「手ぶら観光」推進へ、あの手この手 専用バス運行やロッカー活用
大きなスーツケースや手荷物を持ち運ぶ旅行者を駅や電車、バス、歩道などでよく見かける。滞在期間の長い外国人旅行者がやはり目立つ。通行や電車の乗り降りの際ぶつかったりしてトラブルになるケースもあるという。もっと気軽に旅行を楽しんでもらい、ひいては混雑(オーバーツーリズム)解消につなげようと、「手ぶら観光」に力を入れる自治体や企業が増えている。
専用バス運行やロッカー活用
手ぶら観光の推進に熱心な自治体の一つが、国内外から多くの旅行者が訪れる京都市。大型手荷物持ち込みで市バス車内が混雑、市民が乗れないといった事態も起きている。
市は春の観光シーズンに京都駅に臨時手荷物預かり所を開設した。3月20~22日、30~31日の5日間だったが、「千個ほどの利用があった」と観光MICE推進室。秋の観光シーズンも開設する予定だ。
また、大型荷物を持った旅行者を専用バスで宿泊先まで送る実証事業を早ければ10月から始める。京都駅から荷物を宿泊先まで配送したり、預かったりしているが、「手ぶら観光の三つ目の選択肢を示したい」と意気込む。
京都駅から大型荷物を持った旅行者を乗せ、複数の宿泊先を巡る。荷物を宿泊施設に置いてから観光してもらうスタイルを提案。宿泊施設や運賃・料金などは現在検討中だ。
西武ホールディングス(HD)は9月2日、手ぶら観光を推進するため、スマートロッカーを活用した手荷物配送サービスの実証実験を開始した。「関東では初の試み」という。
サービスの名称は「pikuraku PORTER(ピクラクポーター)in東京」で、スーツケースをはじめとする手荷物が電車の乗降や通行の邪魔になったりしている状況を解消するのが狙い。
池袋駅や西武新宿駅、豊島園駅に設置されているスマートロッカー(遠隔操作、事前予約、時間指定による開閉、キャッシュレス決済などが可能な次世代ロッカー)に荷物を入れて、宿泊するホテルを選択。14時までに預けると、当日の19時までに指定したホテルまで配送される。大ロッカーのサイズは幅330×奥行き645×高さ807・6㍉。
配送サービスの対象となるのは新宿や銀座、舞浜などにある約500のホテル。価格は税込み1900~2800円。「一つのロッカーに入るサイズであれば、荷物を何個送っても料金は一律」という。
実証実験は来年3月末までだが、10月31日まではキャンペーン価格(1700~2400円)の適用となる。対応言語は日本語、英語、韓国語、中国語。
同社は「訪日外国人が増え、スーツケースを持った観光客で都市部や観光地の公共交通機関があふれるなどオーバーツーリズムが社会課題となっている。スマートロッカーの持つ新しい可能性を活用し、手ぶらでの観光、移動を楽しんでもらうことで、公共交通機関の利便性の向上、オーバーツーリズムの解消につなげたい」と話す。
スマートロッカーを活用した手荷物配送サービスの実証実験はJR西日本も3月30日から「当面の間」で、尾道エリアと大阪エリアで実施している。
大阪エリアでは新大阪駅や大阪駅、ユニバーサルシティ駅などにロッカーを設置。市内約70の宿泊施設に配送する。
同社は検証結果や利用状況を踏まえ、来年の大阪・関西万博で広く使用してもらえるよう、大阪環状線の複数の駅へのロッカー導入とサービス拡大を検討していく。
(記事提供・観光経済新聞)
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