「クイーンビートル」安全確保に関わる重大な問題発生 JR九州が会見で経緯説明
JR九州高速船の大型高速客船「クイーンビートル」(福岡―韓国・釜山間)が船体への浸水を関係機関に報告せずに運航を続けるなど、安全確保に関わる重大な問題が発生したことについて、JR九州は14日に本社で会見を開き、謝罪するとともに経緯を説明した。
問題の概要は、今年2月に船体への浸水が認められたにもかかわらず、国土交通省への報告を怠り、日々の異常の有無を報告する航海日誌、メンテナンスログなどに記載せず、別途浸水に関する管理簿を作成。さらに、5月には浸水を知らせる警報センサーをずらしたとされる。
今月6日に国土交通省が実施したJR九州高速船への監査(無通告)で指摘され、報告を受けたJR九州がJR九州高速船に聞き取りを行い、事実関係を確認した。
JR九州高速船は、昨年2月に船首部の亀裂から浸水した際、応急措置を施した後、同省九州運輸局、JR九州に未報告のまま運航を継続。船舶安全法に基づく臨時検査未受検船舶運航に該当し、同年6月に同省から「輸送の安全の確保に関する命令(改善命令)」を受けた。
これに対し、JR九州高速船は同年7月に、安全確保のための基本方針「4つの柱」および具体的な施策の実施・計画を策定した改善報告書を国土交通大臣に提出した。基本方針の柱は、①経営トップの抜本的な意識改革②社外関係機関への速やかな報告と相談③事象発生時の継続的な最新情報の共有④全社員を対象とした安全意識の醸成と定着。
このような状況の中、同社は今年2月12日に少量の浸水を確認したものの同運輸局には報告せず、以降、浸水を認めた場合は別の管理簿に実際の浸水データを記載する一方、航海日誌やメンテナンスログには「異常なし」と記載していたという。
また、2月20日の外板チェックで喫水線より上部に損傷が疑われる箇所を発見したが、無報告で運航を継続。その後応急措置のため、7月のドック入渠(にゅうきょ)を決定した。ところが5月27日に浸水量が増加したため、同28日に浸水警報が鳴動しないよう船底から高さ44㌢のセンサーを同1㍍に変更。ドック入渠を6月初旬に早める手配を行った。
5月30日にはさらに浸水量が増加し、浸水警報が発動したため、同運輸局に報告の上、即日運航停止しドックに入渠。7月4日に臨時検査を終え、同11日に運航再開していた。
同省による監査では、6日の乗務員への聞き取り調査で浸水の未報告が発覚。7日に同社社長ほか役員への事情聴取で事実関係が確認された。これを受けて、クイーンビートルは13日から運休しており、影響人員は約2万2000人に上る。
今回の事態を受けて、JR九州では13日付でJR九州高速船の田中渉社長を解任し、後任の社長にはJR九州で安全部門の経験が豊富なJR九州エンジニアリング経営企画部長(出向)の大羽健司氏が就く人事を決定した。田中氏は取締役として同社に残り、今後の調査に協力する。
現在同省による監査が継続中のため、関係者の処分決定時期、内容については未定としている。
会見には、JR九州の松下琢磨取締役・常務執行役員・総合企画本部長、山根久資常務執行役員・総務部長、大羽社長が出席。
冒頭、松下本部長は「重大な安全確保に関する問題を発生させてしまい、多くの皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし、旅行などで楽しみにされていたお客さまの期待を裏切ることになり、誠に申し訳なく、おわび申し上げたい」と謝罪した上で、「JR九州高速船の安全意識と安全体制をしっかり築いていくことが最優先だと考えている。新社長の下、人心を一新し、運航再開に向けて意識改革、体制構築に注力していきたい」と述べた。
大羽社長は「私のやるべきことは安全風土を根付かせ、安全意識を浸透させることであり、鉄道の『安全の綱領』に基づく精神や価値観を根付かせ、行動で信用、信頼を取り戻していきたい」と決意を語った。
◇
JR九州は13日、同社グループ47社の代表を本社に集め、緊急のグループ社長会を開催。古宮洋二社長が今回の問題に関する事実関係を説明した上で、安全についていま一度考え直すこと、誠実に行動することを訴えた。
JR九州高速船人事(13日付)
代表取締役社長(JR九州エンジニアリング経営企画部長)大羽健司
取締役(社長)田中渉
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