交通新聞社 電子版

特集 首都圏民鉄の取り組み 進化するシェア事業

2021.09.14
リビングのあるシェアオフィス「12 SHINJUKU3CHOME」

 空間、モノ…他者利用をマッチング

 ここ2、3年、民鉄各社の関連事業でキーワードに挙がってきたものの一つが、〝シェアリングエコノミー〟。インターネット上でのマッチングなどを通じ、個人や企業・団体などが所有する遊休資産などを他者も利用できるようにするというものだ。シェアする対象は空間やモノ、お金、スキルなど多岐にわたる。移動分野でもカーシェアリングやシェアサイクル、相乗りサービスなどが相当する。首都圏民鉄各社の最近の取り組みの中から、ユニークなもの、特徴的なものを紹介する。(鴻田 恭子記者)

 

 ONE 小田急電鉄 1IDで複数サービス

 小田急電鉄は2019年12月、シェアリングエコノミーにかかわるサービスを軸とする地域密着型プラットフォーム「ONE(オーネ)」を立ち上げた。一つのIDを利用して複数の提携会社のサービスを利用できる仕組みで、名称は「Open Next Experience」の頭文字に由来。ホームページでID入手後、利用したいサービスを選んで登録すると、サービス利用時の割引や利用額に応じたポイント付与、クーポン配信などが受けられる。

 提携会社は当初16社だったが、現在63社に拡大。会員数は8月末現在約3万5000人まで増加した。人気のサービスは傘シェアリングの「アイカサ」やモバイル端末の充電機器レンタルの「充レン」「ChargeSPOT」など駅にレンタル場所を設置できるものに加え、献立作成や調理を依頼できる「シェアダイン」などだ。

 小田急では「お客さまのニーズに応えることで地域の価値を高めたい。革新的なサービスを、安心・快適・便利にご利用いただけるようにするとともに、ONEを街とヒト、ヒトとヒトをつなぐプラットフォームへと進化させていく」としている。

 

 TuyTuy 東急電鉄 定期券保有者 月500円で充レン、アイカサ

 東急電鉄では今年5月、定期券保有者向けにサブスクリプション型サービス「TuyTuy(ツイツイ)」実証実験を開始した。シェアリングを中心とするサービスで、小田急が割引や利用者へのポイントなどで還元するのに対し、東急ではサブスクと割引を組み合わせた。サブスクとしては利用料の月500円で充レンやアイカサ、小型電動自転車(LUUP、月5回まで)などを使える。

 この理由は東急が定期券保有の付加価値創造を目的の一つとしたため。駅や駅チカにあり、「ついつい」使いたくなるものをラインアップ、さらに不定期で電車のワンデーパスも配信している。7月には店頭で売り切れない食品類を割安に販売する「TABETE」の割引利用なども追加した。

 ラインアップのもう一つのキーワードが環境など社会課題解決。忘れ物傘・廃棄傘の削減や災害時の携帯端末の充電支援、フードロスなどの活動にもつなげている。

 利用は公式LINEアカウントから友だち登録。実験期間は当初7月末までだったが、現在10月末まで延長。サービスも6種類を19種類に増やした。友だち登録者数は現在約1万人に上る。

 

 シェアオフィスをマガリ 京王系のリビタ オフィス賃料 貸せば割引に

 オフィス賃料 貸せば割引に

 京王グループでは、子会社のリビタがシェアオフィス事業を本格化する中で、借りながら貸せる「マガリ」の仕組みを開始予定だ。オフィスを使わない日時を登録しておき、利用を希望する会社や個人が使った時間分の賃料を割り引くもの。

 リビタはマンションや戸建てのリノベーションなどを主に手掛けてきた会社。シェアオフィスも〝暮らしを自由にするオフィス〟として共有スペースにキッチンやリビングなど住宅の機能を導入している。今回、既存の「12 SHINJUKU(新宿)」に続き、今月1日に「12 SHINJUKU3CHOME(新宿3丁目)」を開業。10月に西新宿、来年度に神田にも施設を設ける。

 マガリ導入予定の9月開業施設は東京地下鉄(東京メトロ)新宿3丁目駅直結。ビルのワンフロア約620平方㍍に個室型のオフィス13区画とデスク10区画、フリーデスク、共有スペースなどを設けた。

 オフィスは土曜日・休日など使わない日もある。そこで有効活用方法を検討、今後詳細を詰めた上でマガリを開始する。新宿エリアの駅直結という場所柄、同社では商品展示や個人の勉強などの活用方法を想定している。

 

 Cocoonモビリティパッケージ 京浜急行電鉄

 三浦半島 移動拠点を拡大 地域事業者と連携

 やや視点を変えて、京浜急行電鉄では、神奈川・三浦半島でのモビリティー拠点拡大に向け、遊休地やスペースを持つ法人向けに、移動に関するシェアリングサービスのパッケージ提案を行っている。

 パッケージ化したのは、同社などが事務局を務めるエリアマネジメント組織「三浦CocoonFamily」加盟102団体中、移動に関する11団体。提案先は三浦半島に遊休地や店舗スペースを持つカフェや飲食店、ガソリンスタンドなどを運営する地域事業者だ。

 事務局2社を除く9団体はカーシェアやシェアサイクル、駐車場シェア、荷物預かりなどサービス提供にスペースを必要とする。団体側は提案の効率化、地域事業者側は複数提案の中から空間活用について考えられる。

 第1弾で荷物預かり、第2弾で今月、キックボードのシェアリングサービスを開始。今後、提案により半島内のモビリティー拠点の開拓・拡大とともに、エリアマネジメント組織としての活動も強化していく。

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