今年の話題 JR東日本 改革加速、新たな価値創出
23年3月期黒字化めざす
燃料電池試験車両 「ひばり」実証実験
「MEGURO MARC」順次竣工
コロナ禍、人々の生活様式や働き方が変化し、コロナ前の鉄道利用者数には戻らないことを前提に、グループ挙げた一層のコストダウンを推進し、併せて中長期的な視点に立った構造改革を進め、経営体質の抜本的強化、新規事業の展開を含め、各種施策を強力に推し進め、2023年3月期の黒字化の達成を目指している。
コロナ感染拡大後の20年9月に「変革のスピードアップ」を発表し、この中で「成長・イノベーション戦略の再構築」と「経営体質の抜本的強化」「ESG経営の実践」の三つを柱に掲げ、グループ経営ビジョン「変革2027」の実現に向け、改革のスピードとレベルのアップを図っている。
安全が経営のトッププライオリティーであることに変わりはなく、〝究極の安全〟を追求し、鉄道利用者や地域の人々の信頼を高めていく。第7次安全5カ年計画「グループ安全計画2023」に基づき、ホームドアの整備をはじめ、踏切事故防止に向け、廃止を基本スタンスに、立体交差化や統廃合、第一種化、高機能化版踏切障害物検知装置の設置などの安全性向上に努める。ホームドアは、昨年の11月の時点で73駅(のべ84駅)に整備。昨年11~12月には新型試作機の実環境試験も行われた。
サービス融合し相乗効果を発揮
将来に向けた成長戦略としては、「輸送」と「生活」「IT・Suica」の各サービスを融合することで、相乗効果を今まで以上に発揮し、新しい価値を創出する。荷物輸送サービス「はこビュン」、シェアオフィス事業「STATION WORK」、通販サイト「JRE MALL」などの施策を推進。駅をビジネス発信拠点にする「Beyond Stations構想」のさらなる具現化を目指すとともに、グループ共通ポイント「JRE POINT」の可能性をさらに探る。
構造改革は、デジタル技術などを活用し、チケットレスサービス、ワンマン運転、メンテナンスの省力化などを加速させ、柔軟な列車ダイヤや運賃・料金体制の構築を図る。昨年3月のダイヤ改正で終電時刻繰り上げを実施し、夜間作業の施工効率がアップ。ピークシフトのための施策検討を進め、設備のスリム化などにより経営体質を強化する。
特急料金など各種料金を改定
特急料金などの各種料金改定も実施。東北(北海道含む)、山形、秋田、上越、北陸の各新幹線と一部の在来線特急列車を対象に、4月1日乗車分からシーズン別の指定席特急料金を改定。現行3段階の料金設定を4段階にし、年末年始などを「最繁忙期」として新設する。併せて、適用日カレンダーも見直し、最繁忙期や繁忙期の前後期間は閑散期や通常期(一部除く)を設定して利用のシフトを促す。これに伴い、値上げ46日、値下げ51日となる。
さらに、3月12日からは、各新幹線と同社管内の特急の特別車両(グリーン車、グランクラス、プレミアムグリーン)のグリーン料金とグランクラス料金を改定。新幹線部分と在来線部分の特急料金体系が異なっていた山形・秋田新幹線にも、山形新幹線の全車指定席化に合わせて共通料金を適用する。
ゼロカーボングループ一丸で
一昨年公表した2050年度に二酸化炭素(CO2)排出量「実質ゼロ」を目指す環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」については、引き続き、グループ一丸となって取り組む。3月には、鶴見線や南武線尻手支線、南武線尻手―武蔵中原間で、日立製作所とトヨタ自動車と共に開発中のハイブリッド車両(燃料電池)の試験車両「HYBARI(ひばり)」の実証実験を開始。水素をエネルギー源とし、地球温暖化防止やエネルギー多様化による脱炭素社会の実現に貢献する。
各新幹線が節目周年キャンペーン
東北、上越、山形、秋田、北陸の各新幹線がそれぞれ節目の周年を迎え、7日から「新幹線YEAR2022」キャンペーンを展開。東北新幹線大宮―盛岡間と上越新幹線同―新潟間が40周年、山形新幹線福島―山形間が30周年、秋田新幹線盛岡―秋田間と北陸新幹線高崎―長野間が25周年、東北新幹線盛岡―八戸間が20周年を迎える。第1弾として、期間限定でJRE POINTで交換できる新幹線eチケットの交換ポイント数を下げる。1年かけ、各地域を盛り上げるさまざまな企画を実施していく。
同社グループが野村不動産グループと連携して行う複合型まちづくり計画「MEGURO MARC(メグロマーク)」は、山手線目黒―五反田間の線路脇の土地を開発し、賃貸住宅、分譲住宅、オフィスの3棟で構成。オフィス棟「JR目黒MARCビル」は3月竣工(しゅんこう)予定で、地上13階・地下1階建て、事務所、店舗、駐車場からなる。賃貸住宅棟は地上24階・地下2階建て、共同住宅や保育所が入り、10月竣工予定。住居と職場が共存し、多世代が安心して働き、暮らすことができるまちを提案する。
復旧中の只見線今秋運転再開へ
復旧作業中の只見線は、昨年11月末に会津川口―只見間(27・6㌔)について、同社の第二種鉄道事業申請と福島県の第三種鉄道事業申請が国土交通省により許可された。県が鉄道施設と土地を保 有し、同社が保有車両で列車運行を担う「上下分離方式」の下、今秋の運転再開を目指す。
Suicaの共通基盤化に向け、地域連携ICカード導入も拡大。既に栃木県内、岩手県などでスタートし、今春から群馬県内、十和田観光電鉄(青森県十和田市)の一部路線バス、秋北バス(秋田県大館市)の一部高速バスで使用開始の予定。
今年は、日本で初めて新橋―横浜間に鉄道が開業してから150周年の節目の年となり、記念行事なども開催予定だ。
上越新幹線E7系追加投入
3月12日のダイヤ改正では、新幹線関係では、上越新幹線でE7系を追加投入し、「とき」「たにがわ」のうち新たに12本の列車を運転。
在来線関係は、首都圏で通勤時間帯の着席サービス、首都圏発着の特急の利便性を向上。上野東京ライン(常磐線直通列車)では増発、南武線は土休日の快速の運転時間を拡大する。昨年度、房総・鹿島エリアで導入の「E131系」と同形式の新型車両を、宇都宮、日光線に投入、相模線に追加投入。
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