特集 「ザ・ロイヤルエクスプレス」 四国で初運転
瀬戸内を心ゆくまで 東急・JR四国 両社の意思が合致して実現
東急とJR四国は1月26日から、東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤルエクスプレス)を使用した「THE ROYAL EXPRESS~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」(ザ・ロイヤルエクスプレス 四国・瀬戸内クルーズトレイン)を運転している。両社とJR貨物、JR西日本の協力で実現したプロジェクトで、通常は伊豆エリアを走るロイヤルEXPの四国での運転は初。3月1日出発分までの全6回、瀬戸内の風景や食を心ゆくまで堪能できる3泊4日の旅が提供されている。(鈴木 宏治記者)
JR貨物、JR西日本など協力
ロイヤルEXPは、東急グループの伊豆急行の2100系電車「アルファ・リゾート21」(8両編成)を改造して2017年7月に登場。車両の内外装デザインはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治ドーンデザイン研究所主宰が手掛けたもので、ゴージャスな旅が楽しめる。
通常はJR横浜―伊豆急下田間を走行しているが、20年からは毎年夏、北海道の観光振興や地域活性化を目的に、JR北海道管内で運転している。実施に当たっては、東急、JR北海道とJR東日本(電源車・マニ50の提供)、JR貨物(車両回送)の4社連携プロジェクトを立ち上げた。
四国での運転は、四国・瀬戸内エリアの観光振興・地域活性化が目的。全国各地の活性化を図りたい東急と、「長期経営ビジョン2030」に「Good Challenge」(グッドチャレンジ)を掲げるJR四国における〝新しいことへの挑戦〟の意思が合致した。また、伊豆や北海道でのツアーに参加したリピーターから、四国での運転の要望も寄せられていた。
実現に向けては、両社とJR貨物、JR西日本が協力するプロジェクトを立ち上げ、協議を重ねた。各社の役割は、東急は▽旅行プランの企画・販売・運営▽地域連携▽車内サービスの提供。JR四国は▽瀬戸大橋線児島-四国内の運転▽地域連携への協力。JR貨物は▽伊豆からの車両輸送▽ツアー行程1日目の高松以降の運転における電気機関車(EF210)提供。JR西日本は▽同1日目の岡山―児島間の運転▽同―高松間の電気機関車(EF65)提供。また、行程中で使用する専用バス(2台)の運行と貸切船の運航は、両備グループが担当する。
生演奏とともにこだわりの昼食
魅力凝縮の4日間
ツアーは岡山を起終点に、毎週金曜日出発、月曜日帰着の3泊4日。ロイヤルEXP乗車区間は、岡山―高松―琴平間(1日目)、多度津―松山間(2日目)、松山―伊予西条―今治間(3日目)、今治―高松間(4日目)で、列車降車後の周辺観光や宿泊施設へのアクセスは専用バス、4日目の高松港―新岡山港間は、列車と同じ水戸岡主宰デザインのフェリー「おりんぴあどりーむせと」を貸切で使用する。
車内ではバイオリンとピアノの生演奏を聴きながら、日替わりで沿線地域(高松市、香川県坂出市、松山市、愛媛県伊予市)の4人の料理人によるこだわりの昼食を味わう。降車後は周辺観光を楽しみ、宿泊は香川県まんのう町、松山市(2施設から選択)、広島県尾道市瀬戸田町(生口島)の高級旅館。
定員は15組30人。クルーは13人乗車で、ほぼ1組に1人が付き、きめ細やかなサービスを行う。ツアーの旅行代金は96万円から。募集人員に対しほぼ2倍の応募が寄せられ、リピーターの申し込みが多数あったという。
狭小トンネル対策で機関車けん引
四国運転の特色
今回の運転区間は全て直流電化され、ロイヤルEXPも直流電車だが、全ての区間で電気機関車がけん引する。これは四国内の予讃線に狭小トンネルがあるのが最大の理由。折り畳み高さが基準値に収まらないため、ロイヤルEXPのパンタグラフそのものを取り外し、JR貨物との協議により、EF210を用意した。
なお、EF210が土讃線多度津―琴平間に入線するのは初めて。この区間は架線設備の関係で、パンタグラフは1基のみ使用する。
列車編成は北海道での運転と同様、通常時から3両減車した5両編成(1、4~6、8号車)で、全体では機関車と電源車を合わせ、7両編成となる。電源車には日頃のメンテナンスや異常時に備えて、東急の係員が常駐する。
JR四国の運転士はEF210の運転経験がなかったため、JR貨物の協力を得て車両見学、実習、訓練運転などを行い、衝動のない快適な運転に努めている。車掌はロイヤルEXPの機器類の取り扱いを習熟。また、通常はない機回し(機関車の付け替え)作業が多数発生するため、関係各駅で担当社員への教育や訓練が行われた。
両社では今回の運転でニーズを見極め、来年以降も同時期に四国で運転したい考えだ。
■驚きと発見があふれる旅を
◇松田高広東急社会インフラ事業部クルーズトレイン推進グループ統括部長
(四国での運転は)街と地域、人と街をつなぐ鉄道会社としての〝DNA〟がスタンスとしてある中で、日本のいろいろな地域を元気にできればというわれわれの思いと、JR四国の地域振興やクルーズトレインへのチャレンジの気持ちが合致して始まりました。お客さまに驚きと発見があふれる旅を提供し、各関係者とウィンウィンになれればと思います。
■多くの方々の力添えに感謝
◇南壮憲JR四国鉄道事業本部運輸部運輸課長
当社は観光列車は運転してきましたが、クルーズトレインは初めて。また、JR各社との協力はありましたが、民鉄も一緒にというのは今までなかったことで、多くの方々のお力添えに感謝しています。安全・安定輸送をしっかり担い、お客さまに四国を満喫していただき、四国の魅力の発見や、交流人口増加、そして次につながることを期待しています。
■お客さまの人生に寄り添う
◇車内で演奏を担当するバイオリニスト・大迫淳英氏
音楽は旅を感動に変えます。テーマ曲「四国・瀬戸内の旅」は、ロイヤルEXPという舞台で、お客さまが主役のミュージカルや映画のような旅のイメージです。(制作に当たっては)事前に3回ほど沿線を回ってイメージを言葉にし、作曲家に伝えました。演奏を担当するおもてなしのクルーとして旅を共にし、お客さまの人生に寄り添っていきます。
■愛媛産の素晴らしさ伝える
◇3日目の昼食を提供する「鮨いの」(松山市)の猪野祐介氏
お話をいただいた時、すごく面白いと思い、興味を持ちました。車内での提供は初めて。揺れるのが普段と違い、包丁を使う時はちょっとドキッとしますが、楽しみながらやっています。食材は魚もシャリ(米)も全て愛媛県産です。お客さまに愛媛の食材がどれだけ素晴らしいかをお伝えし、これをきっかけにもう一度愛媛に来ていただきたいです。
検索キーワード:JR西日本
1,519件見つかりました。
1441〜1460件を表示
-
2023.11.08 その他業種分類 営業・事業・車両
本 田中車輛の時代―近畿車輌前史― TMS編集部編
後世に伝えたい1冊 JR西日本、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)といった関西の鉄道をはじめ、JR東日本、東武鉄道、東京地下鉄(東京
-
2023.11.07 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
伊予鉄グループ JR西日本のICOCA導入へ
伊予鉄グループは10月27日、伊予鉄道の市内電車(路面電車)と伊予鉄バスの松山空港リムジンバスに来年3月(予定)からJR西日本のICOCAを導入すると発表した
-
2023.11.07 JR西日本グループ 予定・計画・施策
嵯峨野観光鉄道 今年も「クリスマス ロマンティック トレイン」を運行
JR西日本グループの嵯峨野観光鉄道は 12月23、24日の2日間、昨年に続き「クリスマス ロマンティック トレイン」を運行する。
-
2023.11.06 政府・省庁・鉄道運輸機構 式典・表彰
政府 秋の叙勲 国交省関係 小綬章以下
【旭日小綬章】 降籏洋平=元日本信号社長最高経営責任者・元信号工業協会会長(74) 【瑞宝小綬章】 中川順三郎=元国鉄仙台電気工事局次長(93) 【瑞宝双光章
-
2023.11.06 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 ICOCA20周年セレモニー
JR西日本の交通系ICカード「ICOCA」が1日、サービス開始20周年を迎え、記念セレモニーが大阪駅・大阪ステーションシティ2階アトリウム広場で開催された。
-
2023.11.02 JR共通(グループ) 決算・財務
JR東日本・JR西日本 24年3月期第2四半期決算を発表
JR東日本とJR西日本は10月31日、24年3月期第2四半期決算を発表した。いずれもコロナ禍からの回復に伴う好決算。
-
2023.11.02 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 株式分割、定款の一部変更へ
JR西日本は10月31日の取締役会で、2024年4月1日を効力発生日とする株式分割とそれに伴う定款の一部変更を行うことを決議した。
-
2023.11.02 運輸関連団体 予定・計画・施策
西日本鉄道OB会岡山地方本部 4年ぶりに「文化展」
西日本鉄道OB会岡山地方本部は10月24~27日、OB会員と現役社員の作品を展示する文化展をJR西日本中国統括本部岡山支社内で開いた。
-
2023.11.02 JR西日本グループ 予定・計画・施策
JR西日本不動産開発 シドニーの大規模複合施設に投資
JR西日本不動産開発は、三菱地所子会社のMEC Global Partners Asia社(本社シンガポール)、豪州の不動産運用会社・Ashe Morgan
-
2023.11.02 JR西日本グループ 予定・計画・施策
JR西日本コミュニケーションズ 「WESTビジョン」をLIVE BOARD連携へ
JR西日本コミュニケーションズは6日から、JR西日本の車内ビジョン「WESTビジョン」6716面をLIVE BOARDマーケットプレイスに接続・連携する。
-
2023.11.02 JR西日本 営業・事業・車両
JR西日本 「○○のはなし」1月13日から運転開始
JR西日本は山口線の観光列車「○○のはなし」を2024年1月13日から新山口―津和野間で運転開始する。