交通新聞社 電子版

特集 36年目迎えたJRグループ JR東日本

2022.04.01
2030年の実用化に向けて実証実験を開始した水素ハイブリッド電車「HYBARI」

 コスト構造変革が不可欠

 コロナ禍、人々の生活様式や働き方が変化する中、鉄道需要が元には戻らないとの前提で、一層のコストダウンとともに、中長期的な視点に立った構造改革を断行するとともに、2023年3月期の黒字化を必達条件に掲げる。また、グループ経営ビジョン「変革2027」実現に向けては、「変革のスピードアップ」で発表した「成長・イノベーション戦略の再構築」と「経営体質の抜本的強化」「ESG経営の実践」の三つを柱に進めている。

 新たな価値を提供

 具体的には、新しい暮らしの提案として、「オフピークポイントサービス」で時差通勤を促し、シェアオフィス事業「STATION WORK」を全国展開し、荷物輸送サービス「はこビュン」による地方創生と豊かな暮らしづくりなど、新たな価値を提供する。「JRE MALL」と連携した駅のショールーミング化の展開などにより、駅をビジネスの発信拠点とする「Beyond Stations構想」を推進し、グループ共通ポイント「JRE POINT」生活圏の拡大を図る。

 今月4日には、日本初の駅ホーム上にリアル(対面)とオンライン(非対面)のハイブリッドクリニック「スマート健康ステーション」が西国分寺駅にオープンする。新たな医療の在り方を提案し、心豊かな生活を実現していく。

 社員活躍の場を拡大

 鉄道事業は、固定費比率が高く、設備のスリム化など、中長期的な視野に立ったコスト構造の変革が不可欠。1日の時間帯はオフピークポイント、シーズン別では指定席特急料金の改定などで利用者の分散化を狙う。

 3月のダイヤ改正に合わせて、現業機関として「(営業)統括センター」を計23カ所に発足させ、駅業務や乗務業務、企画業務などを融合することで、柔軟な働き方とともに、社員一人一人の活躍のフィールドを拡大。鉄道と生活サービス、IT・Suicaサービスといった事業間の連携強化も図る。

 このほか、鉄道ネットワークや農産物流通のプラットフォームなどを活用した「ローカルDX(デジタルトランスフォーメーション)」、不動産事業による「回転型ビジネスモデル」などにも力を注ぐ。

 脱炭素化へ各種検証

 環境優位性の向上とサステナブルな社会の実現に向け、日本初の水素ハイブリッド電車(燃料電池)・FV―E991系「HYBARI(ひばり)」の実証試験を南武線や鶴見線で3月下旬から開始。同社グループの環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に掲げた脱炭素化に向け、各種検証を行い、30年の実用化を目指していく。

 多様な魅力あるまちづくりでは、山手線目黒―五反田間の線路脇の「MEGURO MARC(メグロマーク)」のうち、3月にオフィス棟「JR目黒MARCビル」(地上13階・地下1階建て)が竣工(しゅんこう)。今後、10月に賃貸住宅棟(地上24階・地下2階建て)、野村不動産グループの分譲住宅棟(地上32階・地下1階建て)が来年11月にそれぞれ竣工する予定。

 10月14日には「鉄道開業150年」を迎え、管内を走る各新幹線も周年を迎えることから記念キャンペーン「新幹線YEAR2022」を展開中。新幹線YEARでは、デジタル媒体を中心にプロモーション展開しており、通常の半分のポイントで交換できる特典チケットも設定。今後、イベント開催や関連グッズ販売など、多彩な企画で節目の年を祝う。

 安全については、経営のトッププライオリティーに掲げ、全ての基盤である「信頼」に通じる。「グループ安全計画2023」の下、「一人ひとりの『安全行動』の進化と変革」と「『安全マネジメント』の進化と変革」「新たな技術を積極的に活用した安全設備の整備」の三つを柱に、人材育成、自然災害に対する備え、ホーム上の安全対策などを推進する。

 今秋、只見線会津川口―只見間(27・6㌔)が、11年以来11年ぶりに運転再開の予定。また、地域連携ICカードは今年に入って5月までに東北エリアを中心に5県・9種類が使用開始し、Suicaを共通基盤化したシームレスな移動の実現につなげる。

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