交通ニュース・アイ 個性あふれる福井の地域鉄道3社 北陸新幹線延伸で二次交通として注目
北陸新幹線の福井・敦賀延伸開業まであと2日に迫った。東京から最速3時間切りの福井は、2015年3月の金沢延伸時と同じく、観光ブームに沸くことでしょう。能登半島地震の復興加速にも期待が高まります。
ところで、福井は地域鉄道再生の取り組みで全国から注目を集めます。「福井鉄道(福鉄)」と「えちぜん鉄道(えち鉄)」、そして新幹線開業でJR西日本から経営分離される並行在来線を引き継ぐ、第三セクター鉄道「ハピラインふくい(ハピライン)」。新幹線乗車を計画中の皆さんへのミニガイドとして、個性あふれる3社をご案内します。
福鉄の路面電車、えち鉄 走る
相直で乗り換え解消、利用増やす
人口約26万人の県都・福井市。延伸開業する北陸新幹線への受け止めは「百年に一度の好機」。新幹線に続き、2年後の26年春には同市と長野県松本市を結ぶ、中部縦貫自動車道が県内全通するという話題もあり、地元は人やモノの流れが劇的に拡大する「大交流時代の幕開け」に期待します。
全国で初めて軌道と鉄道相直
22年度を初年度とする5年間の「第8次福井市総合計画」。交通・観光分野の政策目標が、「地域の魅力を発信して人の流れを呼び込む」。実効策が新幹線開業、さらには地域鉄道3社それぞれの個性発揮です。
本コラム前半では、福鉄とえち鉄を取り上げます。両社は別々の会社ですが、16年から相互直通運転を始めています。
ユニークなのは、福鉄が軌道(路面電車)、えち鉄が一般鉄道と、鉄軌道の種類が異なること。両社によると、「異なる事業者による鉄道と路面電車の相直は全国初めて」とのことです。
目的は、乗り換えを不要にして福井市内の移動を便利にすること。もう一つ、地域鉄道の例に漏れず厳しい環境に置かれる、両社の経営を刷新するのも大きな狙いです。
鉄道を復活させてほしい
まずはえち鉄のプロフィール。前身は京福電気鉄道(福井支社)で、社名そのままに福井のほか、京都にも路線があります。社会に衝撃を与えたのが、00年12月と01年6月の2度の衝突事故。国は事業停止命令を出し、2度目の事故翌日から電車は運転されなくなりました。
ところが、代行バスは遅れが慢性化。沿線に「鉄道を復活させてほしい」の声が湧き上がり、自治体が中心になって三セクのえち鉄を設立、03年に運行を再開しました。
いったん休止した鉄道が簡単に復活できないことは、本紙読者の皆さんはよくご存じでしょう。
えち鉄は福井―勝山間の勝山永平寺線(27・8㌔)と、福井口―三国港間の三国芦原線(25・2㌔)の2路線。沿線にパーク&ライド駐車場を整備したり、企画きっぷを売り出すなど、着実に利用を増やしています。
郊外は鉄道、福井市内は軌道
えち鉄と同じく、福鉄も地域の支援で再生を遂げた鉄道です。路線は福武線(たけふ新―田原町間20・9㌔、福井城址大名町―福井駅前間0・6㌔)で、郊外は専用軌道の鉄道、福井市中心部は道路上を路面電車として直通運転します。
鉄軌道の直通は広島電鉄などと同じで、LRT(次世代型路面電車)の必要条件を満たします。
福鉄は00年度以降、経営悪化で存廃が議論されましたが、地元は存続を決断。施設を自治体が保有し、鉄道事業者は運行に専念する経営の上下分離で、経営を立て直しました。
相直を機に利用客3倍増
えち鉄と福鉄は元々、福井市内の田原町駅で接続していましたが、線路はつながっていませんでした。そこで福井市などが主導し、両社をつなぐ連絡線を整備して実現したのが、16年春にスタートした相直です。
愛称「フェニックス田原町ライン」で、相直区間はたけふ新(福鉄)―鷲塚針原間(えち鉄)26・9㌔。実施にあたっては、田原町、八ツ島、鷲塚針原などえち鉄6駅に低床のホームを整備しました。
えち鉄のホームは鉄道用の高さで、路面電車の福鉄が乗り入れるには低床ホームが必要でした。設備関係では、信号・電気設備を改修、車両は福鉄がLRV(ライトレールビークル=LRTの車両)を新製しました(その後、えち鉄もLRVを導入しています)。
相直の成果は? 地元で公共交通利用促進の旗を振る「ふくい路面電車とまちづくりの会」によると、田原町を通過して福鉄とえち鉄を行き来する利用客は、相直を機に以前の3倍前後に増加したそうです。
福井が、全国トップクラスの〝マイカー王国〟という現実は変わらないものの、福鉄とえち鉄は福井市内の公共交通機関として存在感を増しています。
福鉄〝ひげ線〟を延ばす
相直と並ぶ、福井市中心部の鉄道(軌道)プロジェクトが福鉄の延伸です。延伸したのは、福井城址大名町から分岐してJR福井駅前に乗り入れる支線部分です。通称「ひげ線」または「駅前線」。16年3月に完成したプロジェクトでは、ひげ線を駅前広場まで143㍍延伸しました。
距離はわずかですが、乗り入れを始めた福井駅西口では福鉄のほか、JR、バス、タクシーなどの交通機能が集積され、乗り換え利便性が大幅に向上しました。
新駅乗降客3割「利用を始めた」
ラストは、新駅をめぐるミニ情報。えち鉄は07年に「日華化学前」と「八ツ島」、15年に「まつもと町屋」(いずれも三国芦原線の福井市内)を開業しました。
このうち、まつもと町屋駅(福井口-西別院間)の開業効果を実地検証したのが、福井工業大学と福井大学の合同チームです。
周辺住民約700人が回答したアンケート調査では、新駅利用者の7割強が「今まで両隣の駅を利用していた」と回答したものの、「新しく鉄道を利用し始めた」も3割弱あり、新駅が鉄道需要の掘り起こしに一定の効果を発揮したことが判明しました。
■「特急街道」が三セクに
福井とあしたの架け橋…
並行在来線引き継ぐハピライン
北陸新幹線の福井・敦賀延伸開業と同時に誕生する新しい鉄道、それが「ハピラインふくい(ハピライン)」です。
並行在来線のJR北陸線敦賀―金沢間のうち、福井県内の敦賀―大聖寺(県境をまたいだ石川県加賀市)間84・3㌔を運行する、福井県が中心になって設立された第三セクター鉄道。
スローガンは「ふくいとあしたの架け橋に」。「福井県各地の多様な営みをつなぎ、未来に向けて新しい価値を生み出す」を目標に、地域ファーストの鉄道を実現します。
北陸特急や日本海縦貫特急が引っきりなしに行き交い、鉄道愛好家から「特急街道」と呼ばれたJR北陸線。新幹線延伸開業で、福井県側から県単位でハピライン、IRいしかわ鉄道(石川県)、あいの風とやま鉄道(富山県)、えちごトキめき鉄道(新潟県)の4社に分割されます。
社名のハピは、「ハピネス(幸せ)」。福井県の「福」につながり、県民に親しまれる言葉です。福井県のマスコットキャラクターは「はぴりゅう」。恐竜ブームに沸く福井の新しい鉄道は、偶然ながら辰年に最初の一歩を踏み出します。
19年に、「福井県並行在来線準備株式会社」の社名で設立されたハピライン。現社名は公募で選ばれました。
大株主の福井県のほか、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、県内市町、民間企業が出資します(出資比率は非公表)。
JR時代に1日上下102本だった普通列車は、ハピラインでは131本に増発(ほかに貨物列車1日33本)。増発29本のうち9本は新設の快速列車で、朝夕通勤通学時間帯に福井ー敦賀間で運行されます。途中停車は鯖江、武生、南条(または今庄)の3駅。普通に比べ、所要時間は10分程度短縮されます。
福井県の資料によると、コロナ禍前の19年度データでハピラインの乗車人員は1日約1万9500人。輸送密度は同じく1㌔当たり5600人で、一定の利用があります。利用客の4分の3は通勤通学の定期客です。
営業損益は実質初年度の24年度で7億3000万円、開業11年目の34年度で6億円のそれぞれ赤字を見込みます。赤字分は、鉄道・運輸機構の出資金などを基に経営安定基金を設定して穴埋めします。
利用促進策は、「利便性向上」「駅中心の街づくり」「地域鉄道など他交通事業者との連携」「地域に親しまれる鉄道の実践」の4項目を掲げます。利便性向上には、「観光・イベント列車運転」や、「新駅設置(福井―森田間、武生―鯖江間、王子保―武生間)」が並びます。王子保―武生間の新駅(越前市)は1年後の25年春に開業予定。ハピラインは新駅の駅名を「しきぶ駅」に決定しました。駅近隣の「紫式部公園」にちなんだネーミングです。
地元ではハピライン、えち鉄、福鉄のローカル鉄道3社の経営再編も取りざたされているそう。並行在来線の針路を示す再生策として注目したいところです。
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