特集 JR西日本 新観光列車「はなあかり」 北陸DCに合わせ10月5日デビュー
地域の華を集め利用者と縁結ぶ
JR西日本は10月5日から、敦賀―城崎温泉間で新観光列車「はなあかり」(キハ189系、3両編成)の営業運転を開始する。JRグループ旅客6社などが10~12月に開催する大型観光キャンペーン「北陸デスティネーションキャンペーン」(北陸DC)に合わせたもので、小浜線、舞鶴線、京都丹後鉄道宮舞線・宮豊線、山陰線を経由し、約5時間かけて同区間を結ぶ。運転期間は12月22日までの土・日曜日。来年1月以降は西日本エリアで区間を変えて運行する予定。「はなあかり」の概要を紹介する。(福原 潤記者)
敦賀―城崎温泉間を5時間かけ運転
車内は草花モチーフに和の色彩 優雅な旅を演出
■「地域を明るく」の思い込めて
「はなあかり」は、2010年に登場したキハ189系を改造した全車グリーン車の列車。定員54人。中でも1号車は、グリーン車よりもさらにグレードの高い「スーペリアグリーン車」とし、2人用の個室10室を設けた。
コンセプトは「地域の華(はな)を列車に集めて、お客様と地域の縁を結ぶ列車」。外観は、袴(はかま)などの紋付き染めで最高級とされる「檳榔子染(びんろうじぞめ)」の色をベースとした車体に、金色のツタのデザインをあしらった。車内インテリアには日本の四季を彩る草花をモチーフとした華やかな和の色彩を用いており、優雅な旅を楽しんでもらえる空間を演出している。
列車名の「はなあかり」は、地域に光が当たり、地域が華やぐイメージや、さまざまな地域のとっておきに「あかりを灯す」列車、地域を明るくする列車であるとの思いを込めて名付けられた。ロゴマークは、柔らかなタッチで列車の優雅さ、地域とのつながりを表している。
車両のデザイン監修を担当したイチバンセン代表取締役・デザイナーの川西康之氏は「お客さまの時間をデザインすることが一番大事なことだと思っています。車内インテリアだけでなく、地域の皆さまにお迎えいただくために、外装はより華やかに見えることや、(沿道やホームなどでの)笑顔が引き立つようデザインしました。お客さまと地域の皆さまで一期一会の対話をお楽しみいただければ」と話す。
■地元ならではの食
車内では、食のサービスとして地元ならではの食材を使用した弁当とスイーツのセットを、同社観光ナビ「tabiwa by WESTER」の事前予約限定で用意する。下り列車は、伝統製法を約300年間守り続ける米酢専門店「とば屋酢店」(福井県小浜市)と宮津「ハマカゼプロジェクト」が提供する「若狭 町家弁当&スイーツセット(お茶付)」(3500円)。上り列車は、仕出し料理専門店「まつなみ」(京都府宮津市)と小浜観光局が提供する「丹後晩秋弁当&スイーツセット(お茶付)」(3900円)で、天橋立の成り立ちの神話が由来の笹寿司(ささずし)をはじめ、鯛や白バイ貝など丹後の名産をふんだんに使用している。
購入は乗車日1カ月前の10時から4日前まで可能。小浜―天橋立間での提供となるため、同区間を通して乗車する利用者のみ購入できる。
ダイヤは、下り(土曜日)が敦賀発10時40分、小浜着11時44分、天橋立着14時2分、城崎温泉着15時39分。上り(日曜日)が 城崎温泉発9時54分、天橋立着11時20分、小浜着13時30分、敦賀着15時7分。
斉藤健志同社マーケティング本部鉄道マーケティング部課長は「北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業、北陸DCの開催と北陸に注目が集まっている。このタイミングで、城崎温泉まではなあかりを運行することで、兵庫県北部や京都府北部まで北陸から周遊する、新たな観光需要を生み出すことを期待している」と話す。
■西日本の逸品 随所に
平安時代から神具、仏具をはじめ、位が高い人々の装飾品として発展した京組み紐(ひも)を、はなあかり専用のカーテン留めのタッセルとして加工した「京組紐タッセル」や京の職人が丁寧に縫い上げた京織物「京織物おじゃみ座布団」などの調度品が車内を彩っている。
1号車がスーペリアグリーン車指定席で、2人用個室10室の定員20人。2号車はグリーン車で3、4人掛けボックスシート1組、1、2人掛けボックスシート1組、1人用シート10席の定員16人、3号車も同じくグリーン車で3、4人掛けボックスシート1組、1、2人掛けボックスシート3組、1人用シート8席の定員18人。2号車には、全ての乗客が利用可能なフリースペースのサロンを設け、特産品の販売やイベントなどに使用する。
スーペリアグリーン車のシートは本革を採用。高いプライベート感とともに、さまざまな姿勢でゆったりと思い思いのひとときを過ごすことができる。車内各所には、天平時代から続く出雲の鉄文明・たたら製鉄を活用した「出雲たたら製鉄一輪挿し」、越前和紙を用いたフラワーアート、丹後織物を活用した丹後テキスタイルアートなど、随所に「とっておき」の逸品がちりばめられている。
2、3号車は座席が360度回転する仕様の1+1列の座席と、ゆったりくつろげる広いボックス席を配置している。
サロンをはじめ、同列車内では、西日本各地の中山間地域の生活、文化を支えてきた木材を、フットレストや座席、テーブルに使用。難燃処理と強度を高める加工を施した、福井県産などのヒノキや鳥取県産などのスギが用いられており、ふわりと醸し出す木の香りとぬくもりを感じられる。
■沿線自治体とともに
はなあかりの運行をきっかけとした、沿線自治体による取り組みも行われる。はなあかりに乗って、敦賀、若狭地域で宿泊すると、同地域限定で使用可能な福井県のデジタル地域通貨「ふくいはぴコイン」3000円分をゲットできるキャンペーン「観光列車に乗って敦賀・若狭に泊まろう!『はなあかり』宿泊キャンペーン」を10月4日から開催する。12月23日まで。
おおい町観光協会(福井県おおい町)は、はなあかりの乗客限定で「おおい町若狭本郷駅来訪記念証(記念台紙付き)」を、小浜線若狭本郷駅隣接の「情報交差点ぽーたる」でもれなくプレゼントする。同協会の担当者は「おおいの名を冠していませんが、若狭本郷駅はおおい町唯一の鉄道駅です。ぜひお立ち寄りいただき、観光もお楽しみいただければ」と呼び掛けている。
写真説明
「はなあかり」の外観
㊤ゆったりとしたスーペリアグリーン車の車内㊨西日本の調度品が車内を彩る
◀下り列車で提供する「若狭 町家弁当&スイーツセット」のイメージ
▲上り列車で提供する「丹後晩秋弁当&スイーツセット」のイメージ(スイーツを除く)
プライベート感を存分に楽しめるスーペリアグリーン車
交流をはぐくむサロン
グリーン車も広々としたゆったりな空間
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