交通新聞社 電子版

墨滴 4月10日付

2024.04.10

 JR九州のD&S(観光)列車「SL人吉」が3月23日に営業運転を終えた。けん引機の58654号機は唯一九州を走るSLとして、前身の豊肥線「SLあそBOY」と合わせて約32年間にわたり活躍してきただけに、寂しさはぬぐえない▼台枠新製やボイラーの大規模改修などを経て、2度目の復活を遂げた「SL人吉」は2009年4月から熊本―肥薩線人吉間を走った。球磨川沿いに延びる肥薩線のいわゆる「川線」は平たんな路線で、急こう配区間のある豊肥線とは異なり、のびのびと軽快に走っているようだった▼人吉から先の吉松までの「山線」は、当時の「いさぶろう・しんぺい」にバトンタッチ。さらに吉松から鹿児島中央まで「はやとの風」が結び、この3列車を乗り継ぐ旅の楽しみは〝観光列車王国・九州〟の象徴だった▼20年7月の豪雨災害で肥薩線が一部不通となり、21年5月から活躍の場は鹿児島線熊本―鳥栖間に。アニメ「鬼滅の刃」の「無限列車」とのコラボレーションなど話題づくりも奏功し、SL人気は衰えることなく地域や観光客らに愛されてきた▼今年で製造から102歳を迎える同機は、かつて保存展示されていた熊本県人吉市に無償譲渡される予定。今後の活用は未定だが、SL復活や日々の保守・点検、運行に尽力してきた人々、それを支えた地域の誇りをしっかり受け継いでもらいたい。

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