交通新聞社 電子版

特集 「4大改革を推進」 JR東日本クロスステーション フーズカンパニー

2022.01.20
日野正夫常務・フーズカンパニー長

 競争力強化めざす

 駅ナカの外食事業をはじめ、弁当事業や食品製造事業を幅広く手掛けるJR東日本クロスステーション(JR―Cross)フーズカンパニー。現在、サービス品質や生産性の向上、競争力強化を目指して「4大改革」を進めている。その概要を紹介するとともに、日野正夫常務・フーズカンパニー長に改革への意気込みを聞いた。(相川 夏子記者)

 サービス品質、生産性向上

 さらなる成長、発展へ

 そば「いろり庵きらく」、カフェ「ベックスコーヒーショップ」、おむすび「ほんのり屋」に「駅弁屋 祭」――。同カンパニーが駅ナカを中心に展開するブランドの一例だ。クイックな食を提供し、日々お世話になる機会も多いが、デベロッパーの要望などに応じて新業態を展開し続けた結果、2020年4月時点ではその数102ブランドに。オペレーションなどで非効率な面が目立ってきた。

 同カンパニーは日本レストランエンタプライズ(NRE)とジェイアール東日本フードビジネス(JEFB)が20年4月に経営統合したJR東日本フーズが前身。NRE時代から「自前主義と広すぎる業態」「収支責任が不明確な相互依存体制」「マネジメントの不在」といった構造的な課題を抱えていたことから18年度から順次、財務マネジメント改革▽事業構造改革▽外食事業改革▽グループ弁当事業改革――の4大改革に着手し、現在も取り組みを進めている。

 外食 6業態に整理出店拡大

 このうちメインとなるのは外食事業改革だ。業態整理やブランド統合を進め、そば(いろり庵きらく、そばいち)、カフェ(ベックスコーヒーショップ)、おむすび(ほんのり屋)、ラーメン(TOKYO豚骨BASE、T 's たんたん)、カレー(スパイスファクトリー)、ベーカリー(リトルマーメイド、ブランジェ浅野屋)の主力6業態に整理する。現在の77ブランドから、将来的には30~40程度に絞り込む。その上で、スターバックスや一風堂、リトルマーメイドなどの業務提携ブランドや、JR東日本のシェアオフィス事業「STATION WORK」と融合したベックスコーヒーショップなどの出店を拡大する。

 一方で構造改革やコストダウンに取り組む。そばロボットや呼び出しディスプレー、セルフオーダーレジ端末導入による省人化、販売メニュー整理による食材やオペレーションの効率化、生産性指標を活用した定量的店舗マネジメント、エリア統括制度による店舗サポート体制強化を図る。

 

 財務 生産管理システム4月稼働

 財務マネジメント改革については、20年11月に原価管理システムを導入し、製品分類別の原価・売価の妥当性分析が可能になった。さらに今年4月からは生産管理システムを稼働予定で、生産状況、在庫、受発注の状況などを一元的、リアルタイムに管理することで業務の標準化、効率化を推進する。

 事業構造資産を整理 運営効率化

 事業構造改革については、19年7月の列車サービス部門分社化や、NRE、JEFBの統合を経て、21年1月末に物流事業のジェイアール東日本物流への移管などを推進。今後はエヌアールイーサービスなどグループ会社4社の業務の整理統合や事業移管の検討、非事業用資産の処分、事務所や倉庫など後方施設の他カンパニーとの共同利用など、事業用資産の整理や業務運営の効率化を図っていく。

 弁当 戸田に製造機能集約へ

 グループ弁当事業改革では、製造子会社の日本ばし大増と大船軒の商品開発、購買機能を20年5月にJR東日本フーズへ移管した。21年度は製造原価の分析結果を基に戸田工場の今後の製造品目を選定、23年度に製造機能の戸田工場への集約を予定している。グループ内に製造、販売の両機能を有する製販一体の優位性を生かし、弁当事業全体の健全経営達成を目指す。

 これらの改革を進めてきた結果、カンパニーとしての損益分岐点売上高はコロナ前比で約11%改善、中でもそば業態は約14%、カフェ業態は約41%改善するなど、生産性向上の具体的な成果が出ている。同カンパニーでは今後も改革の手を緩めることなく、さらなる成長や発展につなげていく考えだ。

 ■インタビュー 

 常務・フーズカンパニー長 日野正夫氏

 状況変化への対応見極める

 カンパニー統合 店舗の最適化、販路拡大

――さまざまな改革を進めていますが、重視していることは。

 日野 経営をシンプルに分かりやすくし、マネジメントをきちんとして成果に結びつけることです。外食は店舗ごと業態ごとに数値管理、弁当は業務の集約化で収支を上げ、工場の製造機能を再編する。最新鋭のシステムでいかに効率的に良いものを生産するかキャッチアップできる体制をつくらなければなりません。そのためには製造部門で常に一定の利益を上げる、利益を上げるために生産管理をちゃんとやらなければならない。出店さえすればいいという感覚ではいけません。

 例えば、2018年に改革を始めた当初、NREの店舗では業務日誌を手書きでつけていました。タブレット端末を配布して一気に廃止しましたが、変わらない中にいるとそれが当たり前になってしまう怖さがあります。かつて1970年代にはNREが日本の外食産業の中で売り上げトップだった時代もありましたが、取り巻く状況ががらりと変わっているのに従来のやり方を維持している。そうではなく、周囲の状況を見ながら変えるところは変えていかなければなりません。

 鉄道事業は伸び続けるという前提で進めていたことを、コロナ禍で鉄道の需要が100まで戻らないとしたらどこに成長の起爆剤をぶつけていくか。駅ナカの開発は進め尽くしています。今考えているのは駅の近くで得意なそばやカフェ業態で少しずつ進出しようかと。

――フーズカンパニーの強みは。

 日野 駅そばなどは一定の規模があり、工場などの内製が成り立ちます。短時間の滞在の中でどうやってタイムリーにお出しするかといった駅ナカでの外食オペレーションのノウハウは豊富です。さらに弁当の販売拠点を持っているのも強みになると思います。

――カンパニー統合の成果を感じる場面はありますか。

 日野 駅のマーケットやご利用動向を見ながら店づくりができるようになったということはあります。先日、駒込の書店をそば店に、目白のベーカリーカフェを雑貨店にリニューアルしました。リテールカンパニーとフーズカンパニー間での交換です。また、東京駅の新幹線ホームではニューデイズと駅弁屋が背中合わせになっていたのをニューデイズ店舗にして、駅弁も取り扱うようにしました。

 お客さまにとっては一つの店であれもこれも購入できた方が利便性は高まります。弁当の仕入れなどカンパニー間での調整はありますが、それぞれの利益だけではなく、一緒になることによってどのサービスを提供するのが最適かを考えるようになったと思います。

 また、製販一体という言葉がありますが、特に弁当に関しては非常に大きな販売ネットワークを手に入れたといえるかもしれません。駅弁店ならば出店場所が限られますが、例えば在来線の特急停車駅のニューデイズに駅弁を置いてもらえば、乗車前にちょっと買ってみようかとなる。実際のニーズを考えると、リテールカンパニーの販売ネットワークの一部を使わせていただけるのは大変ありがたい大きな話になりますね。

(A)

検索キーワード:シェアオフィス

87件見つかりました。

81〜87件を表示

<