつの京都」ラッピングトレインとバスの特別展示が行われた。
-
2024.02.27 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 「JR三ノ宮駅新駅ビル」 4月から建設工事に着手
JR西日本は、神戸市中央区の「JR三ノ宮駅新駅ビル」(仮称)の建設工事に4月から着手する。
-
2024.02.27 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 「ICOCA Web定期券サービス」導入へ
JR西日本とJR西日本テクシアは、ICカード乗車券「ICOCA」の利用可能エリアを拡大するため、バス・地域鉄道向けの新しいサービスを開発した。