指定席 JR九州熊本乗務センター機関士・市原昌之氏
ラストシーズンのSL58654号機に乗務するJR九州熊本支社熊本乗務センター機関士
市原昌之(いちはら・まさゆき)氏
きょう22日、SL58654号機(ハチロク)がけん引する「SL人吉」が、「SLあそBOY」として豊肥線熊本―宮地間で一日限りの復活運転を果たす。18年ぶりとなる里帰りの乗務を任され、「沿線の方々の笑顔を楽しみに、精いっぱい盛り上げたい」と意欲たっぷり。
地元宮地出身で父親が国鉄職員とあって、SLは子どもの頃から身近な存在だった。入社から数年後の運転士時代、先輩社員の勧めや息の合った機関士と機関助士の仕事ぶりに驚嘆し、機関士を目指すことを決心。23歳で機関助士となり、SLあそBOYで腕を磨いた。
その後、機関士を目指し、出向先のJR西日本で研修や乗務訓練に励んでいたところ、2005年8月でのSL引退が決定。複雑な気持ちを抱えながら、同年7月に機関士免許を取得した。「先輩機関士の計らいでラストランの乗務を任されたことが一番の思い出です。沿線や駅にたくさんの方々が来てくださり、今でも目に焼き付いています」と振り返る。
09年4月に大改修されたハチロクは、肥薩線のD&S(観光)列車「SL人吉」として運行再開。機関士の仕事を取り戻し、くしくも栄えある一番列車の乗務に当たった。「場所は変わりましたが、再びSLに乗れる喜びと期待でいっぱいでした」
以降、九州唯一のSLの安全安定運行を担ってきたが、20年7月の豪雨災害で肥薩線八代―吉松間が不通となり、現在は熊本―鳥栖間を走る。そして、昨年10月に24年3月末での運行終了が決まった。
豊肥線の復活運転はラストシーズンの記念企画の一つ。「来年3月で姿を消すのは非常に残念ですが、残りの期間、ファンの皆さまや地域の思いも乗せて走らせたい」。ベテラン機関士の情熱の炎は尽きることがない。(松尾 恭明記者)
略歴 1995年4月JR九州入社。大牟田駅、熊本車掌区などを経て熊本乗務センター勤務。2000年から機関助士、05年から機関士。47歳。
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