車両に、人に、歴史あり ~本紙に届いた一通の手紙~
北九州市門司区にある九州鉄道記念館。2003年8月の開館以来、九州島内で活躍した鉄道車両の展示や鉄道の歴史を学べる貴重な〝ミュージアム〟。訪れた人々に、鉄道とのかかわりを改めて感じさせてくれる施設である。
気動車初の重文指定
九州鉄道記念館は赤れんが造りの本館が特徴で、1891年4月から九州最初の鉄道会社・九州鉄道会社の本社として使用された。その後、鉄道院九州鉄道管理局、国鉄門司鉄道管理局、国鉄清算事業団などを経て、2003年8月、JR九州が開館した。
本館では「明治時代の客車」「運転シミュレーター」「九州の鉄道大パノラマ」「常設展示」「企画展示」を、室外施設として「車両展示場」「ミニ鉄道公園」「前頭部展示」を設けた。中でも長さ約180㍍の車両展示場には九州各地で活躍した国鉄時代の「SL59634号機」(1922年製)や「EF10形35号」(41年製)など9車両が展示されている。
このうち「キハ07形41号」は37年、日本車輌製造によって製造された機械式(クラッチ変速方式)気動車。当初はガソリンカーとして誕生し、キハ42055(キハ42000形)と呼ばれた。
キハ42000形は、鉄道省が発注し、35~37年に62両製造された。このうちの1両、「キハ07形41号」は、戦前は大阪の宮原機関区、戦後は名古屋や高岡機関区などに所属した後、57年に大分県の豊後森機関区に転属。主に大分、熊本両県をまたぐ旧国鉄宮原線(恵良―肥後小国間)で69年まで旅客輸送に活躍した。国鉄車両称号規程が改正された57年からは「キハ07形41号」に改称する。運用終了後は同機関区の扇形庫内などで保管。2003年から九州鉄道記念館で展示保存されている。22年に気動車で初めて国の重要文化財(美術工芸品)に指定。同記念館によると「戦前に製造された同型車で原形を保っているのはこの車両だけ」という。
青春の思い出つづる
九州島内などでの活躍後、静かに〝余生〟を過ごす「キハ07形41号」だが、同記念館を訪れた一人の交通新聞読者から、同車両への思い、青春時代の思い出をつづった一通の手紙が交通新聞社に寄せられた。その内容の一部を紹介する。
宮原線気動車の思い出 吉武小二郎
私は、大分県九重町というところで生まれて、18歳まで育ちましたが、私が通った大分県立森高等学校は西隣の玖珠町にあり、毎日久大本線の国鉄恵良駅から国鉄豊後森駅まで列車通学でした。
高校に入学した昭和42年当時、今は廃線となった国鉄宮原線豊後森駅から熊本県の肥後小国駅まで走っており、恵良駅と豊後森駅間は久大本線と宮原線のどちらの列車にも乗れました。
その宮原線の主力車両が、この写真の気動車です。
久大本線の旅客列車である蒸気機関車に引かれた客車に比較して、明るいオレンジ色の丸い流線型のこの気動車は、随分おしゃれに見えて、わくわくしながら乗っていました。
この気動車が国の重要文化財(美術工芸品)として登録されたと、京都の新聞にカラーで掲載されましたので、懐かしい姿と五十数年前の思い出が浮かんできました。
クラスメートの女子生徒との他愛もない毎日の列車内でのおしゃべりなどを次々と思い出します。
戦前から引き継がれた国鉄の列車開発の優れた技術の証でもあると思いますが、現在も北九州市門司区の九州鉄道記念館に保存されています。
九州鉄道記念館
◇所在地=北九州市門司区清滝2ノ3ノ29
◇開館時間=9~17時(入館16時30分まで)
◇休館日=不定休(9日間/年)
◇アクセス=JR門司港駅下車、徒歩3分
◇入館料=個人 大人300円、中学生以下150円、団体(30人以上)大人240円、中学生以下120円
※4歳未満は無料
※「北九州市年長者施設利用証」「福岡市シルバー手帳」「下関市在住(65歳以上)で介護保険被保険者証」所持者は2割引き(240円)
※北九州市在住で「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「戦傷病者手帳」所持者は無料
※JR九州のICカード「SUGOCA」利用者は2割引き(240円)
往時の姿 垣間見る 懐かしい車両展示
九州鉄道記念館の「車両展示場」には、旅客輸送などに活躍した懐かしい車両が展示されている。
■国鉄 59634号
1974年に米坂線から後藤寺機関区に転属。機関車番号から「ごくろうさんよ」と呼ばれた。北九州地区最後の蒸気機関車の1両。
■国鉄 C59 1号
1956年に門司に配属。寝台特急列車「あさかぜ」、急行「雲仙」などに使用され、62年に熊本に転属。熊本初の特急「みずほ」もけん引した。
■国鉄 EF10 35号
1942年の関門トンネル開通時に同区間だけが孤立した電化区間となったことから、トンネル専用のEF10型直流電気機関車を配置した。引退後は門司大里公園で保存された。
■国鉄 ED72 1号
北九州電化で使用する交流電気機関車として活躍。貨物列車にも運用された。九州初の交流電気機関車として、北九州市門司区の老松公園に保存された。
■国鉄 キハ07 41号
戦前の代表的な機械式気動車。1952年にガソリンエンジンをディーゼルエンジンに変更。宮原線で運用され、69年の引退後は豊後森機関区などで保管された。
■国鉄 クハ481 603号
1969年に「クロ481 5」として誕生し、東北地方で活躍。83年に鹿児島車両所に配属。特急「にちりん」「かもめ」「有明」として使用。97年以降は小倉工場で保存された。
■国鉄 クハネ 581 8号
世界初の寝台電車特急「月光」としてデビュー。長崎、佐世保線で2000年まで活躍。廃車後は登場当時の特急塗装に戻され、小倉工場に保存された。
■国鉄 セラ1239号
50両以上も連結された石炭専用貨物列車が筑豊地区を中心に走った。車両は17㌧積みのホッパ車で石炭専用の底開式が特長という。
■国鉄 14系寝台客車
1972年製造。20系「さくら」「みずほ」などの置き換え用。九州では臨時列車として、2010年まで使用。引退後は熊本車両センターで保存された。
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