交通新聞社 電子版

墨滴 3月4日付

2024.03.04

 20年前の2004年3月13日未明、九州新幹線(新八代―鹿児島中央間)部分開業記念式典の取材のため、新八代駅に向かった。時節柄まだ暗い空の下、景色の一カ所だけ明るく光を放つ駅舎が印象的で、新時代の幕開けを感じさせた▼この日、一日駅長を務めたのが地元熊本県八代市出身の歌手で、昨年末に亡くなった八代亜紀さん。式典後、駅コンコースに展示する自身が描いた絵画の除幕式で「この絵を見たら、亜紀ちゃんと呼び掛けて」とちゃめっ気たっぷりに話した▼絵画は八代平野を流れる球磨川を描いたもので、作品名は「故郷への想い 球磨川」。八代さんにとって球磨川は幼少期に度々、父親と河川敷で写生を楽しむなど思い出深い場所だったそうで、20年7月豪雨で発生した球磨川の氾濫による被害に心を痛めたという▼熊本への思いは人一倍強く、生前は地元イベントに毎年参加するとともに、県や市のアンバサダーとして活躍。16年4月の熊本地震の際には復興支援にも尽力した▼今月9日にJR九州主催の20周年記念イベントが新八代―鹿児島中央間で行われる。参加者が同区間乗り放題きっぷとセットのオリジナルグラスを手に沿線を巡り、各駅係員と乾杯して祝う趣向だ。八代さんの功績をたたえ、新八代駅では遺作となった絵画に「亜紀ちゃんに献杯!」とグラスを掲げてみようか。

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